第27話 エルフと花火③
ぼくらは駐車場の隅にバケツを用意すると、大量の花火を並べた。
「そ、それは、タバコのおっちゃんがよく買って行くアイテム!」
あれ。もしかしてライターも知らない?
あ、そっか。
そういえばエルフちゃん、自分で火を起こせるもんね。
「これはライターって言ってね、火を点けることができるんだ」
シュボッ。
するとエルフちゃんは、がくっと膝をついた。
「……負けた」
勝ち負けなの?
「でもエルフちゃんのほうがすごくない?」
「いえ。魔法の欠点はその不安定な再現性。同じ魔法も扱うものによって強さが変わります。それを、誰でも同じように火を出せるなんて……」
くっ、と姫騎士ちゃんみたいなポーズをとる。
よくわからないけど、きっとプライドの問題なんだろうね。
「それよりも花火をしようよ」
「あ、うん」
花火のパックを開けて、その一本に火を点けて見せる。
燃え移った花火の先端から、黄色い炎が噴き出した。
「うわ――――!」
エルフちゃんが叫んだ。
そしてぼくにせっつく。
「なにそれ、なにそれ。うちにも貸して!」
「ちょ、危ないから待って」
そうこうしているうちに、花火は燃え尽きてしまった。
「あ、消えたん……」
「そんなに長くもつものじゃないからね」
「次、次うちやるん!」
エルフちゃんは一本を手に取った。
線香花火だった。
わくわくしながら火を点け、チリチリと火花がはじける。
「……なんか弱そう」
ポト、と玉が落ちた。
うーん。
どうやらエルフちゃんにはこの風情はまだ早いみたいだ。
いろんな花火を試しているエルフちゃんを、オークくんとベンチに座って眺めている。
「いやあ。もう肌寒いけど、こんな時期の花火もいいよねえ」
「そっすね」
おおっと、オークくん。
いつの間にかビールと焼き鳥なんか買ってきてるぞ。
くそう、ぼくもなにか飲みたいな。
と思っていると、エルフちゃんが叫んだ。
「と、と、トシオ! これ、これすごくないん!」
エルフちゃんの手から、まるで滝みたいな虹色の炎が噴き出している。
おー、すごいすご……。
「エルフちゃん、それ設置型!」
「熱い熱い熱い!」
「はやく放して!」
結局、ぼくたちもずいぶん楽しんでしまった。
「よし、もうエルフちゃんに教えることはないよ」
エルフちゃんは嬉しそうにうなずいた。
「トシオ、ありがと。これでうち、学校でもうまくやれると思うん」
「うん。がんばってね」
あれ。でもなにか大事なことを忘れているような……。
――翌日。
エルフちゃんがしょんぼりしながら言った。
「先生に没収されたん」
……だろうねえ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます