第二章3話 『こんにちわ』

「おい剣。座りなさい」


「なんだ急に改まって、今日は創立記念日だから休みなんだけど」


「そんなことではない。第一、お前が学校を休もうとも俺は止めもせん。自分の選んだ最善故の選択ならばわざわざ口をはさむのは無粋。いやいや、そうではなくてな」


「んじゃ朝飯のことか。すっかり飯を炊くのを忘れてたけどカガミがその辺りは」


「まあお前の炊く飯はちょうどよくて母さんの面影を感じる程だ。だが矢田野の娘さんの炊く飯も絶品。ではなくてな」


「んじゃ父さんと母さんの出会いが実は合コンだったとか」


「いやいやいや、父さんと母さんの出会いは緑生い茂る林の中、鳥たちの囀りが呼び寄せたんだ。でもなくてな」


「んじゃ、なんなんだよ」


 帰宅を果たすと父に道場へ案内され、正面同士で正座をし合い何やら難しい表情を見せる父。

 元から不登校の件には一切の関心がなく、炊飯の役割のツルギが今朝はその役目を放棄して幼馴染であるカガミに代役を頼み、父母の恋の成り立ちも違うとなれば、他に思い当たる節は何もない。ないはずだが真打に辿り着かれたらと言う何かへの恐怖心はあった。だから遠ざけたいと無意識に願い、知り得るそれらを投げかけて問題を流そうとする。

 父に知られてはならない。気付かれてはならない。きっと妨げられ拒否され抑制すらされる。そうすればツルギは反発も反論も反抗も出来ず、父の意見を呑み込み頷き、成し遂げたい祈願を放棄する。


 クラスメイトとのサバイバルゲームの最中のことだ。意識がとび、身体が震え思考が止まった。それ以上に何かあった気がした。何か大切なものを思い出した。だが何かは分からず思い出したことすらすぐに忘却し、身体が震え脳が震えても何があったかはそれ以上のことはなかった。そうとしか言えないのだ。

 だが、感じた。限りない情を。それさえ分からず見つけられない。だが、知っている。感じたそれの大切さを。


 父は唸り悩み腕組みをしては、唸る。

 そんなはっきりとしない答えが出ない状況を放棄するためツルギは立ち上がり、


「話しねぇんじゃ行くからな。カガミが待ってんだ」


 そんな息子の背中を見つめながら家屋への扉に差し掛かったところで父は声を絞り出す。


「おい剣」


 その声にツルギは動作を停止させて父の繋がれる言葉、問いを待った。永遠とも思わせる空白の時間がほんの少しの数秒続いて父は続けた。


「お前、爺ちゃんの刀。知らないか?」


「爺ちゃんの刀は道場のそこに……」


 それがあるはずの場所へ視線を送る。道場正面の神坐。そこに鞘に納まる刀が貫禄を成して存在していた。そう、存在していたはずだが、今はそれがなくなっている。その刀の消失を目の当たりにしたツルギは無意識に自身の右腰に手を探らせる。動悸が上がる感覚の中、父は一つ言葉を返した。


「知らないならいい。呼び止めて悪かった。矢田野の娘さんによろしくな」


 ツルギは「あぁ」とだけ返してその場を後にした。



 † † † † † † † † † † † †



 時刻は午後二時になろうとしている。

 お洒落なヨーロッパ風の玄関。インターホンを鳴らすとすぐに返答がノイズ越しに返ってくる。


『……はぁーい』


「こんにちわ、日柳です。えっとカガミ……?」


『――ッ。つ、ツルギ!? ちょちょっちょっと待っちょれ』


「……まっちょれ」


『待ってって!』


 インターホン越しに「はいよ」と穏やかに返す。慌てよう的に、ゆっくりでいい。や、慌てんな。とかを申しても相手はむしろ慌てふためく。ならば急かしも煽りも無駄な発言を控えこちらが焦っていないことを伝えるためにも出来る限りの平穏を伝えた。その結果が、十秒程でカガミを玄関に召喚させることになったのだが、


