想い人の新しい恋人は…


「…な、んで…?」


よくやく絞り出した声は乾いていた。


理由を尋ねると、夏夜は少し照れくさそうにはにかんでこう話した。


「俺、春希と付き合う事になったんだ」


…………今、なんて言った?


『春希』と言う名前に、俺の頭の中は真っ白だ。


…北宮春希、俺はその人物を良く知っている。


思考回路の停止した俺を他所に、夏夜は嬉し気に続ける。


「いやさ、俺、前から春希の事が好きだったんだけど、しつこく付きまとう奴がいて同性と付き合えば幻滅するからって、流石に好きな相手に恋人のフリは頼めなくて」


…なに、それ。


「だから秋兎に頼むしかなかったけど、3日前春希が告白してくれてさ。そんな事最初から知ってたら俺達無理に付き合う必要なかったよな!」


ハハッと笑って話す夏夜が、俺は信じられなかった。


「…………」


「あー、でもあの時頼んだ相手が秋兎で良かったよ。ありがとな!」


「…ううん」


お礼を言う夏夜の笑顔が今は痛い。


俺、初めから眼中になかったんだ…


夏夜にとって俺はただの都合の良い存在だったんだ。



…すると、今一番聞きたくない声が遠くから聴こえてきた。


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