第4話 雪が降る時は、

 あれからと言うもの、私の事を監視するかのように私の部屋の下に森崎先輩のバイクが朝と夜に停まっていることが増えた。

それと同時に電話の着信が入るようになっていた。もはや私に対する恋愛感情ではなく、ただの執着にしか思えなかった。

そうこうしていると、感謝祭の準備が本格的に始まった。加藤さんがメインで動いているが、サポートする私も忙しく、結太といる時間もめっきり減った。

その代わり、加藤さんと一緒にいる時間が増えた。

加藤さんは唯一、私と結太の関係を知っている人で信頼もしている。

なので私達は全て話した。そう、森崎先輩にされていること全てを。

加藤さんは「言うの遅いよ。俺は、向こうのチーフから新村さんを預かったのにこんな思いをさせてるんじゃ会わす顔もないよ。」っと仕事中は極力一緒にいてくれた。

それにも限界がある。加藤さんにも、結太にもそれぞれの仕事がある。もちろん私にも。

やはり一人でランチに行くこともある。研修を共にしていない同期達とも疎遠だ。

自分で言うのも何だけと、若くして出世していく課長のお気に入りとして会社の重役やホテルの重役の面々に新入社員の分際で可愛がってもらっている私は、同期達からしたら疎ましいと思われている。

結局私は一人なんだと思うことも何回もあった。

そんなときだった。感謝祭の前日、業務後、加藤さんと宴会場の設営をし終わり、加藤さんが乗る最終バスの時間が近づいていた事もあって、結太が迎えに来てくれるのを一人で待っていた。

結太くんの家から車で15分くらいで着くはずなのに、その日はなかなか来なかった。

従業員入り口で待っていると、この時間にいるはずのない森崎先輩が出てきてしまった。

無視だ無視。耳にイヤホンを入れて目を瞑り、気づいていないふりを決め込んでいた。

すると、イヤホンの片方を取られ、「何してんの?」と言う森崎先輩。

私は気づいていない。そう心に言い聞かせる。これは夢だ。たちの悪い。

身体の向きを変えてイヤホンを奪い返し、また耳に付けた。

すると、気配はするが、おとなしくなった先輩が私の背中側に立っていた。気にも止めず、見たくもないので相変わらず目を閉じていた。

数秒後、再びイヤホンを思いっきり引っ張られ、思わず私まで引っ張られ、森崎先輩の方を向いてしまった。私より頭一つほど背の高いはずの先輩の顔が目の前にある。

イヤホンを取られてから一瞬の出来事だった。私の唇に嫌に温かく、柔らかい感触が当たったのは、私の後頭部に手を回し、離そうにも離れない。息も出来ず、身体の力も無くなっていく。きっと私がこの人に殺されるんだ。と覚悟した時、ようやく唇を離してくれた。

呆然と立ち尽くす私に「湊ちゃん思ってた通り柔らかいね。ごちそうさま。」

そうって去っていった。


 結局、私は結太くんが迎えに来てくれても何も言えなかった。これまでにない恐怖が全身を駆け巡るだけだった。

翌日の感謝祭は、事なき事もなく終わったのは良かったが、私は終日上の空だった。

加藤さんもそんな私に気づいていたと思う。

「新村さん、今日はもう帰っていいよ?大丈夫?何かあった?」

二人で片付けをしているとき、そう声をかけてくれた。そのとき、今まで我慢していた私の涙腺が決壊した。

加藤さんは何も聞かず、そんな私を慰めてくれる。そんな加藤さんに甘えてしまったのだ。

するとそこに課長がやって来た。

「新村?どうした?加藤!なにがあったんだ?」

そういって課長は加藤さんを追い詰める。でも加藤さんは何も言わなかった。

何も言わない加藤さんに課長はため息とつき、私のところにやってくる。

何を聞いても泣きながら首を横に降るだけで何も言わない私を抱きしめて、子どもをあやすように背中を擦ってくれた。

「新村?何があった?加藤じゃないんだろ?あいつはお前を泣かすようなことはしないよな?そんなに泣くほどここは辛い場所か?辞めたいのに引き留めた俺がお前を泣かせてるか?何も言わないと分からないぞ?もしかして、森崎か?何か言われたか?」

