第5話 オガゾゾ草原
…アグネシアから出てはや3日が過ぎた。フリル達はアグネシアで一番広いと呼ばれるオガゾゾ草原の真ん中を、馬に揺られてのんびりと移動していた。草の生い茂る緑の芝生がどこまでも続き、時々野生の獣が現れるが…基本は同じ景色である。
そんな同じ景色の中で、どこか退屈そうに先頭を進むフリルは芝生から採った野草の根を噛り水分を補給している。その両脇をラルフとグリフォードが挟み込んでいる。右には退屈そうに欠伸しながら馬に揺られているラルフがおり、その顔は何処か不機嫌である。左にはラルフが不機嫌になった理由を作った犯人でもあるグリフォードがおり、その後ろにはマリアが涙ぐんだ瞳でグリフォードの腰に手を回してへばりついていた。
「う…う」
揺れに怯える様子は年相応といえる。何故こうなったのか?それは3日前の事である…。マリアにとって馬は、初めて見る生き物であり、乗る機会などあるわけもない。一度は興味本位から乗ろうとはしたのだが初心者がいきなり乗りこなすなんて事は出来ないといえる…当然の如く落馬し、それが余程のショックだったのかトラウマとなり、一人で馬に乗る事が出来なくなった。見兼ねたフリルがラルフかグリフォードのどちらかの後ろに乗るように言った。当初はフリルの後ろと言っていたマリアだったが、フリルが頑なに拒んだが為に、マリアは即答でグリフォードを選んだという訳である。純白な衣服の少年のお腹に手を回して馬に跨る可憐な少女、その姿は騎士とお姫様のラブラブ逃避行にも見え無くもなく。非常に絵になっている。
「ちぇっ…俺の方が馬は上手いのによっ…」
「ひ…たいちょ〜」
不貞腐れ、愚痴るラルフをかき消し、馬の揺れを怖がったマリアの悲鳴が響く。マリアはグリフォードのお腹に回した手に力を込め、ビクビクとしながら助けを求めて悲痛な声を上げていた。その大きな瞼には零れる程の涙の雫がたまっている。
しかしフリルはマリアを無視してグリフォードに目を向けた。
「なに?」
グリフォードはマリアにしがみつかれて動き辛そうに苦笑しながらも、なんとか手綱を絞り、バランスを取りつつ真剣な顔を向ける。
「そろそろ目的地を教えて頂けませんか?」
「そうだぜ、隊長!流石に此処まで来てただの散歩なわけじゃないんだろ?」
グリフォードがそういえばラルフはその話題に思い切りのりかかってきた。
「そうねぇ…まあ、もういいでしょ」
フリルは諦めたか飽きれたかのようにため息と共に吐き出した。
「【ウィンホーバロン】」
フリルがその名前を口にした瞬間、ラルフとグリフォードは時が止まったかのようにキョトンと制止し、そのうちに顔が青く染まってゆく。
「う!…」
「【ウィンホーバロン】だとお!?」
ラルフとグリフォードは同時に声を荒げた。
「あ〜…」
しかしマリアは対して驚くでもなく呑気な声を挙げ、グリフォードは冷や汗を垂らしながら。
「何を考えているんですか!!!」
声を荒げ、怒鳴った。その目には明らかな動揺と恐怖が映っている。するとフリルは、そういう反応が分かっていたのか肩をすくめる。
「やっぱりビビったじゃないの…確り考えてるわよ」
しかし、グリフォードは珍しく動揺して首を横に振り噛み付いた。
「ですが!あそこは魔物の街なんですよ!?」
「そうだぜ!?、魔王軍ですら三度も遠征しては壊滅してるエリアなんだぞ!!?」
焦るグリフォードに便乗したラルフの罵声に、フリルは首を横に振る。
「なら問題!あんた達、今の現状で魔王軍にあたしらが勝てる確率があると思う?」
フリルにそう言われれば、ラルフとグリフォードは首を傾げた。
「どういう事ですか?」
グリフォードの問い掛けにフリルはそんな事も分からないのかと言いたげに盛大なため息を吐き出した。
「この前倒したバズズを覚えてる?」
フリルが言えば、ラルフとグリフォードはハッと思い出す。…バズズ、魔王軍に所属していた魔物である、単体で強大な力を有し、結界を魔王軍に与えていた存在である。
「あたしの予想が正しければだけど…魔王軍はバズズの他にも沢山の魔物を配下に置いている可能性がたかいと思うのよ…」
「つ…つまり?」
グリフォードは汗を垂らして唾を呑み込んだ。
「前回の戦闘に勝てたのは…ラッキーだったってことよ」
フリルははっきりと言い、グリフォードは目眩を受けたかのように顔に手をおいた。
