第4-4話 マンガ家、手塚治虫先生の話!

 手塚治虫先生が、生前、トキワ荘を拠点に活動していたのは有名な話です。

 トキワ荘を事務所兼、自宅として活動していた他の作家を、ざっと名前を揚げ連ねてみますと、寺田ヒロオ先生、藤子不二雄先生、石森章太郎先生、赤塚不二夫先生などなど。

 

 つげ義春先生、つのだじろう先生も、当時、トキワ荘に頻繁に出入りしていたらしいので、そうそうたる顔ぶれのマンガ家達が、当時、南から西からトキワ荘を目指し、集結していたことになります。


 豊島区椎名町五丁目のトキワ荘を目指した漫画家の卵、若者は、当時、大勢いたらしいですが、その狭き門をくぐる資格を得た漫画家は(アシスタントを含め)少なかったそうです。


 多くは著名な作家の門前払いを食らい、同じテーブルに乗ることは許されなかった。彼らに何が足りなかったのか? それを才能だと言い切ることはたやすいかもしれませんが、そこには言葉だけでは説明が付かない目に見えない何か強い力が働いていたのも事実です。


 当時、トキワ荘に集結した多くの漫画家達が、間違いなく未来のマンガ、トレンド、流行を作り、マンガ道に重く、きらびやかなレールを敷いたのは間違いない事実です。


 本物志向の若者達だけが同じ屋根の下で情熱を燃えたぎらせ、つどい、切磋琢磨して能力を競った。


 今の時代、手塚治虫先生を尊敬しない、影響を受けていない漫画家を探す方が難しいでしょうし、誰も彼も、あの横山光輝先生を含め、みんな多かれ少なかれ、巨匠、手塚先生の影響を受けて育った。


 それはある意味、マンガ家を志す者の普遍的なバイブル、教科書のようなモノで、避けて通れないルーツのようなものかもしれない。


 さて、手塚治虫先生の話で恐縮ですが、連載を常時、たくさん持っていたことで有名ですが、多い時期にはピーク時で13本の連載を抱えていたらしく、アシスタント曰く、手塚先生が眠っているところを見たことがないというくらい、日夜、活動的にマンガを描いていたそうです。マンガのコマ割り、アシスタント制度を初めて日本の漫画界に持ち込んだのも、手塚先生が初らしいです。


 医師免許を所持し、これが後に、漫画、ブラックジャックとして、作品に活かされることになるとは、当時の手塚先生も知る由もないことです。


 なぜ高額報酬の医者の免許をかなぐり捨て、なぜ漫画家の道を志したのか、とても興味深いところですが、おそらくマンガ道に生きがいを、死ぬことを見付けたのでしょう。


 そこには当然のことながら両親の反対もあったことでしょうし、当時の閑散としたマンガ道を選び、世間の冷たい視線に晒されたことも容易に推測がつきます。


 手塚先生は、生前、トキワ荘のマンガ家に、映画をたくさん観ることを薦めていたそうで、手塚先生自身も、相当数の映画を視聴したらしい。


 あれだけの数のマンガを世に送り出した人ですから、当時の情報のインプット量も、桁外れで、相当なものだったと思います。


 さて、漫画連載時、特に漫画の締め切り時には、2~3日、完徹のような状態が続き、ご飯を食べるのも、ほんの休息の束の間を利用して、ついでのようなものだったらしく、寝てる間にも、漫画のアイデアを考える程、寝ても覚めても漫画のことだけを考えていたそうです。


 やっぱり何かを後世に残したいと思うなら、寝ても覚めても小説のことを考えるくらいでないとダメだということですね。


 電気の発明王、エジソンも、寝る間を惜しんで研究に没頭したそうで、天才は1%のひらめきと、99%の汗によって成り立つという有名な言葉を残しています。


 誰だって、人生、楽しくおかしく過ごしたいと思うのは当たり前で、私を含めた凡人は、日常の感情や下世話な話に日常を流されやすく、凡夫の如く浮き沈みが激しいので、なかなか1つの物事に打ち込むことができない。もしも、それらすべての情熱を1つのことに捧げられたら…。


 もしも2年でいい。3年でもいい。小説のことだけを考え、寝ても覚めても小説のことだけを考えることができたなら、そのときは、神様が何かしら、ご褒美を作家に与えてくださるかもしれない。

 

 大方の人は、趣味の延長で、普段は彼女のことを考えたり、夕飯に何を食べるかなんて考えたりしますが、おもしろおかしく人生を過ごしたいと願う人達と、小説のことだけにタイトに情熱を注ぐ人達とでは、人生の到達点がそもそも違うのかもしれません。


 私も一時期、寝ても覚めても小説のことだけを考えていた時期がありますが、その頃は、よく夢の中でアイデアを神様から教示いただいて、よく飛び起きて、ネタ帳、プロット帳に夢で見た出来事を書き込んだモノです。


 でも最近、少し熱量がたりないのか、夢では、まったく関係ない出来事を見る日々が続いています。これでは、まず夢は叶わないと思いますね。


 ビギナーズラックを狙っているような、そんな人達の所に、運命の神様が微笑んでくれるわけがありませんし、人の揚げ足取りばかりするような輩に、間違ってもチャンスの神様は声をかけないでしょう。ちょっと手塚先生のことを思い出したので、記事にしました。

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