第91話 エルフとハバネロ肉まん殺人事件②
「ていうかあー、肉まんくらい、どうでもいいじゃないですかあー」
いきなりサキュバスちゃんがド正論をぶっこむ。
「うむ。わたしも同意見だな。また来年の楽しみに取っておけばいいではないか」
「でしょー? そんなに辛いのが好きなら、水に唐辛子でも溶かして飲んどけって話ですよおー」
ぐぬぬぬぬ。
エルフちゃんのお顔が真っ赤である。
「あの、エルフちゃん。気持ちはわかるけど、そういう犯人捜しみたいなのはよくないよ」
ぼくらはみんな、協力してシフトを埋めなければならないんだ。
こんなこと――とはエルフちゃんには言えないのかもしれないけれど、とにかくチームワークに亀裂が走るようなことはよくない。
「トシオは、本当にそれでいいの?」
「え?」
エルフちゃんが涙ぐみながら言う。
「不正と疑心暗鬼がはびこる職場のままでいいの!? ときには勇気を持って正義を貫くことこそ、本当のコンビニ愛やないん!?」
そんな壮大な話だっけ?
「このままじゃ、死んでったハバネロ肉まんが浮かばれん!!」
それを食べることに生きがいを持つほうの言い分とは思えないなあ。
すると、サキュバスちゃんがため息をつく。
「はあーあ、これだからエルフは。そもそも、どうやって犯人? を探す気なんですかあー?」
これも、もっともな言葉なんだよね。
スチーマーなんて、肉まんを出すときにしか開けないものだ。
それをいちいち覚えてるなんて――。
「ふっふっふ。甘いんよ」
エルフちゃんがテンガロンハットをかぶった。
「なんのために、うちがきみたちを呼んだかわかっていないようやねえ」
「……エルフちゃん。まさか、なにか秘策が?」
「もちろんなんよ! すでにうちは、ち密な調査により、犯人を絞り込んでいるん!」
「ど、どうやって!?」
「それは、これなん!」
ジャジャン!
見せられたのは、この店のモニターだ。
「うちは監視カメラの映像をチェックすることで、この三名に犯人の可能性があると踏んだんよ!」
「な、なんだってえ―――――っ!」
すると、姫騎士ちゃんが呆れたようにため息をつく。
「……エルフどの。その間、シフトはどうしたのだ?」
彼女に言われちゃったよ。
「……どおりで今日の後半、いないと思った」
「と、とりあえず、検証するんよ!」
エルフちゃんが、わたわたと映像を再生し始めた。
……店のほう、大丈夫かなあ。
≪続いてしまった≫
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます