はじまり

きみのことを 無意識に目で追うように なったのは

あの 研修の 帰り道からなんだ


要領も 容貌も いまひとつ

とりたてて 目立つところもない 地味な人

そんなふうに思っていたのに


駅からオフィスまで 歩く道

隣りに並んで いた僕に

不意に きみが 大丈夫ですか と言った

きみはすっと 僕の後ろに 移動する


枝 大丈夫ですか?


歩道に 身を乗り出している 街路樹

背の高い僕は それを ひょいひょい 少し屈んでよけて歩く

誰かと並べば いつものこと

それをきみは 大丈夫ですかと 聞いてきた


はじめてだよ

そんなことを気にしてくれる人に 会ったのは

僕のささいな 不自由に

心を くばって くれた人


あれからなんだ きみのことを

目で追ってしまうように なったのは


今日こそは 思い切って言おう

飯でも どう? って

きみに 気付かれてしまう前に

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る