真実の口2

流れるプールでは各自がペイントしたゴムアヒルのおもちゃを流して競わせる競鴨レースが定期的に開かれて、毎度それなりの盛り上がりを見せている。

ちびっ子達が一生懸命水鉄砲でアヒルを妨害したり進めたりする姿が愛らしい。一方で、あざとく可愛らしい実況の声に目を見やると見事なアヒル口のお姉さん、ちびっ子どもの水鉄砲が間違えてお姉さんに向かないかしら。


レース後には表彰式のアナウンスがあり上位入賞者には遊園地のイベントチケットや金のアヒルなどレアカラーアヒルが授与される。

そのレアアヒルにコレクター魂を刺激されてか意外とリピーターも多いらしい。ちなみに、手に入れたレアアヒルでレースに参加することもできるようである。


遊園地の一角を改装して作られただけありそれなりの面積を誇る当プールではあるが、お盆に入り一日の来場者が10000人を超えるようになるとレジャーシートやサンシェードがこれでもかと乱雑に敷き詰められ、場内は足の踏み場を探すのも困難な状態となった。混雑は混乱を招き、そうなると私も水着審査に時間を費やすことはできず慣れない仕事に従事することとなる。

折角ご先祖様が帰ってきているのだから甲子園でも見てお家で大人しくしておけよまったく親不孝な奴らだなと自分を棚に上げて嘆いてみたところで今日の仕事量が減るわけもない。

他の施設内スタッフから無線機を通じて通報が入ってしまい、大変不服ながら、場内に足を踏み入れた刺青入りの若夫婦を場外へ追い返す本業に取り掛かることとなった。

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