「お、お待たせさまー。ふ、ふぅー」


「待たせたのは俺だし、今はそんな待ってねぇし、支度するならもっと落ち着いて丁寧にな。ほら、口元」


 居眠りの名残りがその可愛らしい小さな口から顎にかけて残っている。それをツルギは自身のハンカチを取り出し拭き取り、満足の一言で頷く。


「よし、これでおっけい。はっ、はっ、バックション!」


 頬を真っ赤に紅潮させるカガミを余所にツルギは頬鼻先に赤い斑点を浮かばせて目を充血させてくしゃみの乱舞。


「もぅもう。ツルギってばずるいってば。こんなの反則」


「はひぃ? 何がはんそっ、ベッグション!」


「なんでもないんだよぉーだっ!」


 舌を先端だけ少しだけ出して拗ねながらに笑みを浮かばせて艶やかな髪を弾ませる。くりくりとした双眸を開き、ツルギを避けて三歩先に進んで踵を返し、


「ほら行こ」


 繋がれることのない掌を差し出し顔を少しだけ傾けるカガミ。彼女の素直な可愛らしい笑顔。すでに日常になっているはずのその笑みがどこか懐かしく感じ再び拝めた安堵を感じる。普段通りのその笑顔はいつもと変わりばえないのだがどこか寂しげにも思える。

 端から見ても心弾ませる彼女、今にも駆け出しかねないが、


「カガミその前に」


 差し出した掌を引っ込めると「ん?」と先刻よりも顔を傾け、ツルギは背後になった玄関の取っ手部を指差して、


「鍵、しねぇでいいのか?」



 † † † † † † † † † † † †



 電車に揺られること四十分程度。ホームを抜けその地に足を送った彼と彼女。彼は腰に手を宛がい重心を後ろに持っていき背伸びをして、


「着いたー」


 彼女は彼の傍らで大きく空に届かせると錯覚しかねない程に仰がせ高らかに叫ぶ。


「ふんがー!」


「怒りで常に血管が浮きでて身体が真っ赤に見える獣人だけど、一気にハイテンションとなり猛烈に襲いかかってくるのは勘弁な」


「フンガー!」


「くっ、一気にハイテンションになっただと!」


「ハイテンションはハイテンションだけどフンガーじゃあないよー、ドラキュラ・クエスト面白いけどコア作品で続編でなくてがっかりなカガミだよぉー」


 ドラキュラ・クエストとは詳細は省くが大人気ゲームと名前が似ていることから日の元から消え去った素晴らしいゲームである。

 肩の力をあからさまに落としすが直ぐに「でも」と前置きをして手を前方に向けて、


「アキバだよー、アキバ!」


 オタクの聖域と呼ばれる東京の秋葉原。眼前に広がる何階もの高さを誇るビルは窓から壁まで可愛らしいキャラクターが敷き詰められている。ホームを抜けて直ぐに目に入るは大きな巨大テレビのあるUBX。流行の新アニメのコマーシャルが流れている最中だ。

 ツルギは言わずと知られてもいない不登校児、家で鍛練を永久的にしている頭のネジが外れてるわけでもない。ましてや上辺だけの剣道の現実から一刻もゲーム、アニメの世界へ誘われたい張本人であった。昨日の登校をきっかけに何かが変わろうとしている現実もあるが。

 カガミは見た目や行動、交友関係に関しても至って普通。だがツルギの趣味に合わせるという特性でゲームにもアニメにも溶け込み今ではツルギを超えているのではないかとしか思えない活躍を見せるのは、ツルギの前だけである。


「だな。今日は何用で?」


「ツルギは何か欲しかったりしたいことあるー?」


「前来た時から新作入ってねぇしこれと言って欲しいもんはねぇかな」


「そっかそっかぁ。んじゃあ私に付き合ってもらうよー」


 二度顔を上下にこっくりと頷き嬉しそうに口元を曲げる。元を辿ればこの誘いはカガミからであり唐突だった。と彼女の浮つく表情を見ればそんな些細なことはどうでもいいとも思って、退屈を装いながら、