「で?、それと今回ウィンホーバロンに行くのとどう関係があるんだ?」
ラルフは単純な疑問をフリルにぶつければ、フリルは腕を組む。
「魔界の生き物には、あたし達人間みたいに階級があるのは知ってるわよね?」
魔界の生き物には二つの階級が存在する、一つは何処にでもいる一般的に人間に恐れられ忌み嫌われる【魔物】と呼ばれる下級なものたちを差す。そしてもう一つは、一般的には知られてはいない【魔族】と呼ばれる下級の魔物達を統べる力を持った王族のである。その概要は人間の社会とは違い権力ではなく強大な力でのみ魔物達を従わせる事であり、そのため魔族の名を冠する事は、魔界最強の証でもあるのだ…。
「で、ウィンホーバロンの領主をやってる魔族ってのは、魔界の英雄の末裔らしくてね…実質、魔界で一の力がある魔族と言っていいわ」
グリフォードもラルフもフリルの言いたい事が分かったような顔をする。
「成る程!そのウィンホーバロンの領主殿と会談し、魔王軍から魔物達を切り離すよう説得する…と?」
フリルは素直に頷き、噛り飽きたのか、口にくわえていた野草を吐き捨てる。
「そゆこと…うまく行けば今後の戦闘を有利に出来るかも知れないからね」
「けどよ…」
しかしまだ納得がいかない様子でラルフが割り込んだ。
「…話し聞いてたのか!?さっきも言ったが、魔王軍は三度も遠征しては全滅してるんだぜ?話しなんて出来る相手なのかよ!?」
グリフォードはラルフの言葉を聞いて改めて頷きフリルに目を向けた。
「そりゃ当然じゃない…軍隊を率いて領地に入れば魔物達だって警戒するし、魔物にとって人間は敵なんだから武器を持った一団が来れば臨戦体勢にもなるわよ」
フリルはというと何故そんな事が分からないのかと言いたそうな目付きで呟いた。
「だったら!…」
「あたしらは戦争をするつもりで行くわけじゃないのよっ!いいからつべこべ言ってないで覚悟を決めなさい!」
フリルは焦れったくなってきたのか強めに言ってラルフの言葉を上から被せて黙らせた。
「ですが、会話にならない場合はどうするんですか?」
グリフォードは切実に言えば、フリルも腕を組み少しの不安に表情を顰める。
「それは…たしかに」
確かに相手は魔族であり、人間ではない。つまりは人の言葉を理解出来ない可能性も十分あり得るのだ。そうなれば飢えた獣に命乞いをしても無意味なように会話どころの騒ぎ出はない。
「それは無いと思います」
今迄、聞くに徹していたマリアが控え目に話に加わりキッパリと否定すると、フリルはマリアに目を向けた。
「どういうこと?」
フリルの問いにマリアは面と向かって会話をするのに不慣れらしく、目線をそらしてもじもじしながら頷いた。
「知っている、というか…ウィプルは大昔から今まで…ウィンホーバロンには大分お世話になっていますから」
マリアの言葉にフリルもグリフォード達も目を丸くした。
「それは初耳ね…詳しく教えて?」
フリルは、馬の手綱を離して速度を緩め、聞く姿勢になればマリアは小さく頷く。
「ウィプルと魔物は、古くから共存関係にあります、魔物は森の中に住まわせて我々ウィプルの魔法使いを守り、食糧を提供してくれる。その代わり我々ウィプルの魔法使いは魔物達に魔力を分けたり、魔術を教えるという形になっています。」
マリアは長い台詞を読み終えると、自分の水筒で口を軽く濯いだ。
「それで、ウィンホーバロンの領主はゼリムさん…というのですが…」
「ゼリム?…」
フリルは首をかしげて問い、マリアは頷く。
「はい、ウィンホーバロンの領主で【ゼリム・R・レオナルド】って言うんですよ」
フリルはそのマリアの言葉に首を大袈裟に傾げた。
「リット・レオナルド?」
「はい、外見は隊長みたいに小さくてスッゴく可愛いんです!もふもふだし!」
マリアは何故か興奮している様子ではあったが直ぐに気を取り戻す。
「…でも、面倒見の良いとてもいい方ですよ?」
マリアが惚け口調で語れば、フリルは腕を組み親指の爪を噛み締めた。そして誰にも聞こえないような小声でつぶやいた。
「レオナルド?…どっかで聞いたような…」
そして何かを悟り、ハッと目を見開く。
「どうかしましたか?」
グリフォードに聞かれてフリルは首を横に振る。
「何でもないわ」
そして小さく小声で続けた。
「…まさか…ね」
頭の中に考えた事を小馬鹿にするように口元を緩めて笑った。その頃…
