第9話 仕掛けた罠

 マスコミに流れたスキャンダルの嵐。議員たちの収賄に始まり、指定暴力団との繋がり、そしてその暴力団は麻薬取締法違反での一斉検挙。

 一つ一つを巧妙に仕掛けた罠だった。


 一部警察には麻薬の件でのリークと共に、裏も取れる証拠を揃えた。

 それが指定暴力団に情報が流れたところで、議員たちへの収賄の証拠を多数のネットカフェより送信。当然履歴は残しておく。議員たちは暴力団を庇うどころの話ではなくなるのだ。

 大きいものから小さいものまで。ありとあらゆる罠を禅雁は仕掛けた。

「罠は多いほうがいい。それも事実ですが、大きさも色々しておくものですよ。そして、私を騙そうとしたその報いは受けていただきます」

「それだけのために、こんな大掛かりなことをやったというのか!?」

「えぇ。紅林は既に雲隠れしておりますよ。あとはあなたたちだけだ」

 紅林はわざと逃がした。今後尋花や禅雁に関わる人たちに迷惑を被らないように。


 紅林と禅雁の「知り合い」はその話をつけている最中である。


「さて、尋花さん。戻りましょうか」

「……はい」

 驚く組員たちを尻目に、禅雁はその場をあとにした。


 男たちもそこを後にし、警察が駆けつけたときにはもぬけの殻だったという。

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