「んで、今日はどうすんだ? メイド喫茶か、地下アイドルか?」


「メイドさんも可愛い恰好に仕草に萌え萌えに癒やされるし、地下アイドルもきゃぴきゃぴですーっごく元気もらえるけど。今日は普通に遊ぼ、遊んじゃおー」


 珍しい選択に少しばかり戸惑いの表情を作るが息の呑むと同時に納得の笑みに変わり、


「おっけい。とりあえずはゲーセンでも行くか」


「だっい、さんせーい!」


 元気よくハイテンションカガミは拳を突き上げて軽くその場で飛び跳ね着地すると欠かさずに駆け出した。彼女のはしゃぎっぷりについつい口元を緩ませ、後を追う。と直後に盛大にカガミはその身を地面に衝突させたのだ。



 † † † † † † † † † † † †



 ツルギとカガミはアキバライフを満喫した。ゲームセンターでUFOキャッチャーをしたが二人とも惨敗、格闘ゲームではツルギのゼロ勝、音楽ゲームなどのアーケードゲームも触れ。その後は普通に遊ぶといった内容ながら普段回る店を転々として今は落ち着きのある中世のヨーロッパを意識した内装の喫茶店で安らぎのひと時を満喫している。

 店内の窓辺や本棚、客間の仕切りの壁にはアンティーク物がちらほら見える。


「ふぃ。遊びまくっちゃったねぇ」


「お疲れさん、けっきょくのところ割といつもどお」


「まぁー、いいのいいの」


「カガミがそう言うならいいけどよ」


「何、不服ぅ?」


「いやいやいや、なんつーかさ。カガミが前振りもなくその日に出掛けようってのが珍しいかったからてっきりいつもと一味違ったアキバライフを楽しもうとしてんのかなぁーって思ったからさ。俺はもちろん大満足だぞ」


 カガミはアイスココアの入ったグラスに薄い唇を付けて唇を湿らせると、瞳を細めて垂らして微笑む。


「ツルギが大満足なら私は大大大、だーい、まんぞく!」


 完全満面モードのカガミがふっと注意を窓辺に置かれたアンティークな置物に釘付けになり可憐な声を大きく張り上げた。


「あ! これ見て、可愛らしい」


 その双眸と指先が差す置物へツルギも視線を向かわせる。それは青色をメインカラーにした男の子と桃色をメインカラーにした女の子の人形でその後ろには人形より若干大きい小さな家。人形の二人は寄り添い合い二人とも笑顔でそこにいる。

 きっとこの構図を見ればこの世界でその物語を知る人らは分かるだろう。


「ヘンゼルと、グレーテル……」


「だねー。私もお菓子のお家に住んでお腹いーっぱい、お菓子食べたいなぁー」


「そんな家はやだな、虫とかやったら沸くぞきっと」


 眉を寄せて右頬を小さく膨らませる彼女。その小さく膨らんだ艶のある頬を突いて凹ませたくなる。まあ普段通りの症状が出るので出来ないことが悔やまれつつもっともいじける彼女の顔がもっと見たくなり、


「まあ、虫は沸かなくても虫歯とかになりかねぇ。蛇口からはジュースが出るし歯も迂闊にみがけねぇ。それどころか家自体食ったら崩壊しかねねぇし贅肉の無限増幅が止まらねぇ」