『お嬢様!!…大変でございます!!お嬢様!!!』
そこはウィンホーバロンにある巨大な屋敷の一室、昼を過ぎたと言うのにカーテンを閉め切り、太陽の光を遮った真っ暗な部屋の中で。人型のスーツを身につけた猫の顔をした長身な魔物が一匹、慌て不為気ながら鍵がかけられた扉をこじ開け、シーツの膨らんだ大きく豪華なベッドの前に立つ…その姿は人間でいう執事そのものだった。
『…ん…ん〜?』
お嬢様と呼ばれたシーツに潜ったままのそれは、声変わりしていない幼児のような声を挙げながらシーツの中で気持ち良さそうに寝返りをうつ。しかしシーツの下側からはカーテンの間から差し込む木漏れ日を受け、美しい青銀色に輝く尻尾を垂らしたままヒラヒラと振る。その下には無造作に散らかされた豪華なドレスや下着が散乱している。それを見た猫顔の執事はため息を吐き出して慌てていた事を忘れ、ドレスや下着を拾い上げて丁寧に畳んで部屋に設けられた脱衣棚に置くと、ベッドに歩み寄りシーツの上から中に潜る愛しのお嬢様を想像しながらも揺する。
『お嬢様、起きてください…もう昼時でございます』
猫執事はそう言うなり揺するのを諦め、それの包まったシーツを無理やり剥がすと。中に包まっていたそれは転がりながら姿を現した。
『んごっ…すー…すー…』
それは、青銀に輝く長く美しい髪の年若い少女の姿をしている、女の子といってもいい。その姿は一糸纏わぬ生まれたままの姿であり、生まれた直後の赤子のように身体を丸めて眠っていた。外見は、人間でいえば12歳位で、寝顔の愛らしい少女だった。
しかし少女の頭には犬の物と思われる尖った耳、それとお尻には青銀に輝く美しい毛並みの尻尾があり。
それが彼女が人間では無いことを証明する。
『はっ…くしゅっ!…』
少女はシーツが無くなり急激に温度が下がった事によりくしゃみをすれば薄らと目を開き、紅色の美しい瞳が目の前の猫執事を見る。
『えでん…シーツを返せ…寒い…』
この少女こそ、ウィンホーバロンの領主。【ゼリム・R・レオナルド】である、そんなゼリムの言葉にエデンと呼ばれた猫執事は首を横に振る。
『成りません、もう昼時でございます…そしてまたそのようなはしたない格好で…領主たるもの、常に凛とした態度でおらねばなりませんぞ?だいたいお嬢様はですね!領主としての自覚が足りないのですよ自覚が!良いですか?先代の王妃であ…』
するとゼリムは、エデンのネチネチとした説教が始まると、うんざりした様子で頭の耳を畳み、睡眠を優先した。
『お嬢様っ!耳を畳んでも無駄ですぞ!?今日という今日はですな!確り主としての心得をですな!…ととと…それどころではありません』
そこでエデンは自分の目的を思い出して乱れたネクタイを正して咳払いを一つする。と、様子の変化を感じたゼリムは半目を開いてエデンを見つめた。
『お嬢様、緊急事態でございます…』
エデンがそう言えば、ゼリムは寝転がったまま畳まれていた耳の力を抜いて垂れさせる。その唇は尖り、いかにも面倒そうな表情をしている。
『何かあったのか〜?…聞くだけは聞いてやる〜』
やる気の一切無い声色で聞けば、エデンは頷く。
『我がウィンホーバロン領に四人の人間らしい影が向かって来ております』
するとゼリムの耳がピンッと上向きに跳ね、身体を飛び起こした。
『人間!?』
それはどちらかと言うと危惧等の驚きよりも、喜びのような驚きで、尖っていたゼリムの唇はニヤニヤと笑わしていた。しかし直ぐに顔を顰める。
『また魔王とかいう小僧の使いかぁ?』
聞かれたエデンは渋い顔をする。
『恐らくは…如何いたしましょう…』
そこでゼリムは、腕を組み小さな顎に手をかざして悩む仕草をする。
『まてよ…エデン、そいつらは4人と言ったか?』
聞かれたエデンはビシッと踵を合わせて鳴らして姿勢を正した。
『はい、ですが…人間は現在、大半が魔王軍と言われております…軽率な判断で飛び出して行っても、またいきなり斬られるかも知れませんぞ?』
それを言われたゼリムは素直に頷き、頭の中で整理を始めだす。
『だが…4人という少人数が気になるな…飛びきりのエース?まさか…遠征してきた能力者はすべて始末している…。奴は人間だ…そこまで能力者を無駄遣いするような低能な奴だとは到底思えん…だとすれば…』
ゼリムは何かを悟り、みるみるうちに笑顔に戻って行く、その喜びは尻尾へと移され激しく振る事で表に表される。
