「おはよう」って声をかけられても気づかない

何の色も見えなくなったのに

あたらしいシャツと着古したシャツを重ねて着て

どっちかわからなくなったまま外に出た

電信柱に半分だけ隠れて

砂埃も川の音もいつまでも落下する苛立ちも

全部全部瞳に入って

その痛みとは関係なく涙が出て

虫の羽も人の声もどこまでか落下する苛立ちも

全部全部瞳から出て行く

すりばちとすりこぎが大好きなこと

なるべく柔らかいものを砕くこと

レッドやグリーンのゼリーを混ぜてつぶして

きれいかわからなくなったまま床につく

「さよなら」って声をかけられてもこたえない

肌の色も見えなくなったのに

すぐしゃべる顔と押しだまった顔を同時にして

誰だかいつだってわからないから外に出た

電信柱に半分だけ隠れて

月明りも体臭もいつまでも落下するけだるさも

全部全部瞳に入って

その痛みとは関係なく涙が出て

雪玉も足の音もどこまでか落下するけだるさも

全部全部瞳から出て行く

全部全部涙から出て行く

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