第2話 カエルの流すもの

ノラさんと、今後の方針について話し合った。やはり僕は 、フリーのよう兵として、信用が大分低下している。主人公のブラッドを奪い取ったのだから、当然だろう。主人公ギルドの依頼を、僕は受けるしかない。

なんか納得いかないが、ノラさんは僕を助けてくれた。ノラさんは作戦を告げる。

「中立であるミドリ国は、トレーニング技術により勢力を伸ばしている。ここを利用するぞ」

女王ミドリにより訓練をつんだ兵士たちか。 ミドリの弟のシオン王子は、『トレーニング』のブラッドを引き継げず、王位継承はならなかった。ミドリ国の伝統である。

ノラさんの目的は、とりあえず主人公の力を引き出すため、友好度を高めたいらしい。主人公ギルドの戦力も、そこまでではないとのこと。友好度が高い人物が増えると、ギルドの活性化につながる。と言われても、僕は理解しきれない。

ヨムコはストレートに言う。

「トレーニングで強くなるとか吹いてるミドリ女王は、自分の才能の限界にコンプレックスを持ってると思う」

そうかもしれないと僕は思った。

僕は確認する。

「ノラさん。ヤクの国に攻め込むミドリの国のスキをつくんだな。しかし、スキが出来ても女王のガードは固いぞ」

ヤクの国は、テスに薬類を提供し、友好を保っている。

ノラさんは首をかしげる。

「何を言っている、ロウヘイ。シオンを潰し、ヤクの国との友好を勝ち取るのだ。シオン隊に女王は8割の兵を割いているぞ」

「はっ? 何考えてんの、その女王様」

僕はノラさんの言葉に驚くしかない。女王ミドリはシオン王子を溺愛しているらしい。僕は、危険に陥ればギルドに帰還すればいい。

任務が失敗しても、まあいいや。行くぞ、トノサ。だが、女王ミドリは戦闘こそ凄いが、人望はない。シオン王子のカリスマにより、国を維持している。

とにかく僕はヤクの国に加担して、少しでも戦力になればいいさ。ノラさんはつぶやく。

「『主人公トラップ』の始まりだ」

僕にはよく聞き取れなかったが、嫌な予感がしていた。ヨムコのカエルの山はどうするかな。

僕はとりあえず戦況を確認した。えっ、意外とヤクの兵士たちが善戦している。圧倒的戦力を誇るシオン隊が何故こうなる? うーん、シオン隊の動きが悪い。ミドリの女王にこき使われて、オーバーワークだ。これなら僕も戦える。

僕とトノサは、シオン兵士たちを撃墜していく。 今のところ順調だ。いけるぞ。カエルハンマーでこなごなにしてやるよ。

ヤク軍の兵士長の一人が、僕に話しかけてくる。

「やるじゃないか、ロウヘイだっけ。ブラッド襲撃事件は、そこそこ話題だ。フリーの依頼でも受けてくれたか。頼もしい。だがここは、作戦を一致させるべきだ。俺の名はクサリ。少し休もうぜ」

僕もクサリの言葉にうなずく。

何故か僕とクサリは、カエルの山で盛り上がった。クサリは言う。

「カエルの山は理論上不可能ではないが、厳しいな。あと、ヨムコさんはレベル1、というのはおかしい。からくりがありそうだ。俺は兵士長ではなく、料理人になりたかった。需要が国に少なく諦めたが、カエルの山に協力出来たかもな」

クサリのユメは、ミドリの国に広がっていた素材を、調理することだったらしい。ミドリの国の大地は荒れ果て、軍事国家になってしまったとクサリは嘆いた。

ここでクサリは話を元に戻したが、シオン隊の強力な兵は、トレーニングに耐えきり、オーバーワークになっていないらしい。これは聞いておかないとヤバかったぜ。

夜は明け作戦再開だ。僕とクサリ、ついでにギルド兵の快進撃は続き、ついに遠くだが、シオン王子を確認する。間違いないぞ。もうすぐ決着だといいな。やはり、そうはいかなかったけれど。

シオン隊の兵士長が立ちふさがる。

「シオン様のところへは行かせん!」

コイツはオーバーワークになっていない。それどころかパワーアップしている。カエルハンマーがかわされた。トノサが一撃を食らう。

そのスキをみて、クサリも兵士長を捕らえた。カエルハンマーはパワーは凄いが、スキがでかいのが弱点だ。しかし今回は、かわされるのは解って放った。敵もハデによける必要があるからだ。これが、僕とクサリの友情なのだ、多分。

兵士長がひるんだ。二人で叩き込め。しかしここでクサリのマシンソードは弾かれた。何? シオン本人がここで接近。バカなのか、シオン王子。シオンを守るための兵士団だってのに。王子様は言う。

「偵察兵から、カエルの山の話しは聞いた。敵として出会わなければ、仲良くなれたかもな」

何でコイツらカエルの山にこだわるのだ?