『お気持ちは分かりますが…お嬢様?、あまり人間と仲良くされては…部下達の指揮に影響致しますぞ?』
そんなゼリムを見兼ねたエデンは小言で釘をさす、と、ゼリムはムッと眉を吊り上げた。
『そんなことは分かっておるわ馬鹿ものがっ!』
ゼリムはムキになって声を荒げて虚勢を張るが、その表情は欲しかった玩具を買って貰った子供のように明るかったが為に説得力がない。
『何であれ、先ずは奴らの目的を確かめる必要があるな〜?』
ゼリムはベッドから飛び上がり、素晴らしい身のこなしで床におり立つ。
『も…目的?、お嬢様…それは!先程も言ったように魔王の軍人かもしれないのですぞ?ソレガシは嫌な予感が致します…』
そんなエデンの反応にゼリムは顔を真っ赤にしてエデンを睨み付けた。
『なんだエデン…わたしの意見に反対なのか!?』
暗闇の中で紅い瞳が怒りの色で燃え輝けば、エデンは飛び退くように離れながら慌てて首を振った。
『もっ!…申し訳ありません!。そんなことは一切!!…一切ございません!!…ですが目的を探るとはどのようにすればと…』
『なに〜?』
言い訳がましいエデンの態度に、ゼリムは表情いっぱいに不満を露にして裸のままエデンの前までのしのし歩いていく。
『お!…お許しを…』
完全に蛇に睨まれたカエルのようなエデンは、身に危険を感じてみがまえ、全身の毛を逆立てる。しかし、そんなエデンなど気にもせず、不機嫌なゼリムは真っ直ぐとエデンに手を伸ばした。
『ひっ!』
一瞬、魔族には存在しないはずの【死】を覚悟し、冷や汗を流すエデンではあったが、そんなエデンの反応に、ゼリムは目を細めて呆れた様子となる。
『なにをしている?さっさと服を寄越さんかバカモノ!』
ゼリムはそうエデンを一喝すると、エデンは、ただいまっと慌てて部屋のクローゼットと引き出しから新しいシルクのドレスとシルクの下着を取出し、着付けようと歩み寄る。
『いらん!!。自分で着る』
だが、ゼリムはエデンの手から服をぶんどり、乱雑に着付けると、着崩れすら気にせずにのしのしと歩いて行ってしまう。
『あ!お嬢様!?どちらへ!?…』
ゼリムは立ち止まり、まだ眠けがあるのか、暢気な大欠伸をすれば口の中には鮫のように美しく、鋭い歯が輝く。
『ご飯に決まっておろう?さっさとエスコートしないか!』
『は、かしこまりました』
エデンは素早くゼリムの着崩れしたドレスを直してから前に立ち、食堂までの道のエスコートを開始する。
『しかし、お嬢様…目的を探るとはどのようにするおつもりなのですか?』
エスコートしながらゼリムに聞けば、ゼリムはうんざりとした顔をする。
『エデン、今日のメニューはなんだぁ?』
『は?、昼食は人間から仕入れた上質な牛肉の丸焼きと、野菜のソテーでございます…』
エデンは胸元からメモ帳を取出し中にかかれた献立を確認して報告した。
『うむ?そうか、肉か〜♪いいな♪肉』
満足そうにしたゼリムは口を引き裂いて不気味に笑う。
『人間は敵だ、領内に入ったら食って良いと伝えておけ』
その命令にエデンはギョッとした顔をし、それをみたゼリムは笑顔のままに腰に両手を当てる。『ウィンホーバロン領に入ろうとする不届きな輩を野放しにしておく訳にはいかんだろ〜が』
エデンは、ゼリムの言葉を真っ先に怪しんだ。何故ならば…今まで領に入って来た人間は魔王軍の数百の軍勢だった、しかしゼリムは部下の魔物を【一切使わず】、自身のみで魔王の軍勢を撃滅しているのだ。【ゼリム・R・レオナルド】とは、そういう魔族である。魔族で有りながら人のように優しく、王で有りながら…自らの命よりも民の命を尊重し愛している美しい姫君、そんなゼリムの生きざまは…仕えているエデンにとっても誇りであった。
『やれやれ…また忙しくなりそうですな』
エデンはそう言ってため息を吐き出せば、猫顔を歪めて笑みを溢した。
『うむ?…まあ、わたしの予想では部下は一匹とて死ぬ事はない。何故ならば、あの臆病な魔王の軍勢が三度もこちらに進攻を始める事も無かろう?4人という少人数と言うのも気になるしな?…。つまり、今回は魔王ではない別の客人に間違いは無いだろう?…』
そう言ってゼリムは何度目かの大あくびをして、目蓋にたまる涙を拭った。
『今日は退屈しなさそうだな…ふふっ』
…所変わって再びフリル一行…