課長も気にしてくれていたんだ。すると、加藤さんが言った。

「新村さん。課長に言ったら?必ず力になってくれるはずだよ?」

そう言われて、私はようやく口を開いた。

「私、もう分かりません。森崎先輩の事も、私自身の事も。先輩の異動は私のせいだった。でも、私は、結太くんが好き。森崎先輩の気持ちが重い。でも、私のせいだから。」

自分でも何を言っているのか分からなかった。

「新村のせいじゃないよ。あれは俺が決めたことだ。森崎は前から問題があった。それは新村が来る前からだ。あいつはもともと接客には向いていない所があった。うちはそれでは勤まらない。他の部署よりいろんな人が来るだろう?表面上じゃやっていけないんだよ。そんなときあの事件があったから俺はあいつを飛ばした。ただそれだけだ。お前がそこまで思い詰めることは無いんだ。」

課長の一言は私の心に染み込んだ。ずっと私のせいだと思い込んでいた。だからこそ、真正面から拒絶出来なかった。

でも、そうじゃなかったんだ。

そう思ったら、涙もすっかり止まってしまった。

「新村。お前はやりたいようにやれ。間違ってたら止めてやるし、一緒に謝ってやる。俺はお前の上司だ。加藤だってそうだ。な?」

「はい。俺だって新村さんの上司です。それに彼女の指導係ですから。」

私は昔から出会う人に恵まれている。上司にも恵まれた。ここで頑張ろう。

この人たちに泥を塗らないように、仕事もプライベートもちゃんとしよう。

そう誓った。


 季節は流れていく。年も明けて春がやってくる。

それは私と結太くんとの別れも意味する。彼はここを辞める。

内定が決まっている彼は4月から2ヶ月間東京本社で研修を受ける。

その後は、どこに配属になるか決まってはいない。

私が着いていくことはない。ここで頑張ると決めたからだ。

結太くんだってそれは望んではいない。

結太くんが辞めてしまうラスト一ヶ月は何故か気まずくて、私たちの距離が開いていってしまう一方だった。

とうとうそのまま埋まることはなく、最終日を迎えてしまった。

送別会もそのまま行われ、私達は溝を埋めることもなく、終わってしまった。

そして、人事異動が行われる4月、結局課長は森崎先輩を戻す事はなかった。

森崎先輩は戻れると思い込んでいた。なのに戻れなかったショックからか仕事を辞めてしまった。

私にとっては正直好都合で、嬉しかった。ようやく彼から解放されたのだ。

入社2年目、私だっていつかは出世したい。仕事に精を出そう。後輩も出来た。

結太くんとは、連絡を取らなかったし来なかった。

しかし、ある日、結太くんから連絡が来たのだ。それは彼の研修が終わろうとしていた頃だった。

「配属先が決まった。そっちに戻れる。」との事だった。

でも、同じ県でも距離が遠かった。行ったり来たり出来る距離ではない。

でも、私達はそれでも良かった。

結太くんがこっちに戻ってきた日、私の職場に挨拶しに来た。

みんな嬉しそうで、結太くんも嬉しそうだった。

私が連絡を受けて事務所に戻ると、結太くんはみんなに名刺を配っていた。初めて会った私の後輩たちにまで。