「むぅ~。ツルギには夢とかとか分からないの!? 乙女の夢を真っ向から叩き潰すとモテないよ!? ……まぁライバルが少ないに越したことはないけどぉ」


 胸に槍を放り投げる発言後の後半はツルギには聞き取ることは出来ないほどに小さな呟きであった。ツルギは吠える彼女を両手で宥めるようにしながら、


「どぅどぅ。俺が悪かったよ。でもしっかり歯磨きはしとけよ」


 うがー、とさらなる逆鱗が憤慨した刹那に続けたツルギの言葉に今までの感情が落ち着き唖然と呆然として二人はヘンゼルとグレーテルの置物を見やる。


「でも実際いいもんじゃねぇぜ、ヘンゼルとグレーテルの話」


「と、言いますと?」


「どこで聞いたか調べたか覚えちゃいねぇけどさ。お菓子の家なんて――」


 鋭利な鋭く尖った双眸がツルギを睨み付けていることに気付き瞬時に訂正して続けた。


「お菓子の家はあったかもな。まぁ、印象的なもんから言えば二人は愛し合っていた。正常以上に異常に、間違いながら普通以上に愛し合っていた。そして、人喰いの魔女は、最初から最後まで優しかった。だが」


 ――兄妹がおばあさんを喰った。おばあさんの家の物を全て盗み、家へ帰った二人を待ち受けた継母を殺し、やがて時が経ち実の父すら喰った。

 なんて虚言を彼女に言えるだろうか。頭がぶっ飛んだとしか言いようがなくなる。妄想の類を今この場で出せば幻滅はされなくとも最悪な雰囲気は露わになるだろう。口を噤むと彼女「だけど?」と続きを催促する。残酷な部分を端折りながら続ける。


「だけど、その良心的なおばあさんを騙して財宝を少しかっさらって帰ったんだ。その後はカガミが知るような話だよ」


 ふーん。とまるで上の空な返事を鼻で返すカガミは薄らと悲しげに半眼にして置物を見つめて薄い唇を開いた。


「それってちょっと前に流行った裏童話の一つ? 悲しいよね、それが実際の物語ってなるとヘンゼルとグレーテルだけじゃない、桃太郎もシンデレラも人魚姫も。昔聞かされたおとぎ話の方が全部好き。儚くても切なくても泣きそうになるけど、残酷じゃないから」


 遠い空を見つめる様なその透き通った瞳は空虚すら思わせる。だがそれだけに彼女の抱く思いの重さはどこで聞いたかも知らないはずの物語に思うよりも切なく重い。夢見る乙女だから辛く思い入れも深く知りたくない事実に目を向けたくなく改竄された空想の童話を信じたいのだ。

 故に彼女は無理にはにかみながら感情を堪えながら笑顔を作るのだ。


「なんてね。昔話、おとぎ話だからどっちが本当でも偽物でも物語は最後はハッピィエンドがいいってただの私の願望論でしたぁー」


 ツルギの知る物語は空想じゃないことは脳が理解していた。その願望すら届かない、希望さえない物語の残酷の先は……。


 彼女の笑顔が眩しくて、笑顔に癒やされて、胸の奥がざわつく感覚を覚える。否、今日一日中胸の奥のしこりはずっとあった。それが何か分かるはずもなく、不意に襲った彼と彼女の物語を振り返されて気付いてしまった今という時間。強引に作った笑顔と目の前の彼女といれるこの時が、


