第6話 替わり無き者たちへ贈る器具

僕とバーンそしてギルド兵たちは、ミドリの国を援護するため出発する。バーンは、一人のミドリ国兵士をつかまえる。

「戦況はどうなっている? ミドリに伝えることがあるんだが」

「トレーニング馬鹿の女王なら、『チョークのブラッド』が必要と言ってました」

明らかにバーンの顔色が悪くなる。

「女王の目的はチョークのブラッドか。チョークさんの派閥を狙うのは、厳しいどころではない」

僕は疑問を持つ。

「チョークは、そこまで危険なのか。というか、チョークのブラッドとはどんなスキルだ?」

バーンは呆れつつも、教えてくれた。コレクターのトップチョークのブラッドぐらいは、知っていた方がいいからな。チョークのブラッドとは、文字を記すこと以外にも、自らを大量生産するという。大量生産と言っても、チョーク本人より大幅に弱体化される。一つの後継者以外は、ということだ。ということは、コレクターのトップに立つチョークも、また託されたということかい。

とりあえず僕は、シオン王子を探す。何っ! シオン隊は留守番をしていると、兵士から聞いた。女王ミドリは、シオンを危険にさらしたくないということだな。

シオンは簡単に見つかる。

「ああ、ロウヘイだな。姉様はチョークを説得したいと言っていた」

バーンは強く言う。

「シオン王子よ。チョークさんが、簡単に乗るわけがないだろう。チョークさんは、おそらく罠を仕掛けているだろうな」

シオンは言う。

「今回は危険はないと姉様は言っていたが、姉様がチョークに騙されたと、バーンとやらは言うんだな」

「ああ」

とバーン。

シオンは思い出す。

「確かに言われてみれば、姉様はある種の決意に満ちた表情だった…。失敗すれば、姉様が危ない」

シオンは女王の言葉を大きくは裏切らない、後方支援へと回った。これはコレクターの兵士たちだ。こいつらとは主人公のブラッドの件の時戦ったが、かなり強い。僕が成長しているとはいえ、苦戦するだろう。

僕はバーンに確認をとる。

「戦闘が発生しているということは、女王ミドリとチョークの交渉は決裂したのか?」

バーンは答える。

「可能性は高いな。ただ、戦闘が終わっていないとなれば、ミドリの女王は諦めが悪いとも考えられる」

ということは、ミドリ女王は交渉が失敗したのに、しつこく交渉しているということだ。

この兵士たちには、トノサとカエルハンマーをもってしても厳しい。鍛えられている。しかし、今回はギルド兵とバーンがいる。簡単には、前回の様にはならん!

女王ミドリとチョークが戦っている。これがチョークのブラッド。チョークの分身たちがミドリ兵たちを襲う。女王は叫ぶ。

「シオンさん、何故来たのですか? 危険なので下がって下さい!」

「くっ、はい」

と、シオンは後退する。

チョークは、馬鹿にするでもなく言う。

「ブラコンという噂は本当かい?」

女王は訴える。

「チョークさんたちは、素晴らしい才能をお持ちです。私のレベルは42。どんなにトレーニングを積んでも、能力は低下するのです」

「それで、兵士たちにオーバーワークを強いたと」

「反省しております。ただ、チョークの派閥は、そうはなりません。あなたは、運命に従うのですか?」

ミドリ女王はチョークに訴えるが、僕には要領を得ない。何がしたいんだ、この二人?

チョークは、バーンを見る。

「バーンも来たか。キサマはオアシス池野の力を継いだ少年だった。俺は、ただ黒板に従う池野の下部だったのさ」

「何だって!」

と、バーンは驚いている。

ミドリ女王は表情を変えない。

「わたくしは、チョークさんが池野さんに劣っているとは思いません。下部のままで終わるのですか? 諦めるのですか? チョークのブラッドは、池野さんの遺志を継ぎ、黒板を守るためにあるのです。しかしチョークさんは、イヤと言える才能を持つのです。同じトレーニングをしても、兵士たちの能力が同じでも、異なる個性を持つ兵士なのです」

バーンはここまできて、何かを感じ取っている。

「俺は池野料理長とやらに託された。しかし俺は、バーンとしての個性を主張していいというのか!」

チョークは、分身を更に展開させる。しかし女王はひるまない。

「この分身たちも、訓練すれば強くなります」

僕は、女王の言いたいことが、はっきりとは解らない。

チョークには何が残されている? 女王ミドリは続ける。

「チョークさんは、チョークの派閥を用いて、一つの色に染める。つまり、チョークさんはコレクターを統一し、本当のトップチョー立ってもらいたいのです」

チョークは驚く。

「ミドリ女王、キサマはどれ程の派閥でコレクターが成り立っているか、知らんだろう。最有力の俺でも、7パーセント程度の影響力しか持っていない。池野を超える力が必要だ」

「ならば超えて下さい。池野さんの呪縛から飛び出すのです。ミドリの国は、協力を惜しみません。あと、バーンさん、あなたたちも宿命ではなく、自分のユメを叶える能力を、トレーニングで身につけて下さい」

確かに、コレクター全体を支配すれば、池野料理長を超える戦力かもしれない。女王は、自らのユメを、そしてこの世界からの自由を託している。バーン、聞こえるか?

池野さんを超える力なら、池野さんの意図通り動く義理はない。そして、コレクター統一が達成されれば、この世界は大きく変化するぞ。パワーバランスの崩壊。要するに、あらゆる人々の呪縛を解放する。一般の人々の意図範模となる。

問題は、チョークの人格そして魅力だろう。女王ミドリは、主にチョークとバーンを縛られる者にしたくない。ミドリはきつい表情で宣言した。

「チョークさん、バーンさん、あなたたちはコピーでありながら、オリジナルとは違う個性を持っています。個性を持った者を縛りつけていいわけがありません。自らを主張するのです。それは、私には出来ないことです。あなたたちは、替わる者つまりコピーできても、コピーは同じ存在ではない! 替わる者などいないのですよ」

チョークは言ってみる。

「ふん、口だけは良く動く。協力を惜しまないなら、何してくれんだ、女王ミドリ」

女王ミドリは言ってのける。

「ミドリの薬草とトレーニング器具を、必要なだけ持っていきなさい。それだけの魅力を、あなた方は持つのです」

チョークは驚く。

「ミドリの薬草と言えば、国宝レベルを上回る。本気で言っているのか?」

チョークの言葉に、女王は首肯く。チョークはバーンを見る。

「バーンは俺の呪縛から逃れろ。だが、俺の能力を超えなければ、それはなされない」

バーンはにっこり笑う。

「その積もりです。俺は産まれを変えてやる! どんなコピーも、主人に噛みつけるのさ」

まあ、才能あってこそだけどな。コピーを作れても、自分自身は一人だ。コピーの一つ一つに意味がある。オリジナルの言う通りwにするかは、本人が決めるってか。

チョークとバーンは、トレーニングに目覚めた! 女王ミドリしてやったり。二人は自らのユメを作り、追うことを教えられたのか。コピーはオリジナルに従うってのは、主人のわがままさ。

チョークの支配したコレクター は、どんな色をしているだろう? 黒板とチョークの物語は、まだ終わらない。僕とバーンはギルドへと帰還する。

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