「外が騒がしいな…」

 エクスは鉄格子越しに外の音を聞いていた。

「邪魔よ!」

「クルゥ…」

 レイナの気合いの入った叫びと同時にヴィランが牢屋の扉に激突する。

「坊主! 無事…か?」

 壁、鎖、首輪を見たタオが一瞬止まる。

「エクス、無…事?」

 同じくレイナも一瞬止まり顔を赤くする。

「新入りさんはそういう趣味ですか…」

「えっちょっ、違う」

 タオ、レイナの一瞬のフリーズと赤らめた顔が自身の趣味を勘違いされたものと気が付き慌てた。

「彼の趣味じゃないわ…私の趣味。好きな人は繋いでガラスの靴で踏みたくなるの」

「一線を越えてましたか。新入りさんではなくエクスさんとお呼びした方が?」

 後ろから現れたカオスシンデレラの台詞にシェインは反応し、エクスは慌てる。

「なぁ、ヤンデレの性癖なんて知らねぇけどよ、ここが地下なら急がねぇと出口がヴィランで塞がれるぞ」

 黒ずきんの言う通り出口に続く階段にはヴィランが犇めいていた。

「おぉ、隙間から見える扉にはメガヴィランが詰まってます」

 四人はコネクトをする。黒ずきんとカオスシンデレラと共闘をしてメガヴィランまでもを一気に蹴散らした。


 エクスを助け出した面々はカオスシンデレラの持つ別の屋敷の一室にいた。

「赤ずきんさんはお借りした寝室に寝かせておきました。安静にしていれば大丈夫でしょう」

 部屋に入ってきたシェインは主に黒ずきんに向かって告げる。

「大変でしたね。まさかあれがそこまで短絡的に動くとか想定外です」

「はっ! お前の所のお姫様だって無事か分かんねぇぜ」

 カオスシンデレラの発言に黒ずきんが反応する。

「大丈夫、お姉様は魔法使いを呼び出して預けましたから。今晩の舞踏会で無事ゴールインです」

 そう言いながらお茶をいれ黒い手がエクス以外の面々の前にお茶とお茶菓子を置いていく。

「エクス、はいあーん」

 そしてエクスには焼きたてのタルトを自分の手でエクスの口に運ぶ。

「ちょっと!」

「じ、自分で食べれるから」

 怒るレイナ、慌てるエクス、シレッとしたカオスシンデレラの姿を残った三人は無言でお茶を口にする。


「で、これからどうするかだ」

 レイナ、エクス、カオスシンデレラと並んで座り、その向かいにシェイン、タオ、黒ずきんが並んで座る。

「カオスアラジンをぶっ殺す」

「エクスと結婚する」

 黒ずきんとカオスシンデレラの発言はほぼ同時だった。

「ちょっと!」

「その「ちょっと」は殺すと調律できないって事にですか? 新入…エクスさんの結婚発言に対する発言ですか?」

「どっちにもよ!」

「僕は言ってないよ!?」

 レイナの言葉には黒ずきんとカオスシンデレラのが、エクスの言葉にはレイナとカオスシンデレラが反応していたが、

「あーうん、話進まねぇからこの想区をどうにかするって相談以外は後でな?」

 珍しくまともな発言をしたタオにその場の全員が黙り込んだ。

「どう考えても黒幕のカオスアラジンを倒すのが最善手だろ」

「ですねぇ、倒して調律、問題ないと思います」

 タオとシェインはほぼ二人で今後の事を決めていく。

「でもよ、調律するとあたしらはどうなる?」

 誰も答えられなかった。

「分からないわ。貴方達は本当にイレギュラー。考えていたけど多分穢れたシンボルと同じ。カオステラー・カオスアラジンに穢されたこの想区のヒーロー。カオスアラジンを調律してもそのままカオスヒーローとして残る可能性もあるけど、カオステラーの調律でなかったことになる可能性もある」

 レイナが沈黙を破り、考えていたことを告げる。

「まぁ、仕方ねぇな」

「仕方ありませんね。そんな気はしてましたし」

 二人は目を閉じて溜息をつく。

「お二人とも桃食べますか?」

 シェインは懐から桃を取り出すと二人に進めようとする。

「ちょっとまて、シェインその桃どうした?」

「カオス桃太郎に貰いました最後の一個です」

 手を伸ばそうとした黒ずきんの手が止まる。

「あの肥満児に貰ったって事はアイツのシンボルじゃねぇーか」

 そう言うと黒ずきんは籠を取り出す。

「カオスアラジンの所に行くためには私達三人のシンボルが必要なのですよ」

 カオスシンデレラはそう説明し明るく告げる。

「さぁ、お屋敷に戻りましょうか」

「いや、どう考えてもヴィランだらけだろうよ。戻るとか…」

「タオ兄、察しが悪すぎです」

 全員の視線がタオからカオスシンデレラに向けられる。

「私のシンボルはガラスの靴、履き続けたら履きつぶしますからお屋敷に大切に仕舞ってあるのよ」

 カオスシンデレラを除く全員の溜息が重なった。


 屋敷には当然というかヴィランが大挙していた。

 メガヴィランを先頭に正門、庭先、屋敷の中からウォークインクローゼットの中までヴィランだらけだったがそれらを六人協力し難なく撃退していった。

「籠に桃とガラスの靴を入れて、準備完了です」

 カオスシンデレラはカオスアラジンに会うための鍵をエクスに手渡す。

「行くぜ、カオスアラジンをぶっ倒す!」

「決着をつけましょう」

 と黒ずきんとカオスシンデレラ。

「最初、この想区が敵とか言ってた奴と共闘とかお人好しだねオレたちも」

「とりあえず従わないといけなかったんだから仕方ないじゃない」

「離れ離れにもなりましたが大した被害もなく交流できましたから万事オッケーです」

 タオ、レイナ、シェインが続く。

「いろいろあったけど終わらせよう。カオステラーの暴走を」

「そして結婚式を」

「おふざけは禁止!」

 エクスの言葉にカオスシンデレラが言葉を続け、それをレイナが戒める。

「森のあたしの小屋、その裏がカオスアラジンの宮殿に繋がる入り口がある」

 黒ずきんが歩き出す。その後に五人が続き赤ずきんの小屋を目指し歩を進め始めた。

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