ミステリアスな佐原さん⑥

「暗号が解った」

そう言った佐原さんに、暗号の事を話すからと言って夕食に招いてもらった僕───のはず、なんだけど………。

「何ですかこの下手物料理ゆうごはん………」

失礼ながらにもそんなことを呟いてしまった。

言い訳せてもらうと──この料理たちを見たら、さすがに誰でも僕と同じことを思うだろう。

立派な四人用のダイニングテーブル。

その上には、リンゴやらパインやらブドウやらをサラダの中に混ぜた、所謂「果物サラダ」を初めに、昆虫料理やら何やらすごく辛い臭いのするカレーライスが置いてあった。

「この夕御飯メニューに、何か文句でもあんの?ハルオ」

今は名前を間違えられた事よりも、この下手物料理さはらさんちのゆうごはんの事しか頭に入らない。

下手物達これを当たり前のように見つめている佐原さんと実可子さん。

いや、一部の外国の民族は虫を食べている、って聞いたことがあるから、別に虫は食べられないものでもないとは思う。

でも────でも、だ。

日本の一般家庭の夕御飯に、出すような料理ではないと思う。

というか、普通でないだろこんな料理。

まぁ、わざわざ人の家の夕食に招いてもらったんだし、文句は言えない。

「早く座りなよ、佐倉君」

佐原さんはそう言って僕を急かす。

僕は佐原さんの真っ正面の席に着席した。

「じゃあ───」

佐原さんの人なりの席に座っている実可子さんが言う。

「手を合わせて、いただきますっ!」

「「頂きます!」」

実可子さん、何時もはそんなことは言わないのだろう。

自分で言って自分でウケていた。

「じゃあ、早速本題」

(臭いからして)激辛のカレーを口にしているはずなのに平然した態度の佐原さんは、一言静かにそう言った。

というか、辛そうなカレー食べながらよく言えますよね。

と、僕も一口カレーを口にしてみると───。

「意外と美味しい………」

辛そうだとは思っていたが、意外と甘い方だった。

人は見た目で判断してはいけないって言うけど、物も見た目で判断しちゃダメだな。

「でしょ、ハルマ!美味しいでしょー?────って、意外とは余計だ!」

実可子さんはそう言うと、僕があまり口にしたくない、虫の料理を口に運ぶ。

これは無理だ。

テレビでも、罰ゲーム扱いだろう料理を人の家の夕御飯で出されるとか、芸人じゃない僕に何をやらせたいんだよって感じだ。

「で、本題に入りたいんだけど───いい加減良いかな?佐倉君」

表情かおは何時もと変わらない顔だが、今までに感じたことも無いような凄い殺気を漂わせている。

───はい、怖いですよ佐原さん!

「あ、うん。暗号のことについて───だよね」

ともあれ、佐原さんの言葉に返事をする僕。

「うん、そう。暗号のこともあるんだけど───暗号の中にあった暗号についても、話したいと思ってるんだ」

「暗号の中の暗号?」

そういえばもう、佐原さんにはあの暗号は解けているのか。

だから、その「解けた暗号の中」には、更に暗号が隠されていたのか。

「じゃあ、今からあのプリントの暗号について、説明を入れながら解いていくことにするよ」

佐原さんはそう言うと、平然と虫の料理を口に運んだ。

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