第8話 栄光が光り輝いて
「魔術師というのはやはり知識欲の奴隷のようだな。いやはや、禁忌に触れてまで得ようとするとは私には理解できないね。国家魔術師殿?」
騎士団の中でもひときわ目立つ女がイマルに向かって話し始めた。
女は金髪を腰まで伸ばしたかなりの美人さんだが、状況が状況だけに俺も手放しに喜べない。
「なんでここで王国騎士団が出て来るのよ。しかも、よりによってベラ、あんたの隊が出張ってくるようなことは起きてないわよ?」
禁書庫から出てきたイマルが美人さんになぜかけんか腰で話しはじめた。
確かに俺はこの場を誰かに見られたら面倒なことになるなとは思ったけれどもどうして王国最高の騎士団が出てくるんだ?
しかも、どうやらイマルはあちらのリーダーさんとお知り合いのようだし。
俺、帰っちゃダメかな。
「忘れたか? 我らの仕事は王国に迫る危険を排除すること。おまえが先日、任務中に失踪しあと、王国が放置していたとでも思うか?」
イマルがベラと呼んでいた騎士は、警戒を解かないままイマルと話し始める。
どうやら俺がイマルから聞いていた話とはまた違う筋書きのようだ。
出てくるメンツが豪華すぎて一般人の俺はどちらを信じればいいのかわからないぞ?
というか、俺は俺で傍観者の立場を決め込んでいられるような場合じゃないな。
よしここは試しに丁寧にお願いしてみるとしよう。
「あの、ちょっとお取込みの最中に申し訳ないんですが騎士様のいう通りだとすると、わたくしめはこの口の悪い魔法使いに騙されているだけなんですが助けてもらえませんかね?」
とりあえず保身に走る俺。
カッコ悪い? それでも結構、俺は何度も言うが一般人だからな、流血騒ぎに巻き込まれるのは勘弁だ。
「フッ、確かにこやつが口が悪い女だというのは確かだが、だからと言って男、貴様への疑いが晴れるわけではないぞ。そこで黙っていろ」
「あ、ほんとすみません」
俺は騎士の鋭い観光に射抜かれてすっかり委縮してしまった。
ほんとにカッコ悪いな俺。
しかし、あれが王国最高の騎士の覇気ってやつだろうか。
あの目の前ではどんな男でもすくみあがってしまいそうだ。
俺が圧倒されている横でイマルはなんてことないかのように騎士を目の前にしてなおも水晶で本部と連絡を取ろうとしている。
が、やはり連絡は取れないらしい。
「とにかく、どっからそんなデマを吹き込まれたか知らないけど私は任務で来てるの。それなのに先に禁書を盗られちゃって私だってどういう状況なのか分かってないのよ。本部とも連絡は取れないし。さっさと出なさいよね、まったく」
イマルの悪態に、ベラはつまらない冗談だだとでもいうように鼻で笑い、
「どこからもなにも国家魔術師協会からの命令だ。アスタムに向かった国家魔術師イマルの禁書の持ち出しを阻止せよ。生死は問わないというお墨付きだ。どのみちおまえをここで逃がすわけにはいかない。あきらめて投降しろ」
俺の顔から血の気が引いていくのがわかる。
なんで協会がイマルを殺そうとしてるんだ?
というか、俺って相当やばい事に巻き込まれてないか?
イマルがどんな顔しているかはわからないが、俺に今の状況を打開する手立てはない。
ゆっくりと騎士数人がが俺を捉えようと迫ってくる。
こんなところで……
こんなところで罪人扱いされちまうのかよ?
逃げなければと頭が命令を体に出すが、目の前まで迫ってくる騎士団の迫力に負けて一歩も足が動かない。
騎士たちが俺を捉えようとしたとき、覇気のない気の抜けた調子の声が入口の方から聞こえてきた。
「おや、今日は休館日と入口に看板を立てておいたはずなんだけどな。お客さん方勝手に入ってもらっちゃ困りますよ。だいたい、こんな朝早くからどうして開いてると思ったんですかね」
そこには司書さんが困った利用客を見る目で騎士団を見回しながら立っていた。
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