羽根真似

ハーモニカを通してでしか呼吸をしないなら

吸うと吐くの間に喋っているように

音が鳴る


「これより羽根が生えますので

 乳幼児の閲覧を禁止します」

するすると鈴の模様のカーテンを閉める

やけにはしゃいで


そう、犬が来たんだ

君の羽根がもう生え終わったって

報せを知ったから僕はハーモニカごしに

「羽根を真似しているのですか

 真似て羽根を生やすのですか」

って聞いてみたら

その時とっても良い曲が出来たんだ


それでカーテンを勢いよく開けると

そこにいた君はきっとうれしそうな聖者

僕は無垢なる運転手になるので

さあご飯を食べに行こう

銀世界に足跡残しながら

ざくざくと


目隠しをしながら口紅を塗る

「これでおめかしは充分ですよね」

目隠しをして


そう、犬が来たんだ

君の羽根がもう生え終わってたんだって

思い出させられた僕はハーモニカごしに

「真似した羽根で飛んでしまえば

 銀世界に傷をつけることもない」

って笑ってみたら

君はその曲をいとおしそうに聞いていたんだ


そう、羽根を真似たんだ

君の羽根は羽根を真似たんだ

その真似の真似すら出来そうにない僕は

「せめてもう雪が降りませんよう

 これ以上の雪が積もらないよう」

って思っていたら

君は僕のハーモニカを外して


僕は君の目隠しを取って


さあご飯を食べに行こう

銀世界に足跡残しながらね

僕は君の羽根真似を見つめる

僕は自分の意志でハーモニカを口にあてがう

君は犬におどけて囁く

君は銀世界を羽根真似で舞う

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