兵士長は主張する。

「シオン様は、安全なところへ下がはて下さい。シオン隊は限界です。シオン様だけでも逃れれば、ミドリの国は終わらない!」

シオンは力強く言う。

「俺の剣術は飾りかよ。女王様がいれば姉様がいれば、ミドリの国は続いていく」

しかしギ、ルド兵の活躍もあり、シオンは追い詰められる。

ここでシオンは、白旗を掲げ降伏した。

「おいおい、死んでいった仲間兵士たちの分まで戦わないと」

「あいつらが無駄死になんて認めねえ」

と、シオン隊は降伏を認めない。

シオンは力強く言う。

「黙れ、兵士たち! ヤクの王は、われわれが生きることを認めてくれた。命あることを誇りと思い、これ以上の争いは、その誇りを汚すと思え」

シオンの一言で決着はついたのか? 僕たちは何か忘れている気がするが、いいや。

クサリは問う。

「シオンは人格者と聞いていたが、自然を失った国の大地を見て、思うことはないのか?」

シオンは少し沈んで言う。

「俺と姉様は、大地を見捨てたくはなかった。ミドリの国を強国にしたかった前王の影響は大きく、無意味だったのさ。姉様は前王の期待に応えることを、優先せざるを得なかった。俺も出来ることはしたつもりだが、現実は今だ」

クサリはシオンに言う。

「知識を持つシオンなら、やり直せるさ」

「ならいいんだがな」

とシオン。

ここで、忘れていた存在がやってくる。

「シオン隊の降伏など認めません。わが国は、才能を努力で超える力を持つのです」

女王ミドリが単独で来る。しかも強い、速わい。僕とクサリも応戦するが、ここまでとは。

このままでは、いい感じだった両国に、再び亀裂が入る。ここでシオンが女王ミドリを切りつける。

「シオンさん、どうして?」

僕はスキだらけのミドリに、カエルハンマーを叩き込む。倒せないまでも、効果はあったハズ。

シオンは女王ミドリをニラむ。

「女王様。私とあなたで、強かったミドリの国を取り戻しましょう。大地はまだ死んでいない」

シオンは自らの姉に問う。疲れ果てた兵士たちが強いのかと、力で従わせることが強い国なのかと。本当に強かった頃の、ミドリの国のムードはどうだったのかと。女王が笑わない国が強いのかとも。

女王は言う。

「シオンさん。ヤクの国に許されないことをしたのは事実です、本当に強い国のため。失った信用を取り返すため、協力してくれますか、シオンさん?」

「はい!」

シオンは力強くうなずいた。

大地の声がする。

「ミドリとシオンの気持ちは嬉しいが、私はもう長くない。新しい大地にこれを。必要ならば、価値を感じるならば」

そう言うと大地は力を使いきり砕けた。

ところで、大地の残したよく解らない草は、意味あるのか? ここで何故かクサリが目を輝かせる。

「これは伝説のミドリの薬草の苗。これを増やしていけば、俺のユメは叶うかもしれない。俺に任せてくれないか、ミドリ女王とシオン」

女王ミドリは顔を曇らせる。

「ヤクの王が、今納得するでしょうか?」

しかし、クサリはその気になっている。

「時間はかかるかも知れないが、俺が王を説得する。王だってそれほどの価値は知っている。薬の国が知らない訳がない」

クサリはドーピングでテスと関わることに、うんざりしていたな。ここはクサリに任せたいが、僕に発言権はない。

女王ミドリはつぶやく。

「薬草が上手くいけば、トレーニングの効率が良くなりますね」

何! この女王、全く反省してないぞ。

ここで女王は僕に向かう。

「カエルの山は、カエルさんたちがトレーニングをつめば、山に登れるのではないでしょうか。あと、シオンさんとクサリさんの話からすると、ヨムコさんはレベル1との判定は、『一人』だからでしょうね。ヨムコさんはきっと、みんなを元気にする立派な才能をお持ちでしょう」

よく解らないが、ヨムコにはまだやり残したことがあるらしい。

シオンは言う。

「ヨムコさんは、カエルの汗を流す優しさを持っているって、姉様は言っているよ」

この世界には、『個人』では成り立たないレベルとブラッドがあるということなのか。カエルがトレーニングするというのは、どうかと僕は思うけれど。

クサリが言う。

「ロウヘイにいつでも協力できるわけではないが、主人公ギルドに友好の誓いをたてる」

シオンもうなずく。これで主人公ギルドの友好を作る依頼はクリアだ。

僕は一度帰還した方がいいのか? 補給もしたい。だが、ギルド兵のおかげで補給は完了する。これでトノサはまだ動けるぞ。

僕に次の依頼が届く。スノーブ町との友好もあげたいらしい。これはノラさんが、僕のために選んでくれた依頼かも知れない。スノーブ町は寒いところらしいが、カエルの一種が存在する。山ではないのが残念だが、カエルの山のヒントになるかもな。

僕はミドリの国から出発する。ここでトノサのレーダーが、ノイズを確認する。

『チョークさんよぉ、何故バーンを『捨て駒』にしたんだ? あいつは高いレベルを持っている』

『そうだ、利用価値はまだあるんじゃないか?』

『キサマら、落ち着け。『エンペラー』のブラッドを持つ者は、記録上6人存在する。その多くが危険人物だ。そうなる前にバーンを消す』

ここでノイズは終わった。『チョーク』といえば、個人の力を尊重する組織コレクターのリーダー格だ。危険過ぎる。このノイズは無視しよう。

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