Episode 09 そこのYOU!彼女つくっちゃいなYO!
ワームホールに呑み込まれそうな危機を脱したもののアンチ物理規制委員会へ連行されそうになった豪太郎だが、父一徹がセクハラ攻撃で真実ちゃんを撃退し、事なきを得た。しかし、ワームホール発生は豪太郎の体質が呼び寄せたものだという衝撃の事実を知らされる。
しかもホログラフィック原理について難解な説明を受けた挙げ句、金剛丸一家はまるごと
「いや、体質とかアノマリーとかいわれてもワケ分かんないし意味不明すぎ」
それはないわぁ~と豪太郎は手の平を横に振った。
あまりに理不尽な現実を突きつけられて、反射的に否定という行動を取っていたのだ。
父一徹と母涼子は困ったようにお互いを見やってから、肩をすくめる。
「なあ、豪太郎」珍しく噛んで含めるような口調で一徹は語った。「なんでオイラたち異時間同位体がここにいると思う?」
「なんでって、なんで?」
なんとなく受け入れてしまっていたのだが、同じクラスに両親の異時間同位体が存在しているというのはよくよく考えるとトンでもない話である。
もっとも、余りにも不自然すぎる故に、豪太郎も含めて誰一人としてツッコめずにいたのだが。
「ワームホールを通ってきたのよ」涼子はさらりと言ってのけた。
「って、さっきのヤツみたいな?」
そうそうと揃って頷く一徹と涼子。
「
「……うん」
「世間ではワームホール体質って言われててな」
「はい?(……なにその謎すぎる体質?)」
「平たく言うとだな、突発的にワームホールを呼び寄せちまって、ソイツが超ヤバイ状況をもたらすっつう厄介な症状のことなんだ。ま、二次元境界面で発生したエラーでしかないんだがな」
「毎日が人類滅亡の危機みたいな? Every Day Lethal Phenomenon?」
「そんな、Every Day Low Priceみたいにいわれても……!」
「それにな豪太郎。オメエにはワームホール体質を否定できない確かな証拠がある。……オメエの
「――ッ!」
幼少の頃からずっと不思議に思っていた豪太郎の完全同期状態。
なんの脈絡もなく超人的な能力を発揮できる意味不明な状態は、豪太郎が自分自身でまったく説明できないものだった。
それが、自身が
「
「は、ははは、ははははは」
受け入れがたい内容の連続に、豪太郎はとうとう壊れてしまった。
力なく乾いた笑い声を上げてしまう。
「オイラたちも豪太郎ぐらいの頃はホントに大変だったな」
「しょっちゅう地球消滅のピンチみたいな?」
「は、ははは、ははははは」
現実逃避気味に乾いた笑いを続ける豪太郎。
そんな豪太郎の肩を、一徹は優しく叩いた。
「だが道はある」
「そうよ」
「……って、なに?」
一徹と涼子はそこでニヤリと趣味の悪い笑みを見せつけるのだった。
「ワームホール体質に困ってたオイラは、“ワームホール体質友の会”に入ったんだ」
「(……いかにもとってつけたような団体名だなあ)」
「で、そこでお父ちゃんとお母ちゃんは出会ったの」
「はあ」
「お互い初対面からビビビビッときた二人はな」
「あっという間に恋に落ちて」
「ソッコー付き合うようになってな」
「はあ(……って、手がはええなあ)」
「で、やってやってやって、やりまくったわけだ」
「ばか、もう……。恥ずかしいっ!」
恥じらいながら涼子はグーで一徹を殴りつけ、一徹は斜めに回転しながら地面に崩れ落ちた。
「(……やたら暴力的だよこのクールビューティは!)」
「でね、そうしたらすっかり症状が軽くなったのよ」
「……へ?」
「もう、ウソみたいにねっ! ……愛は地球を救うってことよ」
涼子は豪太郎に向かって右の口角を吊り上げた。
「だから、豪太郎。彼女作っちゃいないよ!」
「作っちゃいなYO」口の中を切ったのか血反吐を吐きながらも、しかし一徹はサムアップしてみせた。
「(……いや、そんなジョニー社長みたいに言われても!)……ていうか、ムリだよ。彼女なんて!」
「大丈夫」涼子は不敵な笑みを浮かべながら虚空を睨む。「お母ちゃん、負け戦はしない主義だから」
「(……いや、むしろそっちの方が余計怖いんですけど)」
「ま、お母ちゃんにまかせなさいっ!」
自信満々な表情を見せつけたまま、しかし涼子の視線は暗闇のある一点に固定されたままだった。
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