昼食を終えたフリル達は、未だに終わらない草原を進んでいた。すると、そんな草原のど真ん中で、先頭を歩いていたフリルが突然馬を止める。
「どうしました?」
後ろにいたラルフとグリフォードも馬を止め、不信そうにフリルの行動を見つめた。
「そろそろウィンホーバロンだから、ここからは歩きましょ?」
フリルはそう言えば、何時ものように馬から降りて馬具を外して捨てると、馬を野に放つ。
「了解〜」
「了解です」
ラルフとグリフォードも慣れた様子で馬具を外しにかかり野に放つ、マリアはようやく訪れた地に足の付く感触に安堵の息を漏らす。
「ここから先は、いつ魔物が襲ってくるか分からないのですね?」
グリフォードは両頬を叩いてから、剣を鞘から抜き放ち二度、三度とレイヴンもこめずに素振りをすると気合いを入れた。
「ああ、グリフォード…ウィンホーバロン内で魔物が襲って来ても殺しちゃだめだからね?、勿論斬りつけるのも無しだから」
フリルが言えば、グリフォードはキョトンとして口を間抜けに開けた。
「え?…だってっ」
「あたしらは戦いに来た訳じゃないんだから、殺生はダメに決まってるでしょ?あたしらは魔王じゃないんだから平和的に行かなきゃだめっしょっ?」
メっと容姿に相応しい愛らしい仕草まで着けて念押しした。
「で!では…わたしはどうすれば!?」
「そうねぇ、襲ってきたら……」
そしてフリルの目線は装飾美しい鞘に向けられる。
「鞘があるんだから、たたいて気絶させりゃいいじゃない」
フリルは簡単にまさに他人事と言いたげに言ってのけ、至って平然と腕を組んだ。
「さ…鞘…」
鞘に目を向けるグリフォードは、実に嫌そうな表情をし、その隣でラルフが手を挙げる。
「じゃあ、俺は?」
ラルフがそう聞けば、フリルは首を横に振り残念そうな顔をする。
「あんたのレイヴンは殺傷力が高いからね〜、戦闘になったら離れるか囮になりなさい、回避くらいは出来るでしょ?」
するとラルフにしては珍しく素直に頷いた。
「了解、まあお手並み拝見といくかっ」
そうしてフリル達はウィンホーバロン領に入った、入って数分もしないうちに、颯爽と魔物が現れた。
『グオオオオ!!』
それは…全長6メートルはありそうな巨大な人型の化け物だった、巨人族の一種らしく、雄叫びを挙げ高々と手にした棍棒を振り上げていかにもな威嚇を現す。
「た!隊長ー!?」
いきなりの巨人族の襲撃にグリフォードは、完全にビビったようで弱々しい声を挙げ、フリルに顔を向けたフリルはため息を吐き出した。
「なにをビビってんだかカッコわる…あんた良く今までエースだなんて言えてたわね…」
呆れたようにフリルは腕を組んだまま愚痴をもらしつつ隣に並ぶと、その小さな瞳は巨人を見あげる。
「いいわ。あたしが手本をみしたげる!」
フリルはグリフォードを押し出すように離れさせて前に出て、軽く身体を動かした。
『なんだぁ!?最初は肉の少なそうなガキかよ!!?』
巨人族は礼儀を重んじる種族と言われており、一騎討ちの決闘を好む。そのためか律儀に待っていたこの巨大な人型の化け物は大きな瞳で、完全にフリルを見下したような軽口を叩きながらも見下ろす。
「?…肉だけは多そうね…逃げるなら今の内よ?三下君」
負けず嫌いなフリルは、口でも負けず嫌いであり、正に馬鹿にしたように自分の頭に人差し指を当てる。
「体は大きくてもこっちはチンケなのね…大丈夫?」
フリルの明らかな挑発である、人間の戦士ならばまずひっかからないだろう、たが彼は人間ではない。
『くそちびがあああ!!』
案の定怒りの咆哮を挙げながら、地鳴りお起こす勢いで駆け寄り、その巨大な手に握られた棍棒を、大きく振り上げた。
「♪〜」
振り下ろされる棍棒など気にしない、フリルはスキップするような愛くるしい仕草で、平然とその手のしたをくぐって抜けつつ、巨人の右足の横をすれ違うように、左足で巨人の巨大な足の小指を蹴った…本当に触れるか触れないか程度の力で…。
【ドゥン】
突如弾ける衝撃が巨人の小指を叩き、巨人の身体が横向きに地面に倒れ、転げ回る。『ぎゃああ!!いでえ!!小指が!!小指がー!!』
大声で泣き喚き転がる巨人の声に耳を塞ぎながら、フリルはマリアに顔を向ける。
「スパークウェブよろしくっ」
フリルが言えば、マリアは頷き、巨人の頭にスパークウェブを放てば、巨人はピクリとも動かなくなった。
「どーよ!」