そんな彼を見て、私は安心した。そっと事務所の隅に立ってその様子を眺めていた。

そんな私に彼はようやく気づいた。

「湊!遅いよ。見てみて。俺の名刺。やっと戻ってこれた。俺、頑張るよ。だから、俺と付き「ちょっと待った。」

結太くんの言葉を止めたのは田中さんだった。

「田中さんなんすか?今良いところだったのに。」

「結太。今仕事中。そういうことはプライベートでやって下さい。お前、ムードもへったくれもねぇな。ねぇ課長?」

「そうだなぁ。今じゃないなぁ。ってお前らまだだったの?そこにびっくりだよ。」

そこにいたみんなが私たちを見る。最悪だ。なんて恥ずかしい。

「俺は、みんなに聞いてほしいと思って。湊にも連絡するの止めてたらこいつ何も連絡してこないし。なぁ?あっ!とりあえずこれ!!もらって?」

そういって私に名刺を渡す結太くん。

「いらない。バカ。もうほんとバカ。」

私は恥ずかしさのあまり事務所を出た。

そのまま私はバックスペースで道具の整理をしながら、リネンのおばちゃんに愚痴っていた。

おばちゃんは笑いながらずっと私の話を聞いてくれた。

「ほんと無神経。どう思います?私の気も知らないで。絶対田中さんに笑い者にされるじゃん。」

「でも、結太くんも嬉しかったんでしょ?やっと戻って来れたんだから。湊ちゃんだって嬉しいんでしょ?素直になりなさい?二人はお似合いよ?」

「そりゃ私だって嬉しいけど、でもさぁ!!「だって?結太くん。湊ちゃん嬉しいんだって。」

おばちゃんは笑いながら視線をずらした。

その視線の先に結太くんが居たのだ。

「おばちゃん。知ってるよ。湊が素直じゃないのは。」

そういって私の腰に手を回し、引き寄せた。

「もぉー見せつけてくれるねぇ。その若さが羨ましい。」そういいながらおばちゃんは去っていった。

そして、私たちをだけになった。

「湊、さっきはごめん。みんなにも怒られたよ。嬉しくってつい。」

「ほんとだよ。でも、私もごめん。私にも名刺ちょうだい?」

「嫌だ。いらないんでしょ?」

「怒ってんの?」

「怒ってないよ。でも湊にはあげない。その代わりに、」

そういって私にも優しくキスしてくれた。

「俺の彼女になってくれる?」

そういって私の頭を撫でた。

もちろん、私は断るはずがない。

「私でいいの?」そう聞くと、「湊がいいの。」といってくれた。

そして私は結太くんの胸に飛び込んだ。そんな私を彼は優しく受け止めてくれた。


 それから私達は中距離恋愛となった。お互い休みは不定休で、なおさら会う時間もない。

でも、私たちにはそれくらいの距離の方が良かったのかもしれない。

近くにいればきっと依存してしまうからだ。

時間があれば電話したり、メールしたり、月に一度は休みを合わせる。

それが私たちの付き合い方だ。

そしてもう一つ、それだけではなかった。

ある日、後輩と一緒にフロントに立っていた。すると電話がなったので出た。

出るやいなや電話口の様子がおかしかった。

「あっ!湊?俺だけど?エステプランの予約取りたいんだけど。」

結太くんだった。仕事中でしょ?!なんだその電話対応は。

