第6話 空に暗雲が立ち込め、
「あら、早く出過ぎたかと思ったけれどそんなことはなかったようね」
「いや、俺もおもったより早く起きちまってな。まぁ、早く行こうぜ」
緊張のためか予定時刻よりも早くに集合した俺達はまだ薄暗い街をあるきだす。
まだ日が昇り始めたばかりの街は大学都市とはいえ、見かける人は少なく街はまだ静けさに蓋をされていた。
「今日の流れを伝えるわ。と言ってもあなたは特に何もしなくていいのだけれど」
イマルはそう言うと図書館に着いてからの流れを説明し始める。
まず、館内に誰もいない事を確認した後、司書さんに禁書庫の扉を開けてもらう。
目的の本を探し、見つけ次第その場で必要な箇所を読んで書庫を出る。
その後、内容を俺に伝えて対策を練るという流れらしい。
「……俺もしかして付き添い以外の役目ない?」
「そんな訳ないでしょ、あんたも本を探すの手伝うのよ。禁書庫といえど結構な蔵書量なんだから私だけで探してたら日が暮れちゃうわよ」
なるほど、禁書庫がどのくらいの広さかは分からないけれど、ともかく俺も図書館に入れるなら目的は果たせそうだ。
「といっても、あんたには本の名前は教えないから私が指定した本を運ぶ役目になるけど」
「はぁ? なんだそれ、背表紙に題名書いてあるんだからわざわざ出さなくてもいいんじゃないのか?」
「だてに禁書指定喰らってる本じゃないってことよ。その本を読もうとする人間にしか本当の書いてある内容が分からない様になってるのよ」
驚いた。禁書がそんな仕様になってるなんてどこの文献にも書いてなかった。
やっぱり王立以外では出回らない情報も多いようだ。
とすると、「ピオニロ」も背表紙にそのまま書いてあることはないんだろう。
「実際、私にもどのくらいで見つかるか検討がつかないのよ。禁書の持ち出しは禁じられているから時間は限られているし……着いたわね」
まさか、ここに二人で来ることになるとは思わなかった。
まぁ、イマルには悪いが俺は俺の目的を果たさせてもらう。
もちろん協力はするけどな。
「よーし、じゃあいっちょ気合を入れて行きましょうか。って、どうしたイマル」
「……おかしい。少し待ってて」
イマルが緊張している。
そのまま何かつぶやくと入り口の扉を開ける。
立ち止まって様子を伺っているようだ。
「……やられた」
「お、おい。どうかしたのかよ」
「禁書庫が誰かに破られてる。私達が来る前に誰かが禁書を持ち出している」
イマルは扉を開けて中に入っていく、俺も後に続く。
中は特に荒らされている様子はなく、一見して誰かが侵入した様子はなかった。
「なぁ、イマル。禁書庫って国家魔術師がいないと入れないんじゃないのかよ。禁書庫が開いてるわけ無いだろ?」
質問の答はイマルではなく、その先の何者かに開けられた禁書庫が示していた。
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