フリルはそう自慢気に振り返れば腕を叩いて見せた。しかし、グリフォードとラルフは…。
「いや、凄いのマリアじゃん?」
そう言って拍手していたマリアに目を向ければ、マリアは二人の視線に晒されて赤くなりながら俯いた。
「うっさいな!!あたしのっ…」
そんな暢気な事をしていたフリルの背中に何かが抱きついた。
『ひゃはー!!可愛い幼女!頭からまるかじりー!!』
カエルのような化け物は大きく口を開けてフリルの頭をまるかじりしようとした。カエルの化け物は両手で確りとフリルの両腕を抱き締めて拘束し、フリルは絶体絶命になる…はずが、しかしフリルは、両手が塞がれているにも関わらず全く動じる事無く、ただ顎をしゃくらせるように頭を後ろに振った。
【ドンォッ!】
頭から放たれた空気の弾丸が馬歌手に口を開けていたカエルの化け物の口の中を直撃した。
『ゲコーーッ!』
フリルから離れたカエルは地面に落ちて顔を押さえて苦しげに藻掻く。
「はい、じゃま」
フリルはゆっくり身体をそちらに向け、足でゴミを脇に寄せるかのようにカエルの身体を軽く蹴りつける。
【ドン!】
再び弾ける空気を叩く衝撃音、蹴られたカエルは綺麗に飛んで先に倒れていた巨人の上に重なり動かなくなった。途端に何もなかった筈の草原が…空間より這い出てきた魔物達により産め尽くされていく。
「た!隊長!!」
グリフォードがビビった声を挙げたのもその筈、魔物達の大軍に囲まれたのだ、フリル達は背中合わせに密集し、武器を構えた。
「これはこれは面白いお出迎えね〜、なら!さくさく進むわよ〜?」
そんな状況にも関わらず、フリルは何処か楽しそうにそして無邪気に笑っていた。
数時間後―ウィンホーバロン―
『お嬢様!』
エデンが血相掻いたように駆けつけ、部屋のベッドで退屈そうにごろごろしていたゼリムはゆっくり身体を起こした。
『なんだ〜?』
その声には力はない…エデンは歩み寄り、乱れたネクタイを直すと共に気を直す。
『人間四人、ウィンホーバロンに侵入、我が魔の軍団と戦闘…我が軍は全滅した模様です…』
するとゼリムはよっぽど心待ちにしていた情報だったのか、耳をピンと天に仰がせ含み笑いを浮かべる。
『我が方の損失は?』
聞かれたエデンは信じがたい様子で首を傾げる。
『は?…』
ゼリムがベッドから立ち上がる。その尻尾は激しく振られていた。
『同胞に犠牲者は出たのか?』
エデンは確信した…ゼリムは心よりこの状況を楽しんでいる…と。
『それが…お嬢様の言われた通りなのです。』
エデンは何処か気乗りしない様子で目を逸らしつつ、そんな異常な事態に戸惑いを見せる。
『負傷者は大勢いるものの、どれも軽傷で…犠牲者は1人すらでてはおりません…』
それを聞くなりゼリムは立ち上がり、尻尾を激しく降りながら落ち着き無く耳を動かす。
『素晴らしい!!魔の軍勢を一掃するどころか赤子をあやすが如く軽くあしらうとはな〜!あっぱれだあ!!』
ゼリムは心から賞賛して立ち上がり、興奮さめあらぬ様子を伺わせる。
『エデン!、直ちにそのもの達への攻撃を中止しろう!!。送迎馬車の用意だ!!風呂もわかしておけよー!!?』
ゼリムは余程人間の客人が待ち遠しい様子で、尻尾を振り回しながらも普段から面倒くさがりな筈のゼリムが率先して動き、まくし立てていた。
―そのころ、そんな事など知る由もないフリル達は。しつこい魔物軍の追撃を振り切って走り続け。草原の中にあった崩れた街の廃墟へと辿り着き、本日最初の大休憩をとっていた。
「ここがウィンホーバロンなのかしら?…」
フリルは建物の残骸を拾い上げて目を凝らす。
「いや、ここはラナリスの街だ」
ラルフは隣に立つと、廃墟となった街並みをどこか懐かしげに見渡す。
「ラナリス?…」
聞けばラルフは、近くの座れそうな瓦礫に腰を下ろして懐から取り出した酒の水筒のキャップを外して一口煽る。
「ああ…元々はゲノム王国の領土でな、魔物達と人間達が分け隔てなく暮らせた街だったんだと…」
「詳しいのね…」
フリルもラルフの前で背中の荷物を下ろしてその上に腰掛けると、ラルフはもの悲しい表情を浮かべていた。
「この街に侵攻した部隊にオレがいたからな…そりゃ、そうだろ?」
ラルフの表情を理解したフリルは、顔を背けた。
「そう…え?…じゃあ、まだここはウィンホーバロンの領土では無かったのかしら?」
フリルは不自然な気分となり、ラルフに再び顔を向ければ、ラルフも怪訝な顔をする。
