第1階層ー3
部屋の真ん中には今俺以外の生き物が居た。
デカイ、緑色の芋虫である。
体長にして1mくらいのオオモノだ。説明からすると小さい方ではあるみたいだが。ていうかこれを見ると2mっていう数字が信じられないというか信じたくないというか。
芋虫はモソモソと動いていた。別に前進するでもなく転がるでもなくただモソモソ動いているだけだった。なんだろう。表に回り込んで覗き込んでみる。つぶらな目がかわ…かわ…いいのか?人位の大きさのある芋虫だ。よく見れば見るほど、ダメだ。愛着が湧きそうな見た目はしてない。虫嫌いなら裸足で逃げ出す。
さて、ここで気になった人も多いだろう。何故買ったのがクローラー一匹だけなのかということだ。
確かに戦力を揃えるだけならゴブリン十匹とかでも良いかも知れない。しかしそこは育成に慣れてるモノから言わせて貰えれば愚の骨頂である。
その根拠の一つは、この下のものを見てもらえれば分かると思う。
――――――――――――――――
Name 空白
Type クローラー
Level 1
Status 空腹
――――――――――――――――
つまり、モンスターにも当然のごとくレベルがあったわけだ。これが何を意味しているのか。
俺のレベルがあがりづらくなってしまう可能性だ。モンスターを倒せば上がると書いてあったが、何を持ってレベルが上がるという基準を満たすのか。普通に考えれば「経験値」というやつが有名で最も有力だろう。そして、勿論RPGをしたことのあるものなら誰でもわかる「経験値分配の法則」である。経験値は戦闘に参加した者全員に分配されるものなのだ。
沢山のゴブリンなんて引き連れていたら経験値が分配されすぎて俺に回ってこなく結局5レベルに上がるまで長期滞在してしまう。そんなのは嫌だ。
それにどうせ弱いのを一,二匹しか買えないのなら好きなのを買いたいというわけである。
まぁ、当然、経験値分配の話はゲーム知識が通用するならだが。
ならばどうするか。勿論方法は一つ。Skillを習得するのである。説明でそういってたし。多分、生き残るためには、必要なものが揃っているのだと思う。
Skillの欄をタップしてみるとズラッと色々、多種多様なスキル名が並んでいた。どうやら技というよりは特技や特性と言った意味合いの『スキル』だったらしい。数が多すぎて此処では割愛するしかないのが残念だが、「剣術」だとか「隠密」だとか。中には「料理」なんてスキルもあった。この中で住もうとする人も居るんだろうか。確かにPointで買えるモノの中にはFoodの欄もあったなと思い出す。しかし今の俺には何の関係もない。
スキルの欄をスライドさせていく。なかなか良さそうなスキルが見つから…お?
成長促進…成長を促進、増強させるスキル。自分自身には効果がない。家庭菜園にどうぞ。
成長促進を習得しますか?200pt消費します。 Y/N
…わざとらしい最後のうたい文句が気になる。しかし勘が告げていた。『これは使える』と。しかしSkillの習得ともなると随分とポイントを消費するらしい。ゆうにクローラーの2倍以上もする。
つまり、それだけクローラーは使えないという可能性もあるわけだが。まぁ今は気にしていられない。
《成長促進を習得しました。現在のLevelだと一種のみに効果が及びます。効果対象を選んでください
⇒クローラー》
残Point 710
ビンゴ!と思わず手を叩く。やはり勘どおりモンスターにも効果があったようだ。俺はすかさずクローラーを選択する。
しかしLevelとはなんだろうか。スキルにレベルでもあるんだろうか。それとも俺自身のレベルに依存するのか?
そういえばさっき見たステータスからするとモンスターに名前をつけれるらしいな。
クローラー…うーん。ララで良いか。クロ、は犬みたいだし。
Name ララ
ステータスを見るとどうやら名前が反映されたらしい。決まったらさっさと次へ行く。またPointは余っている。もう一つ位育成関係のスキル取れないかなと思う。
そしてもう一つ気になるものを発見した。
調教…モンスターを育てる際、スキルの習得や能力値の伸びしろをある程度決めることができる。
調教を習得しますか?500pt消費します。 Y/N
性的な意味でと思った俺はきっと俗物。
《調教を習得しました。現在のLevelだと複数同時に調教することができません。対象を選んでください
⇒ララ(クローラー)》
残Point 210
これもララを選択する。
他にもこんなスキルがあったが、Pointが足りなかった。
育成の心得…戦闘による使役モンスターの取得経験値、またLevelUPによる能力値UPに微少補正 3000pt
慈愛…仲間の体力回復速度が上がり、モンスターはなつきやすくなる。 1000pt
育成の心得は欲しかった。もしLevel5になるまでに掛かる時間が予想以上に長く、Pointが余っていれば取っても良いだろう。
後はどうしようか…他に気になるスキルも今はとくに考えられなかった。というかPointが足りないのでなんとも言えないといった方が的確か。
そういえばララの
ふむ…。
ピッピッピっと
《料理を習得しました。現在のLevelだとレシピは2種類のみになります。》
残Point 110
100pt消費して料理を習得する。
俺自身が料理を作れるかどうかは反映されないらしい。このダンジョンのみで使えるレシピということだろうか?
レシピを見てみると、こんなん出ちゃいましたけど
・おにぎり
・サラダ
…。
「こんな時、どんな顔すれば良いか、わからないの。」
「………。」
教えてくれ、ララは何も答えちゃくれない!
ため息を吐きたくなる衝動を抑えてSkill画面をバックさせ、Foodの画面に入り、そこで目当てのモノを買う。
《雑草を購入しました。》
《どんぐりを購入しました。》
《りんごを購入しました。》
《オレンジを購入しました。》
残Point 25
最初Foodの画面を見た時は雑草だとかどんぐりだとかなんの冗談かと思ったが、モンスターのご飯だと思えば普通だと思った。
早速料理スキルでこれらをサラダにしてみる。と言っても調味料もないし包丁などの調理器具もないので手でちぎったり剥いたりして山にして地面の上に置くだけだ。だって皿も無いし。
ちなみに林檎に関してはどうしようも無かったのでそのままデン!とサラダの山の頂点に乗せてみた。
「お粗末な草盛り」
ただ手で千切ったり乗せたりしただけの、サラダと呼ぶのも憚られる雑草と果物の小山。味付けどころかお皿すらない。
評価0
料理効果 なし
し、しょうがないじゃないか!
…これ、料理スキル必要だったんだろうかと疑問に思う。
しかしララは地面から直接でも気にせずそのサラダを口にしてペロリと平らげてくれた。さすが虫である。その間に俺もずっと忘れていたビニール袋の中から惣菜パンを取り出して食べる。
デカイ芋虫の横で一緒に昼食を取る男。とてもその映像はシュールだろう。
準備は終わった。そろそろ出てみるとしようか。モンスター退治に。
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