第71話 エルフとついったー①


「トシオ!」


 バイトにやってくると、エルフちゃんが意気込んで携帯を見せてきた。


「どうしたの?」


「じゃーん! 見てください!」


 その画面には、ついったーのタイムラインが映っていた。


 久しぶりに持って来たと思ったら、そんなのを覚えたんだね。


「急にどうしたの?」


「オークさんが言ってました。これをやれば、学校で友だちができるって!」


 ちらとレジのオークくんを見た。

 彼は気まずそうな顔で首を振る。


 ……どうやら、なにかの話題で出たのを勘違いしたみたいだな。


 でも実際、これをやっている高校生は多いだろう。

 これを話のきっかけにすれば、本当に友だちもできるかもしれないしね。


「よかったね。じゃあ、ぼくはレジに入る前に外の掃除をしてくるよ」


「…………」


 箒とちりとり、そして雑巾を持って店の前に出る。

 さっさっと掃除をしていると、ふと背後に視線を感じた。

 振り返ると、なぜかそこにエルフちゃんが立っている。


「じー」


「な、なに?」


「と、トシオはやってないんですか」


「え? あ、あー……」


 ついったーのことか。


「やってるけど……」


 いや、正確には『やっていた』だ。

 最初のころはわりと熱心にしていたけど、そのうち飽きて放置していた。


 アプリは入ったままだから、こうして開ければタイムラインが残っているけど。


 すると、エルフちゃんがずいっと携帯を差し出した。


「と、トシオのを入れてください!」


「え。ぼくのを?」


 それはつまり、アカウントをフォローし合おうということだろうか。


 うーん。

 ぼくのアカウントをフォローしても、大しておもしろいことは言ってないんだけどなあ。


「い、いいんです! お願いします!」


「そ、そこまで言うなら……」


 ぼくはエルフちゃんの代わりに、彼女のアカウントで相互フォローの設定をした。


「うへ、うへへへへ……」


 エルフちゃんはにやにやしながら、ぼくだけが登録されたアカウントを見ていた。

 まあ、初めてフォローし合うのって楽しいよね。


 ……でも、嫌な予感がするんだよなあ。



 ―*―



 そして後日。

 ぼくはふと、エルフちゃんのアカウントを見た。



 エルフ@elf007832 36分


 バイト終わったん!

 今日もつかれたー。



 エルフ@elf007832 5時間


 学校終わってバイト!

 今日も頑張るんよ!



 エルフ@elf007832 20○○/2/17


 バイト終わったん。

 今日はご飯食べてないからお腹減ったん…。



 エルフ@elf007832 20○○/2/17


 委員会の居残りがあった!

 バイトに遅刻しそうなん!



 エルフ@elf007832 20○○/2/16


 今日はお客さんがコーヒーこぼして怒られたん。

 でも、あれはうちのせいじゃないもん。



 エルフ@elf007832 20○○/2/16


 バイト行くん!




「エルフちゃん……」


 バイト入りとバイト上がりの報告だけされてもなあ……。



 ≪つづく≫

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