「申し訳ありません。当ホテルはオレオレ詐欺には騙されません。では、失礼いたします。」

そう言って少し黙っていた。

「ちょっと待って!マジで予約させて。来月の2日なんだけど空いてる?」

そういう彼の後ろは賑やかだ。きっとお客様が目の前にいるんだろう。

しかし、彼は普段通りだった。

「空いておりません。3日のチェックアウト後はいかがですか?11時からでしたら2名様で

ご予約お取りすることが出来ますが?」

「ちょっと待って。あーそれでいいって。」

「かしこまりました。ってかさぁなんなの?ちゃんと仕事してるわけ?」

「してるよ。今してんじゃん。ぶっちゃっ旅行の企画立てるから話聞いてないよ。」

そう小声で話し出した。

「そういえば今度の月曜日夜に帰るから。着く前電話するね。」

「え?なんで?いいよ火曜日の朝で。水曜日もいるんでしょ?」

「なんだよ。ちょっとでも長く居ようと思ってんのに。湊いやなの?」

「嫌じゃないよ。分かった。待ってる。ってかお客様の情報教えてよ。」

そうだったねとお客様の情報を聞いて、予約を取った。

「では、私、新村が承りました。当日お待ちしておりますとお伝えください。ありがとうございました。」

「じゃあよろしくね。湊、愛してるよ。」

そういって彼は電話を切る。仕事中に何してるんだか。

予約台帳に記入していると、後輩が隣でニヤニヤ笑っている。

あの一件以降、私達はスパ・フィットネス課では公認の仲だった。

「新村さん。誰からだったんですか?」そう言いながらも笑っている。

「真奈美ちゃん。それは言えないなぁ。」

そういって台帳を直すと、彼女は直ぐに台帳を取りだし、確認した。

「やっぱり正岡さんじゃないですか。隠せてませんからね。」

そういって未だに笑っている。

「真奈美ちゃん、田中さんには言わないで?私たちの秘密ね?」

そう言った私の後ろに田中さんがいた。

「俺に何の秘密があるの?湊は何を隠してる?」

「なにもありませんよ。ねぇ真奈美ちゃん。」

真奈美ちゃんの笑いが止まらない。もうバレたも当然だ。

「もしかしてまた結太だった?お前らいい加減にしろよ。仕事の電話だろ。このバカップルが。」

「してません。予約の電話です。勝手に妄想やめてください。」

いつも通り田中さんと言い合いをしていると、真奈美ちゃんが私を裏切った。

「田中さん。もう熱すぎて私気まずかったですよ。新村さんめっちゃ女の子でしたよ。」

これは重罪だ。

「真奈美、お前いい仕事したな。面白い話聞いたよ。」

そういって事務所に入っていった。

「真奈美ちゃん。裏切ったね。」じとっとした目付きで彼女を見ると、飄々としながら言った。

「新村さん。可愛かったですよ。」そういって彼女は笑った。

その数分後、事務所から笑い声が聞こえたと同時に出てきた課長に怒られたことは言うまでもなかった。


 約束の月曜日、最終のバスに乗って結太くんは帰ってきた。仕事終わりの彼が、スーツで帰ってきた姿に少しときめいてしまった。実家に帰るものだと思っていた私は、迎えこそ行ったものの、そのまま一緒に寮に入ろうとした彼に驚きを隠せなかった。