「その筈だな…、ラナリスに駐屯していた部隊が壊滅したのは知っていたが…まさかウィンホーバロンの領土が広がっているとは思わなかったぜ…」
「地図ある?」
ラルフは小物入れから地図を取出してフリルに渡すと、フリルは新聞のように広げて顔を顰める。
「いま…大体この辺りだな」
ラルフは地域に詳しいようすで地図を指差してフリルにもわかるように円を描く。
「ふぅむ、なら…今日中にもう少し…」
「隊長…」
そこへ水を刺すようにグリフォードが呼び掛け、フリルは涼しい顔で振り向いた。
「なに?」
そう聞いて顔を向ければ、グリフォードの言いたいことが理解できた…彼の顔色は疲労により曇っているからだ。フリルは素早く隣のラルフに目配せしてから、マリアにも目を向ける。マリアも顔には疲労を表すまいとしているが、それが余計に疲労を際立たせていた。
「…少し、休みましょうか」
フリルはラルフに聞けばラルフは素直に頷く。
「だな…」
しかし、マリアは首を横に振り否定を示した。
「また魔物に襲われるかもしれないのに、この場で休憩なんてわたしは嫌です」
マリアは明らかに拒否を示し、グリフォードも頷く。
「ええ、わたしもウィンホーバロンまでは休まない方がいいと思います」
「けど…ウィンホーバロンで休める保証はねえぞ?」
ラルフに言われて黙り込むグリフォード…。グリフォードもそんな事は分かってはいるのだろう、フリルはそう思い、辺りを見回す。
「さて…どうしたものか…」
そう、腕を組んで考え込む、そして短い考えののち、ため息を吐き出した。
「じゃあ、そこでやすみましょうか…」
フリルはそういって、フリルの指差した先には、半分だけ形の残った民家が置かれていた…幸い屋根があり、雨風は防げそうな成り立ちとなっておりそれをみたラルフは頷くが、マリアとグリフォードは不満を言いたそうな表情をする。
「ウィンホーバロンでも休憩できる保証はないのだから、休める時に休んだ方がいいわよ…幸い近くに魔物達の気配は無いしね」
フリルが言うとマリアはキュトンとして両耳に手を翳して何かを確認すると、ちいさく頷いた。
「本当です…魔物気配が薄れています…」
マリアがそう言うと、グリフォードは渋々と頷いた。
そうして半分形の残っている民家の前までくると、まずはフリルが先陣を切って中に入り安全を確認する。
「どうやら安全のようね…」
狭い部屋の中を一つ一つ入念に調べたフリルは、入口でまっていたグリフォード達を招き入れ、暖を取る事となった。
「ちょっとストップです!」
マリアは民家に入るなり、ラルフとグリフォードを呼び止めた。
「お二人は少し周囲を探索して飲み水を確保してきて下さい」
「あ?、なんでだよ…」
ラルフは反抗的に言い放ち、マリアを睨めば、マリアはにこやかに微笑む。
「何ででもですっ!」
そう言って、魔力を解放し、強引にグリフォードとラルフを水の調達に向かわせると、わざわざ扉を閉めてから椅子に座り、荷物から取り出した紙の札に、指で何かを書きなぞりだす。
「なにそれ?」
そんなマリアの不可解な動きを、フリルは興味深そうに覗き込もうとするが、身長が低いため背伸びをしなければ見ることが出来ない。
「魔除けの御札ですよ」
「魔除け?…」
興味の色を瞳に宿したフリルは、もっとよく見ようと机によじ登るように足を浮かせた体勢になる。
「隊長、はしたないですよ?」
マリアは苦笑しながらそう言って自分の椅子を譲ると。自らは近場の椅子を引き寄せて座れば、フリルは膝立ちでマリアの手元を覗き込んできだ。
「これは、魔物に私達の気配を察知されないようにする魔法を、文字にして紙に書き込む事で自動的に出し続けるようにする魔法具なんですよ」
マリアはそういいながらも、青白く光りだした指先で白紙の紙に絵のような字を書きなぞっていく。当然紙には何も変化は無いしそんな事を言われてもフリルとしてはちんぷんかんぷんだった。
「分かんない…」
分からない事がある事が嫌な様子のフリルは唇を尖らせて不満を現している。マリアはそんなフリルの仕草を見ては笑みを溢した。
「まあ、簡単にいうならこの御札があれば安全という事ですよ」
それを聞いてフリルは納得したようで相槌を打った。
「でも―護衛は必要よね?流石にそこまで万能とは思えないわ」
信用ならない―当然の反応であり、マリアは苦笑を表した。
