第18話 エルフとおでん①
あっちゃあ。
店から出たところで、ぼくは参ってしまった。
いつの間にか雨が降っていて、街が鈍色に変わっている。
帰るまでもつと思ったんだけどなあ。
と、あとからエルフちゃんが出てきた。
「あ、雨……」
彼女は鞄から折り畳み傘を取り出した。
「どうしようかなあ」
「トシオ、傘は持ってきてないんですか」
「ぼくはスクーターで来てるからね」
しばらく待ってれば止むだろうか。
でもそんな雰囲気じゃないよなあ。
それにうちのコンビニってイートインコーナーないし、ずっと立ってるのはしんどいな。
なにより、みんなの目が気になるっていうかね。
しょうがない。
ちょっと雨足は強いけど、濡れるのを覚悟で帰るか。
「じゃあ、うちで雨宿りしていきますか」
え?
「うち、ここから歩いてすぐなので」
「ちょ、ちょっと待って。なに言ってるの?」
エルフちゃんは首をかしげた。
「あれ。わたし、なにか変なこと言いました?」
「い、いや。変っていうか……」
「あ、おでん買っていきましょう。トシオはどれにしますか」
なんだか押し切られるまま、ぼくらはふたりぶんのおでんを買って住宅街を歩いていった。
なんか買ってる間にシフトに入っていたオークくんがなんとも言えない顔でぼくを見ていたけど、言い訳するのもなんか下心があるようでなにも言ってない。
「ここです」
「うわあ」
そのマンションを見て、ぼくは素直に驚いた。
新築っぽい五階建て。
玄関はオートロックのエントランスで、すべての部屋に大きなベランダがついている。
とても高校生のひとり暮らしのレベルじゃないよなあ。
「え、エルフちゃんっていいところのお嬢さんだったりするの?」
「うーん。エルフの里では裕福なほうですけど。でも、こっちに留学する家庭はこんなものだってお父ちゃんが言ってましたよ」
「へ、へえ」
「トシオの家はどんなところですか?」
「い、いやあ。ここよりはちょっと小さいかなあ」
嘘です。この部屋の半分もなさそうです。
「いらっしゃいませ」
五階の角部屋に案内され、ぼくはおっかなびっくり足を踏み入れる。
非常にすっきりとしていて、掃除も行き届いているようだった。
……エルフちゃん。もしかしてこういうの慣れてる?
なんとも言えない気持ちで、ぼくはその部屋に足を踏み入れた。
≪つづく≫
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