「実家帰らないの?車で送ろうか?」

そう言ったら彼はなんで?ってきょとんとした。

どうやら水曜日まで私の部屋に居るつもりだそうだ。結太のスーツ姿にときめいてしまった私としたら破壊力は抜群だった。急に緊張してしまった。

「もしかして、湊緊張してる?」

「し、してないよ。何いってんの?」そう強がる私の顔は真っ赤だったはずだ。

「照れてんじゃん。わかりやす。」そう言いながらも私の後を付いてきた。

その日はもう夜も遅く、私たちも朝が早かったこともあり、お風呂に入り、寝ることにした。

 翌日は、気付けばお昼前だった。ブランチにとよく行くパン屋さんに遅めのモーニングに行った。

そこのマスターにはよくしてもらっている。コーヒーだっておかわりをくれるのでゆっくり出来る。

「そういえばさ、この前予約したじゃん。」急に結太くんが切り出した。

「うん。ってあれは駄目でしょ。お客さん前に居たんでしょ?」

「そうなんだよね。それで、バレちゃった。」そういって笑い出す。

「何がバレたの?どういうこと?」

「きっと最後の愛してるがダメだったのかなぁ。それまで絶対バレてなかったんだけどなぁ」

「ちょっと、何?もしかして、お客さんに?!」

「うん。お兄さん、予約取ってくれた人って彼女ですか?って言われちゃった。」

「えっ。一応聞くけど何て言ったの?」

「もちろん、そうですよ。って言った。湊の名前言っちゃった。」

私の頭はもう真っ白だ。バカなのか?普通私の名前は言わないだろう。

「最悪だ。私その日休む。何があっても行かない!!シフト入ってたら代わりに出勤してよ。」

「そう言うなって。仕事はきちんとしましょうね。」

「結太くんに言われたくない。私だってあの日大変だったんだからね。」

そういって、課長に怒られたまでを説明した。

すると当の本人の結太くんは爆笑だ。失礼なくらいに。


 結局、一緒に過ごした二日間はダラダラと過ごすだけだった。

でもそんな日々も平和で良いのかもしれないと思った。私たちには刺激がないくらいが調度いい。今までが濃すぎたのだ。

彼が帰ってからも日常はやってくる。最近は、忙しい毎日も通りすぎてゆったりとした時間を過ごしている。いわゆる閑散期。私も含め、職場のメンバーも余裕が出るこの時期は緩い空気が出てしまう。

そんなときにやって来た例のお客様。そう、結太くんがアテンドしたお客様だ。

私とあまり年齢の変わらない女性二人組だった。

たまたまフロントにいた私が受付をしていた時、彼女達が声をかけてきた。

「あの、もしかして正岡さんの彼女さんですか?」

まさかそんな直球で聞かれるとは思ってもみなかった。驚いて思わず受付の手が止まった。

「私たちの予約して頂いたのが正岡さんだったんです。本当はここともう一つで迷っていたんですけど、彼がこっちの方がいいって言ってくれて。話を聞いて今日来たんです。」

「正岡さん、大学時代バイトしてたって言っていて来てみたくなりました。面白い人ですね。」

結太くんは何を言ったのだろう。彼女達は思い出して笑っている。

「確かに正岡はここでアルバイトをしておりました。彼がお二人に何をおっしゃったかは分かりませんが、スタッフ一同お客様に日常を忘れ、くつろいで頂けますよう対応させていただきます。ごゆっくりお過ごしください。」

そう言って案内しようと準備をしていると、再び彼女達が顔を見合せ笑いだした。

「何かございましたか?」そう声を掛けた

「正岡さんが言っていた通りだと思って。新村さんは仕事の鬼だって言ってました。何があっても、何を聞かれてもプライベートは出さないって。」

鬼ってなんだ。鬼って。お客様に余計な事を話をするなよ。

そう心で愚痴を噛み締めた。

「私たちの予約取ってくれたのは新村さんですよね?仕事が出来て、あんな彼氏がいて羨ましいです。新村さん愛されてますね。」

「そうそう。電話切ってから顔真っ赤にして可愛かったですよ。」

そう言われるとあの日の事が蘇る。こっちが恥ずかしくなった。

「新村さん顔真っ赤ぁ!!やっぱり新村さんが彼女さんなんですね。」

「ほんとだぁー!!」

彼女達がはしゃいでいる。もうここは認めるしかないのか?と俯いたとき、加藤さんが現れた。

「新村?どうした?お客様、新村が何か粗相でも致しましたか?」

そう声を掛けてくれた。彼女達は少し驚いている。

「加藤さん、大丈夫です。私がご案内致します。こちらへどうぞ。」

そういって彼女達を誘導し、一通りの案内を済ませた。

「先程は申し訳ございませんでした。私が正岡とお付き合いさせていただいております。電話対応の件は私から注意させて頂きました。本当に仕事中になにしてんねんって感じですよね。彼そういうとこバカなんです。まぁ私もなんですけど。」

そう言って笑うと彼女達も笑った。

「私たち、ここに来るまでずっと言ってたんです。羨ましいなぁって。新村さんに会うのも楽しみにしてて。最後一瞬机の下に隠れたとき正岡さん何て言ってたんですか?」

きっとあの好きだと言ってくれた時だと思ったが言えるわけがない。

「それは秘密にさせて頂いてもいいですか?」

「新村さんと正岡さんのようなカップルに憧れます。ラブラブなんだからぁ!」

そう言って彼女達は入り口に入っていった。

何か楽しそうに話ながら去っていく二人に私は「ごゆっくりお過ごしください。」と見送るしか出来なかった。


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