第19話 余韻
日本へ帰る日、ユンは仁川空港まで見送りに来てくれた。
「私ももっと本気で日本語を練習して、日本へ留学しようかな。」
ユンが飛行機の出発案内を見ながら言った。
「ぜひ来てよ。私がばっちりサポートするよ。日本の温泉に散れて行ってあげる。」
私は笑顔でユンに大きく手を振ると元気よく出発ゲートをくぐった。
飛行機が離陸し、窓の下に見える韓国の街並みに別れを告げながら今回の旅を振り返ってみた。せっかくユンが誘ってくれた研修についてはほとんど記憶がない。ユンに心の中でごめんなさいと言いながら思わず苦笑する。
想像もしなかった駿との再会、これがこの旅のメインテーマになってしまった。神様から与えられた奇跡としか言い様のないこの出来事にはどんな意味があったのだろう?
たぶんそれは「別れなおし」だったのではないだろうか?曖昧な別れが時を止めてしまっていた。私にとっても駿にとっても。「別れなおし」をすることで私たちがちゃんと前を向けるように、神様が計らってくれたのではないだろうか?
もうあの頃の駿は夢に出てこないだろうと
私は思った。記憶がちゃんと上書きされたから。これから夢に出てくるのが、今の駿であることを願いたい。
日本へ帰ってすっかり普通の生活に戻った頃、一枚の写真が送られてきた。駿からだった。そこには、漢江遊覧船の上で風を感じる私がいた。写真の中の私はとてもいい顔をしており、その姿は力強くしなやかだった。
私はその写真をフレームに入れ、壁に掲げた。
駿があの後写真を撮り始めたのかどうかはわからない。
でもそう遠くない未来にきっと駿は動き始めるだろう。自転車で風を切りながら、大好きなカメラを抱えて‥。
漢江遊覧船 @yonagahimenokoi
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