第2話 彼女との出会い

俺たちは屋台を巡りに巡り、4時間ほど歩き、なんとか落ち着いて座れる場所を確保したが、日は暮れていた。


「いやぁ~楽しいな!ははッ!」

「こっちは疲れたよ!まだ楽しめるのはサトシだけだよ。足痛いよぁ~・・・」


そう言っている愛実に俺は声をかけた


「大丈夫?先週の台風で地面はぬかるんで足を取られるからね。挫いた大変だから気を付けたほうがいいよ!」


「よ!気が利く男!」 「うるせーよw」


「う、うん!ありがとね。」(チラッ)


愛実はサトシの顔を見た。


「(なるほど・・俺じゃなく、サトシに心配してほしかったんだな。)」


少し無言が続き、空を見上げた。俺はこのきれいな空に思わず口が開いた


「でも、ほんと、今日は晴れてよかったね、まるで奇跡だよ。」


そのとき香里が何か思いついたように言う


「・・そういえばこのお祭りって昔は仏様を祭る儀式が元だって聞いたことがあるよ~」


「さすが香里ちゃん!頭いいね!そんな事まで知ってるとは!」


白々しくサトシは香里を褒めた。


「えへへ~♪」

「そんなに香里を褒めたって意味ないぞー」

「う・・・ま、まぁ・・」


そういってサトシがうつむく


「フフフッ♪だから仏様もこのお祭りを楽しんでるだろーなぁ♪」

「ロマンチックに語ってるけど、それ怖いよw」

「ハハハッ♪そうだね!はるくんツッコミ面白い!」

「(そんな笑うか?)」


サトシは楽しそうに香里としゃべっている俺を見てムッとした。


「休憩は終わり!次行こう!」


サトシは慌てて飛び出した。


「ち、ちょっと、サトシ!待ってよー!・・・きゃッ!—」


愛実はぬかるみに足を取られ転びそうになった。


「大丈夫!?」


俺はなぜか手が出て危ない所助けた。


「・・・・なんで・・」

「ん?」

「なんであんたなの・・・」


愛実の表情が険しくなった。


「あいはサトシに優しくされたいの、あんたじゃなくてなの!!」


「え?——」


掴んだ俺の手を振りほどき、愛実は去って行った。

去って行く愛実にサトシは気づくと、サトシは俺に走って近づき、怒鳴りつけた


「おい!はるてめぇ!何してんだよ!」

「ば、ばか!勘違いすんな!俺はなんもしてない!」

「うるせぇ!」

ゴツッ!

サトシは俺を殴った

「ッちぃ(この馬鹿が・・ッ!)」


俺はこんな災難も慣れっこで冷静にいられた。

サトシは嫉妬もこめて殴ったんだろう


「やめて!佐藤君は、ただ愛ちゃんを助けただけだよぉー」

「じゃあ、なんで愛実は辛そうな顔をしてどっか行っちまうんだ!」

「それは・・・」


言えない、言えるはずもない、親友の秘密をばらすことになるから―


「言えないのかよ、そうか、香里ちゃん佐藤の事好きだもんな」

「え?—―」


そう言うとサトシは愛実を追いかけ去って行った。

香里は固まっていたが、すぐに我に戻り、座り込んだ俺に話しかけた。


「佐藤君・・・」

「大丈夫だよ、それより、早く誤解を解きに行ってきな。あいつ馬鹿だからすぐに勘違いするんだよ。」

「でも佐藤君が一人に・・———」

「行けよ!」

「・・・・ごめんね、」


そういうと香里は去って行った。

香里は優しいから俺のことも心配したんだと思う。

だが、これで分かったことがある。

香里もサトシのことが好きということだ。


「(清水さんにああは言ったが、正直きついな、この状況)」


まさにこれが佐藤遥火の人生では稀にあることであった。


先ほどの騒動で人目が多くなってきたので、俺は少し離れた神社に行った。


「あれ?ここ誰もいないな。あんだけ人が居たのに。」


俺は進入禁止が書いてあった看板を全く見ていなっかった。


「まあ、落ち着けていいや、ゆっくり待てば連絡でも来るだろう。」

「あ、あのぉー」

「ふひゃぁッ!」


俺は変な声を出してしまった。知らない女性が俺に話しかけてきたので余計にびっくりした。


「ご、ごめんなさい・・もしかして誰かと話してました?」

「あ、いや、誰もいなかったからさ!独り言してました!あははは!」


俺は慌てていたが、すぐに冷静になって彼女を見た。

服はかわいらしい浴衣を着ていて、背はちっこく、童顔でその裏腹にスタイルはなかなかのもの、美少女であった。


「え・・と、うちになにか付いてました?」

「い、いやいや!とんでもなくかわいいなって思っちゃって―—」


思ったことを口にしてしまった。


「ええ?——」


嫌われたッ―—

また俺は余計なことをッ!

こんな美少女チャンスを逃したと思い込んでいた。


「嬉しいです・・・」

「!?」

「ほ、ほんとに!?」

「はい♪」


まさかの好感度アップ


「よ、よかった、チャラい男だと思われちゃうかと」


「ううん、あなたはとっても優しい方ですよ!」


「ま・・まだ会ったばっかりじゃない!決めつけるのは早いよ!第一こんなんで優しいって言ったら悪い人に連れてかれちゃうよぉ?」


「フフ♪あなたの目が優しさに包まれてますよ!」


「(こ、こんな死んだ魚のような目がかッ!?)」


俺は今まで言われたことがないことを言われ嬉しかった。

そして勇気を振り絞って言った。


「あの・・・よかったら一緒にお祭り回らない?」


すると彼女は満面な笑みで


「待ってましたぁ!♪あなたから誘われてほしかったんだ♪」


そうゆうと彼女は俺の手を掴み、走り出した。

「えッちょ!(あ、そういえば名前聞いてなかった)あの!おれ・・僕は佐藤 遥火!君の名は!?」

「うちは五十嵐 れいな!よろしくね!」


こうして俺たちはいや、僕たちはお祭りに戻った。

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