佐原さんと小鳥と鈴と(終)
佐原さんの話した「謎解きの答え」は、大体僕と同じようなものであった。
でも。
やはり、僕の予想通り。
佐原さんの答えには、あるものが抜けていた。
それは─────手紙の存在。
佐原さんはあの暗号を「挑戦状」と言っていた。
けれど答えは違うのである。
その裏付けとして、実可子さんも佐原さんの推理に首を振り「不正解」と言っていたのだから。
────すると。
僕が答えに辿り着いていることが分かったのか分かっていなかったのか。
実可子さんは椅子から腰を離し、立ち上がり。
そして言った。
「この答えは、そうだね。─────大人にでもなったら、教えてやるよ、汐里」
静かに。
何時もの、あの騒がしい実可子さんとはまるで別人の如く。
実可子さんは言った。
「嫌だ。謎は、今解きたい」
佐原さんは譲らない。
と、実可子さんが、そんな佐原さんの言葉を聞いて僕に目配せをしてきたのだ。
僕は暫く考えて。
─────そう言うことか、と理解する。
そして佐原さんに向かって、一言言ったのである。
「佐原さん。これは謎じゃないんだよ。一種の────メッセージのようなもの、なんだよ」
言って。
僕は立ち上がり、紙とペンを取りだし例の怪文書を書き出した。
その間に実可子さんは部屋から退出する。
「ありがと」
と小さく呟いて。
佐原さんはそんなことにも気付いていないのか、はたまた謎の方に興味があるのか。
紙を、一心に見つめていた。
と、僕は、怪文書を写し終わり。
一文ずつ、解説していった。
そしてそれは同時に、実可子さんの思いを伝えていった。
と、最後まで聞いて。
佐原さんは安堵の笑みを漏らし、そして言った。
「バカ」
そう、たった一言だけ。
呟くかのように。
そして、佐原さんは続ける。
「………実日子叔母さんの………バカ」
けれどそう言った時の佐原さんの表情は何処か嬉々としていて。
優しげな、笑みであった。
そして佐原さんは言った。
「でも、ここで御説教するのは恥ずかしいから帰てから御説教することにするよ、実可子叔母さんには」
そして、スマホ片手に椅子から立ち上がり。
「今日は本当にお世話になりました、佐倉君」
リビングの出入り口前で前でそう言い、人例深く頭を下げる。
その後で。
少し、悪戯っ子のような笑みを漏らして佐原さんは言った。
「また一緒に謎を解いてね、佐倉君」
その笑みに僕は、笑顔で頷く。
こうして謎は解け、僕の日常に入り雑じっていた少し不思議な謎は消え去り、何時も通りの平和で平凡な日常が帰ってきたのであった。
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