同日 トイレ

 診療科の暗い廊下を曲がり、トイレの個室に閉じこもる。意味の分からない衝動が、私を混乱させた。

 嫌だったのか、何が嫌なんだ、看護部の人たちはみな優しく、病室に閉じこもれば同じ病棟の患者たちとも話さないでいい、嫌になる要素がない。

 怖いのか、怖いものなどない、病院だから幽霊が出るとでも?そんな気味の悪いものは感じたことはないし、人が怖いなら関わらなければいいのに。

 のに、こんなにも苦しく、気分が悪い。

 恐ろしかった、この衝動が収まるまで、太腿脹脛を殴り、抑えようとしたが、只痛み、収まることはなかった。

 助けてほしいのか、そうじゃない、何かを思い出して嫌になったわけでもなく、頭痛を伴って、衝動は私を埋めてくる。

 本能的に回避したいものがあるのだろうか?

 この衝動は私を、人としての形を壊してしまいそうな気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る