「先程隊長も言ったとおり…魔の気配がどんどん無くなっています…何があったかは分かりませんが、これなら1日休む位はこのお札で十分ですよ」
「なら、外にいるグリフォードやラルフを連れてきましょ?」
「その前に!」
行こうとするフリルを呼び止めて立ち上がったマリアは、札を近くの柱に張り付けてフリルを見る。
「な…なによマリア」
その眼差しの異様な空気に、フリルは思わず後退りした。
「もう!隊長ったら!…わたしたち!!もう3日以上お風呂に入って無いんですよ!!?」
「ちょっ!!…よるなぁっ!!」
流石のフリルも逃げようとするが、マリアはそんなフリルをガッシリと捕まえてずずいと身体を寄せ、臭いを嗅いでくる。
「う!いや〜!!」
「…あれ?」
マリアは不思議そうな顔をして、臭いを嗅いだ。
「隊長…全然臭いませんね…」
フリルを解放して見れば、フリルは目を背ける。
「そりゃあ…移動中とか…休憩の度にタオルで身体を拭いてるし、あたしそんなに汗とかかかない体質だからさ…」
そうだった、フリルは馬に乗っている間、特に身体を拭うような動作をしていた。
「そんなにタオルを持ってましたっけ?」
マリアは怪訝そうな表情で顔を寄せると、フリルは罰の悪そうな顔となり逃げようとする。
「そ…そうよっ!?毎回使い捨てしてるから〜」
そんな動作は一切していない、何故なら休憩の時にフリルが自分から離れたのはトイレに立った時だけであり、トイレの時ですら、マリアの時はフリルが、フリルの時はマリアが…近くで護衛として立っていたためであり、そんな事をする時間の余裕は一切無かったからである。
「隊長…【何か】隠していませんか?…」
そう言うと、フリルは目を完全に反らす。
「な…なにも隠してないよ〜気のせいだよ〜」
彼女は、全く分かりやすい嘘をついていた。
「とにかく!!わたしは大分臭くなっているんですから!!この大休憩でキレイキレイしないと行けませんよね!!」
「あ!!あたしはいいわよ!!1人で…」
手を掴んで引き摺るようにしながら、奥の小部屋に入る。そこには水を貯めて身体を流すための流し場がある、大分古びてはいるが使える事が伺える。
「隊長!暴れないで下さい!!パンツが脱がせないじゃないですか!!」
「脱がなくていいわよ!!だ!!だれか助けてーー!!!」
「隊長!!どうかしました!!?」
フリルの悲鳴に飛び込んで来たグリフォードとラルフが見たのは、下着姿のマリアに服を引っ張られているフリルの姿だった。
「え…」
気付いたマリアがギョッとし、見る見るうちに顔が赤くなり…赤くなりながら巨大な魔術陣が出現する。
「グリフォード!!退避だー!!!」
ラルフとグリフォードは素晴らしい意志疎通で、脱衣場から外へと飛び出した…。
【―シャイニング・アロー!!!】
そのすぐ後を追い掛けるように浄化の光が飛んでいった。
その日はマリアの御札の効果もあり。それ以上の魔物の襲撃は勿論、出現すら無かった。
その夜…
「…うぐ…うっ…うっ」
マリアは誰かの啜り泣くような声に目を覚まし、身体を起こし自らの魔法で時を確認する。
「…深夜ですか…」
夜明けまでまだまだ時間があり御札の効果時間は切れてはいるが、魔物の気配などは一切感じられなかった。
「うぅっ…」
再び響く呻くような声に、マリアは声の主を探して左右を見渡した。右には剣を抱えて壁に寄りかかるように眠るグリフォード、左には大の字で無防備に鼾をかいて眠っているラルフがいる。
「ふぐ…うっ…」
その声はマリアの隣から漏れていた。マリアが視線を落とすと、そこには小さな身体を丸めて抱えるように眠るフリルがいた。
閉じられた目蓋から涙が伝い彼女は眠ったまま何かに脅え、震えていた。
「……」
マリアはそんなフリルの頭を撫でてやり、優しく抱いた。
「……」
するとフリルは安心したのか静かになり、ゆっくりと寝息をたてはじめた。
「…よしよし、怖いものはいませんよ〜?」
思って見れば、フリルがマリアの前で眠るのは初めてだった気がしていた。マリアはそう考えながら、フリルの頭を撫でるとフリルは嬉しそうな寝顔になる。
「おにいちゃ…」
そんな外見に相当な寝言を言い、マリアはさらに顔を綻ばせた。
【続く】
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