第72話 エルフとついったー②
ぼくはついったーの画面を見ていた。
エルフ@elf007832 20○○/2/28
バイトの前に宿題やってしまうん
エルフ@elf007832 20○○/2/23
バイトおつかれさまー
エルフ@elf007832 20○○/2/21
今日もバイト頑張ったん
帰ったらサラマンダーが本棚の裏に挟まってたん
エルフ@elf007832 20○○/2/20
バイトのあとのハバネロ肉まんは格別やね!
「…………」
明らかに更新間隔が空いている。
というか、最後のつぶやきはすでに一週間前だ。
これは、あれだな。
「飽きたでしょ?」
エルフちゃんがぎくっとした。
「だ、だって!」
「なに?」
「誰もうちのことフォローしてくれんし、トシオもなにも書かんもん!」
いや、まあねえ。
このアカウントをフォローしようというひとはなかなかいないよね。
ぼくだってすでに放置していたんだし、いまさら積極的につぶやいたりしない。
事務所の隅っこで体育座りをして、エルフちゃんがフッと乾いた笑みを漏らした。
「所詮、うちなんて誰からも必要とされとらんもん……」
うわーい。
こんなにネガティブなエルフちゃん初めて見たぞー。
うーん。
たかがソーシャル・ネットワーク。
とはいえ、こんなエルフちゃんを放っておくと、クレームにつながってしまうからなあ。
「……でも、いいの?」
「え?」
「これで友だちを増やすんでしょ?」
エルフちゃんは、ハッとした。
「そ、そうやった……」
すると、ぎゅっと服の裾を掴まれた。
「お、お願い、トシオ!」
「な、なに?」
「うち、人気者になりたい! もっとたくさんのひととおしゃべりしたい!」
「うん、そうだね。ぼくも手伝うよ」
さっきと違って、目がきらきらしている。
やっぱり、エルフちゃんはこうでなくちゃな。
「でも、具体的にどうすればいいん?」
「そうだなあ。いくつか方法はあるけど、まず基本的なことからやっていこう」
「ば、バイトといっしょやね!」
「うん。まず、これはただ書き込めばいいものじゃない。それよりも、こっちから踏み出すことが大事なんだ」
「ど、どうすればいいん?」
「見て。エルフちゃん、ぼく以外は誰もフォローしていないでしょ?」
「う、うん」
「まずエルフちゃんから興味のあるアカウントをフォローするんだ。そうすれば、同じ趣味のひとがエルフちゃんに興味を持ってくれるかもしれない」
「わあ、トシオは頭がいいんね!」
「いや、普通のことだよ」
これでエルフちゃんが少しでも元気を取り戻してくれるといいんだけど。
そうして、数日後。
「トシオ! 見て、たくさんフォローされたん!」
「え、ほんとに!?」
エルフちゃんのつぶやきは、相変わらずバイトのことだけだ。
まさか、あれだけで効果があるとは思えないけど……。
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…………
……
…
「エルフちゃん……」
これぜんぶbot!
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