「泣いてるのぉ?」


「え……」


 心配そうに顔を少し沈めた彼女のその発言でようやく自身の頬を伝う雫の存在に意識が向いた。それはツルギの瞳から零れ溢れた涙。


「つまらなかった?」


 首を横に軽く振って否定すると、


「んじゃぁ、怪我した?」


 その問いにも顔を振り否定、


「なら、悲しいのぉ?」


「ちげぇよ、あれだあれ。目にでけぇゴミ入って酸欠っぽいから欠伸して思いのほか大量に出ちゃっただけ――」


 本来の自身のやり方。上辺や偏見、建前で飾る姿。その役目を思い出し口からだらしなく言い訳じみたものが溢れ出した。その時に気が付いた。自身の虚飾の裏側が、


「それもちげぇな。ただ」


「……ただ?」


「お前とこうやって話して遊ぶって、夢にも見なかったから。もう――」


 ――もう、逢えないって思ってたから。


 それ以上は彼女に伝えずに自身の胸にしまい込む。カガミは全身をオーバーに揺すり、


「ぷっ、ぷははは。なぁにそれー。いつも話してるしよく遊んでるんだからー。あ!」


 盛大に笑う彼女は何かに気付き笑みを驚愕に変えて硬直させたら、


「でもそれは現実なんだから、夢に見ないって言うツルギの言うことはなんだか正しい!」


「正しいのに笑いやがって、ってかしんみりシリアスな雰囲気になるところだろ」


「えへへぇ、ごめんね。でもでもそんなシリアスな雰囲気を振り撒くツルギに――」


 実際言葉通りならその方がまだいい。夢に見なくても現実で話して遊んで会って、それだけのことでも。会うだけでも出来るのなら十分なんだ。寝て起きて会ってだべってまた寝て。そんな平凡すぎる日常の繰り返しでいい。そう思う。だが実際その繰り返しの一日にすぎないこの日にどうしてここまで深く深く想ってしまうのか。どうしてこれまでに懐かしいと思ってしまうのか。無くなれとまでは思わなくても好きでもなかったこの日本、いや、世界が今は在ってくれてよかった、ここに居てよかった。そんな情が渦巻く。生きていてよかった。と、


 不意な脳回路の働きで視線が緑茶の入る自身のグラスへ落ちていればその間にカガミの握り拳が割り込み、


「――ツルギにプレゼントぉー。手、出して?」


 蕩ける様な高い声が耳に残りながら唖然と彼女の握り拳の下へ両手を差し出す。「ほい」と間抜けな声と同時に握り拳が開かれ重量が掌に直撃する。彼女の手がそこから引かれれば、


「……けん?」


「ツルギに剣のキーホルダーをプレゼントフォツルギ」


「親父ギャグ、それになんとも中二くせぇ」


 黄金にメッキされた携帯電話サイズの剣。重量からして鉄性だろう。その剣は日本刀とは全く違い西洋の剣、ゲームなどでもあるエクスカリバーをイメージしてあるのだろうか。キーホルダーと言うことで柄の部分から短くチェーンが伸び携帯電話に付ける品物だ。そして現実にぶち当たる。


「嬉しいけど、携帯持ってねぇから何に付けよう」


 不登校引きこもり自宅警備員と山警備員の称号を持つツルギはキーホルダーを装着させれる物をこれといって持っていなかった。財布はマジックテープ物でぶら下げられる箇所はない。苦悩に表情を歪ませていると、カガミが不気味に笑みを溢して、


「ふふふ、そう思ってました。もちろん対策済み、じゃじゃーん」


 両手を広げる彼女の手と手に掛けられたチェーン。


「ネックレスにも出来るのですよぉ」


「おお、こいつぁありがたい。まじでサンキューな」


「お安い御用だよこのくらい。本当はもっとツルギ似合いそうなお洒落なかっこいいものがよかったかなぁって思ったんだけど時間も少なかったし、あ、これはツルギと居る時間の方が今の私には大切って言うかかけがえのないものだから!」


「どぅどぅ。分かったから落ち着けって」


 自身の興奮さに冷水を掛けられたかのように瞬時にクールダウンする姿からは湯気が立ち込める錯覚が見える程に、顔は真っ赤になっている。割と前から赤かったがその時に比べても比にならないほど真っ赤。


「ふぅ、落ち着いた。でも、あの、そんなものでごめ」


「謝んなよ、これはカガミが俺に合うって選んだんだろ?」


 その当たり前の問いに彼女は当たり前に小さくだが頷く。


「んならなんだろうが嬉しい。お前が俺に何かプレゼントしたいってその気持ちが本当に嬉しい。ありがとな」


 そう言って剣のキーホルダーとチェーンをポケットにしまい、


「ありがとうとか言って着けないんだぁ。しょぼーん」


 あからさまに肩と視線と気持ちとオーラなどなどを沈める彼女。


「さすがにジャージで聖剣ネックレス付けるなんて痛いことできねぇよ!」


 そして笑い合ってかけがえのない一生忘れることのないであろうひと時をツルギの追憶の過去の一ページとして刻み込む。



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