第7話 虹色のヒロイン

ノラさんとバーンは打ち解けたみたいだな。やっぱり自然体がいいよ。ここで、トメさんから報告が入る。

「ノラさんの予想とは異なり、あっさり歌の国が制圧されました」

ヨムコは驚く。

「観光名所の歌の国を制圧って、歌の国を支持していた人は多いよ!」

ノラさんは考えなおす。

「思ったより早い。歌の国のバックにいるのは、『池の楽園』だ。テスの戦力が制圧したのなら、長老オーリスは池の楽園にしてやられたということだ」

トメさんは、少しためらいながら言う。

「ギルド長、歌の国を制圧したのは、余り聞いたことのない集団です」

バーンには、何か思い当たることがあるらしい。

「つまりテスは、池の楽園の出方を見たってことか。で、楽園はあっさりと歌の国を見捨てたと」

情報をまとめると、歌の国は平和の象徴として利用されただけのイメージってことだな。コレクターはこの事態に、全く動く気配がない。そもそも池の楽園とは何だ?

かつての主人公が発見したんだっけ。ギルド長ノラさんによると、池の楽園のトップは『トランピ』という名で、かつて主人公たちをハメた一族の子孫らしい。主人公をハメた? まさか、それが『主人公トラップ』? 違う。主人公に仕立てあげるのが主人公トラップのハズだ。僕はあっさりトラップにかかったらしいが。

池の楽園は複数は黒板を持ち、それは世界を支配してもおかしくない程の戦力らしいな。ブラッドオークションと同じレベルのものを持つ。トランピの目的の一つは、テスをおびき出すことだな。

ギルド長ノラさんは言う。

「ロウヘイとバーン様は出撃してくれ。私も状況次第で出撃する。ヨムコは、知らないおじさんたちについて行くなよ!」

ヨムコは感じ取る。

「えっ、この一件は私と関係があるの?」

ヨムコが『ヒロイン』であることは、確実になってきているとノラさんは言うが、僕には意味がよく解らない。ヨムコが『主人公ブラッド』を持ち、それを僕に託した。それは、池の楽園復活のスタートラインと、ノラさんは僕に告げる。

要するに、ブラッドオークションを持つコレクターという組織は、はめられたのだ! とにかく、僕とバーンは池の楽園へと向かう。ギルド兵もだ。

そこには、凄まじい数の池の兵士がいた。ブラッドマシンを操っている。しかし、池の兵士たちに殺意は感じられない。ただ、僕とバーンを痛めつける。

トランピが姿を現す。バーンは言う。

「エンペラーのスキルを、ヤツは持つのか」

トランピは答える。

「エンペラーのブラッド『も』持っている。私はブラッドハンターのトランピだ。あらゆるブラッドが、ここに集まるのだよ」

「それが目的か。今だけは加勢してやる、主人公」

声の主を、テスと幹部に属する『コイル』と『ドリル』だ。二人は小隊を率いているぞ。

トランピは語る。

「主人公トラップの目的を、知っているかい、キミたち? 主人公と引かれ合う女性を『ヒロイン』と呼ぶ。ヒロインとは、主人公にブラッドを注ぐ存在だ。『虹色のヒロイン』は、かつて主人公にブラッドを注いだが、主人公は罪の意識を持ち、『カザン』にブラッドを託した」

カザンとは、主人公の遺志を継いだ存在だったとでもいうのかよ。池野さんという人は、それでも主人公を求めた。それが『主人公ギルド』だ! ヨムコは僕に主人公のブラッドを注いだ。トランピの計画は、既に始まっていたのかよ。トランピは危険だ。納得もいかない。行くぞ、トノサ!

僕はカエルハンマーを振り回す。しかし、池は兵士には通用しない。僕はこれで戦ってきたというのに…。

「さあ、新たなるヒロインよ、『虹色』となり、ロウヘイを最強の兵器へと変えるのだ!」

と、トランピはヨムコを捉えている。

僕が最強の兵器だと! そんなもんヨムコが認めるかー! いや、トランピの目的は、注がれたブラッドを『コピー』し、自分のものにすることなのか。ブラッドハンター、トランピの由来かい。

ヨムコは言う。

「これで私は、無能でなくなるんだね。ロウヘイは守られるんだね」

「そうだ、『虹色のヒロイン』へと覚醒しろ、ヨムコ」

と、トランピ。

くっ、ヨムコは才能に飢えている。そんなもの必要ないだろ、と僕はヨムコに言えるだろうか? 才能を持たぬと言われれば、僕でも求めてしまうだろう。ヨムコは無数の色へと輝く。

コイルとドリルは叫ぶ。

「ロウヘイ、正気に戻れ。ヒロインは与えられた才能に屈しはしない!」

「行くぞー、トノサ!」

と、僕は叫ぶ。僕はヨムコ自身が納得する才能を見つけて欲しい。トランピを倒すぞ!

しかし、ヨムコは止まらない。僕に力が溢れる。池の兵士も倒せる。池の兵士は、僕に倒されるためにいたのか? それだけなのか。何の意志も持たされない存在かい? 抵抗しろー! エンペラーのブラッドかよ。厄介だ。

コイルとドリル、そしてバーンは戦う。諦めてはいない、ヒロインヨムコの進む道を。トランピにブラッドのコピーが始まる。このために黒板はあるのかい?

違うと言いたい。だけど、僕は言ってはいけない。僕は『池野さん』の悲しみを知らないから…。僕はヨムコを責められないよ。

ヨムコに迷いが出た。

「ロウヘイが苦しんでいる。ロウヘイが嫌がっているよ」

しかし、トランピは気にしない。

「力を手に入れれば、主人公の気持ちなど変わるよ」

「変わるものかー!」

僕は根拠もなく叫んでいた。

カエルの山というボロボロの本を、ヨムコは読み直している。何故そんなつまらない本にひかれた、ヨムコ? 池のカエルが山に登る。アホらしい。だけど、少しでもヨムコの力になるのなら、助けてやってくれ、僕の分身トノサそしてカエルの山。僕は少しずつ池を登るのだ。

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