第4話 カエル色の約束A

バーンの顔が険しくなる。

「恐らく『ブラッドオークション』の手続きだ。急ぐぞ、ロウヘイ!」

「ああ」

とは言うものの、僕はよく解っていない。

急ぐ僕たちは、素早く町長のところへと向かった。町長は言う。

「この辺りは、作物が育ちにくい上に、『テス』との友好を深めるためのお金が要る。子供たちのブラッドは、高く落札される可能性が高いのです」

それを聞いた僕は、迷わず言う。

「解った。子供たちの未来のため、主人公ギルドから経費として落とす」

しかし、バーンは反対のようだ。

「いいわけないだろう、ロウヘイ。ノラさんなら簡単に、金を払うことは出来たハズだ。しかし、ロウヘイをわざわざ向かわせたのは、別の手段があるということだ」

それを聞いた僕は少し迷うが、ここは貫く。ヨムコのような子供を増やして、いいわけがない。

僕は言う。

「バーン、ここは後で僕が誤魔化すんだ」

他に思い付かないし、ブラッドオークションは時間との戦いだ。町長も躊躇するが。

「いえ、そんなことはできま…いや、町人のため、子供たちのため、受け取りましょう。最低の町長と笑って下さい。何か出来ることがあるなら、今後主人公ギルドと友好関係を持ちたい」

確かにこの手段は、ノラさんとは違ったかもな。僕は、ノラさんの期待に応えられなかったのさ。バーンはため息をつく。

「ロウヘイよ、金で済ませるのも一つの手段だが、子供たちの未来に重圧がかかる。しかも、ロウヘイの金ではない」

「すまない、バーン」

「俺に謝ってどうすんだ、馬鹿野郎。まあ済んだことだ。気分を切り替えるぞ。明るい話題で、失敗を吹き飛ばそう」

「ああ」

僕とバーンは、カエルの山に踏み込んだ話に、切り替えた。子供たちの未来に重圧かあ。そこまで僕は考えられなかった。ヨムコも彼らと同じく、重圧を感じるのだろうか? 僕は、ただのバカかもしれないぞ。

バーンは、ここで話題を少し変える。

「最近のロウヘイは任務ばかりだ。ヨムコさんのことを、軽んじているように見える。ロウヘイにはそんな気はないだろうが、何の努力もなしで、ヨムコさんがいつまでも慕ってくれると思うなよ」

「うっ!」

僕は、バーンに言われないと、気付けないのか! 確かに僕はヨムコに何もしてやれていない。

スノーブ町の子供たちが数人、こちらへやって来る。

「俺は自分のブラッドを、気に入っていなかった。でも、それと向き合ってから将来を決めろって、町長が頭を下げた。兄ちゃんたち、ありがとう。そうそう、町の近くのグリーン山は、お勧め景色だぜ」

「キミたちにも礼を言わないとな。ありがとう」

「はあ…」

と、子供たちは今はよく解らないだろう。

僕は考える。

「ベタだが、ここはヨムコにプレゼントでも送ろうかな。ヨムコが欲しがりそうなものは…。わからん。カエルの山で喜ぶ少女の心が解らん」

バーンはニヤリとする。

「ロウヘイ、人間なんて自分が欲しいものも理解してないもんだぞ」

ふーむ、確かに僕は何が欲しいかな?

「グリーン山に登って、気晴らしをしよう」

バーンは頭を抱えた。

「標高6000メートルはありそうだぜ、ロウヘイ。子供たちは、グリーン山を眺めてみろと言ったんだ。登れ、ではない。トノサが高いレベルのブラッドマシンでも、山登りナメんな!」

僕はグリーン山を駆け上がる。トノサは池の中! トノサに山を覚えて貰おうよ。

一方、その頃の主人公ギルドでは。ノラさんは言う。

「やはり黒板は存在した。エンペラーのブラッドとシンクロしたということか。私はまだご主人様を待っているのか?」

ヨムコはノラさんの悩みどころではない。

「最近ロウヘイは、私のことを忘れているよ。放ったらかしだよ。ロウヘイにプレゼントを送ろうと思ったけど、ロボットの兵器って凄い値段だ。こんなもん買えるかー!」

ノラさんはため息をつく。

「うるさいぞ、ヒロイン候補のヨムコ。ロウヘイはギルドの主人だ。トノサ用の兵器など、ギルドが用意している。ロウヘイには必要ないぞ、ヨムコ。少し主人を甘やかした気もするがな。ロウヘイ自身も知らない安物で十分だ、ヒロイン」

ヨムコはパンと手をたたく。

「それでいいかも!」

その頃ロウヘイは、トノサでグリーン山を登っていた。ロウヘイの物語に幕が上がる。僕は、グリーン山を登り切るつもりだった。しかし、その必要がないことに気付く。

バーンは言う。

「何で俺も山登りしてんだ? なあ、クロスミ」

僕は『虹』を発見する。虹の景色とカエルを合成させる。僕はスノーブガエルを捕まえていたのだ。凄いぞ、『体感カメラ』。これは、僕のカエル色の約束と『決意』だ! ヨムコに伝わるかは、解らないけど…。

合成されたこのカエルの景色は、『無限に近い』色を放つ。ここに、カエル色の約束は、可能性を飛躍的に高めたのだ。

バーンは笑う。

「すばらしいカメラだろ」

「最高の友人からの贈り物だからな」

「いい過ぎだ、ロウヘイ」

とにかく、これを持ってギルドへと帰還する。

ヨムコは外の世界を、あまり体験していない。カメラで体験しても、どれほどのものかは解らない。ヨムコをいつかこの景色に連れて行く必要がある。『カエルの山』はここにあると。

こことは、グリーン山ではない。ヨムコの大切な『才能』へと導いてやる。ヨムコはレベル1とかほざくカザンの理論に、ケチがつく日さ。後は、どうやってプレゼントを渡すきっかけを作るかだな。

バーンはもうコレクターの兵士ではないが、在籍していたことは間違いない。バーンを連れ帰った時、ギルドにどう報告するかも悩みだな。主人公ギルドはコレクターと直接敵対していたわけではないが、良く思わない人もいるかもしれない。ギルドの心は広いとは思うけど…。

コレクターは個人で動くことが多く、統率がとれていない。その中には、ムチャクチャやった者もいるからな。まあそれよりも、ヨムコがプレゼントをどう思うかの方が、重要な気がする。バーンは、もうギルドの一員という顔だ。

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