第26話 エルフと花火②


「急にどうしたの?」


 突然、大量の花火を買いにきたエルフちゃんに聞く。

 すると彼女は、なにやら得意げに鼻を鳴らした。


「わたしは家に帰り、花火とやらの正体を実家のお母ちゃ……、ゴホン、母に電話して聞きました。すると、衝撃の事実が判明したのです!」


「しょ、衝撃の事実って?」


 エルフちゃんは鼻息を荒くして答えた。


「はい! 花火をすると、なんと友だちができるそうです!」


「うん。……うん?」


 なんか理屈がぶっ飛んでるような気がするんだけど。


 しかしエルフちゃんはお母さんの言葉をまったく疑っていない。

 にまにましながら、その大量の花火の向こうの未来に思いを馳せている。


「これを明日、学校に持っていけば人気者に……。うへへ」


 そりゃまあ、すごく注目を浴びることにはなるだろうねえ。

 ていうかエルフちゃん、すごくシフトを入れると思ってたけど、もしかして友だちがいないのかな。


 まあ、それも当然かもしれない。

 こっちで暮らす異世界のひとたちもだいぶ増えたけど、まだまだ珍しいもんね。


「でもエルフちゃん。花火のやり方、知ってるの?」


「当然です。それも母に聞きました」


 エルフちゃんは自信満々に言った。


「この花火をくべて、サラマンダーの炎で焼きます。すると、すごく豪華な火柱が……」


「待って」


 そりゃ豪華だろうね。

 火薬が一気に爆発しちゃうよ。


「エルフちゃん。それは危ないんだ」


「……そうなん?」


「そうだよ。これにはちゃんとしたやり方があるんだ」


「ど、どんな?」


 声に自信がなくなっていく。

 しょうがない、ここは先輩が一肌脱いであげよう。

 それに明日、学校で火事でも起こったらうしろめたいもんね。


「ぼくが花火のやり方を教えてあげるよ。シフトが終わったら、ちょっと練習しようか」


「いいの!?」


 がばっと身を乗り出してくる。


 おー、おー。

 まるで小型犬みたいに、見えない尻尾を振っているのが見えるぞ。


 いやあ、でも花火なんて何年ぶりだろうね。

 ぼくもなんだかわくわくしてきたな。


「オークくんもどう?」


「うっす。お付き合いします」


 さすがオークくん。優しい男だ。

 こうして、ぼくらはシフトのあとにエルフちゃんと花火を試してみることになった。


 ≪つづく≫

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