第4話 頼みの綱は人外転生(じゃなかった)
「ありました」
転司が検索を終えた。
三つほど小窓が展開する。
「ご希望の条件で該当するのはこの辺りです」
そのうちの一つを手に取った。
「人と獣が共に生きる世界、ストラウス。転生先は豚」
「豚……」
一抹の不安を覚える。
でも、人間は捨てたんだ。
もうちょっとまともな人生(豚生?)になるはずだ。
「言葉は喋れるのか?」
「ええ。そのようですね。しかも罠を作れるくらい頭も良いようです」
随分ハイスペックな豚だ。
「瘴気で凶暴化した熊を討伐するため、飼い主と仲間と一緒に山へ行きます」
「ふむふむ」
「倒されて行くハンターたち。次々と食われる仲間。生き残ったあなたと飼い主は雪の中、死の危機に瀕します」
「瀕する……ってことは救われるのか?」
「ええ、貴方は死にそうな飼い主に言うのです『僕をお食べよ』と」
「ちょっと待て!」
そんなどこぞのパンのヒーローみたいな展開は嫌だ。
「献身の上、自己犠牲。最高の舞台が用意されてる破格の人生なんですがねえ……次の人生は約束されたようなものですよ?」
「来世で幸せになりたいんだよ!」
「ふむ……では、次ですね」
次の小窓が来る。
「魔法世界シンドラ。転生先はゾンビ」
「待てよ。ゾンビって転生になるのか?」
「正確にはゾンビになる前の人物ですね。若くして亡くなり、その体を用いたネクロマンシーで蘇ります」
「ちょっと特殊だな」
「一度死んでいますので、死を恐れぬ兵士として戦えます。ネクロマンサーと共に世界を救う戦いに身を投じます」
「へー。世界は救えるの?」
「救えるみたいですね……」
「やった!」
俺はガッツポーズを決める。
人間じゃないけど、これはこれで有りだ。
「あ、でも手柄はネクロマンサーの主人に皆持って行かれますね」
「意味ねえじゃん」
「あくまで生かされている状態ですからね」
「うーん」
「あと、一度死んでいるせいで三大欲求が無くなってます」
「却下」
そんなのに転生したら何を楽しみにして生きて…いや、死んでいればいいんだ。
俺は次の小窓を手に取る。
「中世の世界。転生先はホムンクルス」
「ほう」
「父親が、死んだ娘と妻の細胞を使い、魔法技術で作ったのがあなたです」
「じゃあ女?」
「そうなりますね」
女の子に生まれ変わるのは面白いかもと思った。
「生まれた貴方は人間としての知識を得ながら成長していきます」
「へー」
「そんな中、父親は再婚し、継母との生活が始まります」
「ふむふむ」
「貴方は人間ではないことを隠していかなくてはいけません。でも、継母は貴方をいじめます」
「ん?」
何やら雲行きが怪しくなってきた。
「実は継母は、父の資産を狙っており、貴方はその陰謀に気付きます」
「おい」
「自分を構成する娘と母の細胞が告げる。『この家と父は絶対に渡さない』……そして貴方は継母の食事に毒を」
「待て待て待て!」
転司を止める。
「ここから先が面白くなるところですよ?」
「そんなサスペンス劇場みたいな展開は嫌だ」
「『自分の家族』という世界を救うホムンクルスのドラマじゃないですか」
「もっと世界規模の危機に立ち向かわせてくれよ!」
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