魔術

昼からは魔術の学習だった。


初歩的な魔術で、火の魔術を学習することになっていた。


全員外に出て習った詠唱を唱えている。


へえ、凄いなあ。


等と思いながら、掌の上に火の玉を作る。


「ヴェルファリア君だったね、君、魔術も出来るようだね」


また魔族の先生だった。


「分かるのですか?」


「まあ、大体は。君、この教室では教えられることはないかもしれない」


と、そんなことを言われてしまった。


「え、いやそんなことは」


「今度紹介したい方がいます。おそらくそちらの方が貴方のためになるでしょう」


そんなことを言われて、はあ、と答えるしかなかった。


───と


とんとん、と肩を叩かれる。小動物のメルコだった。


「どうした?」


「全然魔術って扱えなくて。ヴェル君どうやってるの?」


「んー。詠唱はしてみたかい?火を想像するんだ」


「してるのだけれど」


そう言って教えられた詠唱を必死に唱えているようだった。


そして苦戦しているのは周りも同じだった。


まあ、最初はこんなものかもなあ、と苦笑していると、


強大な魔力がこちらに近づいてきていた。


「今度はどうした?」


リリスだった。


「いえ、わたくしも火の魔術等使ったことがなくて」


「嘘くさいな」


「いいからわたくしにも教えてください!」


そんなことを言うから仕方なく教えることにした。


「火を想像して・・・出来るじゃないか」


あっという間に火の玉を作り出すリリス。


まあ、そりゃあそうですよね。難易度としては闇の魔術の方が遥かに高いわけで。


「ぐすん」


そして出来ずに泣き出すメルコ。ああ、どうしたものかな。


「まあ、気にすることないよ。周りの皆も出来てない事だし。ほらあのタイタン君だって」


おそらく脳筋なのだろう。魔術の方はからっきし、と言った感じで苦戦しているようだった。


逆に人間のほうが器用に魔術を使っているようだった。不安定ではあれど、火の玉を形成出来ている人間もいた。


───と


一瞬メルコの左手から魔力を感じた、と思ったのと同時、


ぼうっと火が一瞬だけメルコの左手から出た。


「おお、出来たじゃないか。それを地道に積み重ねればきっと玉も出来るさ」


「そ、そうかな。ヴェル君が言うならきっとそうだね」


「うんうん」


そして小動物の頭をくりくりと撫で回した。


「あの、ちょっと」


リリスの冷たい声が聞こえてくる。


「どうした?」


「わたくしにも優しくしてください」


「じゃあ、握手で」


「何か納得がいきませんが、分かりました」


そうして先程と同じ通りリリスと握手をした。


それを先生が見ていたのか、


「ちょっと、そこ。何をしているのですか」


と言われ、


「あ、握手、でしょうか?」


「そういうことではありません、魔術をしっかりしなさい」


と怒られてしまった。


「す、すいません」


そう言って火の魔術を展開する。


「ちょっと、ヴェルファリア君、詠唱は?」


と先生に言われ慌てて、


「ええと、ちちんぷいぷい!」


詠唱なんて完全に忘れてしまっていた。とりあえずその場を取り繕う。


しかし、ちちんぷいぷいってなんだろうな。


自分で思わず苦笑してしまっていた。


「ふむ、まあ、いいでしょう。ヴェルファリア君、それとリリス君だったね。君たちは後で私の所に来るように」


そう言われ、はて、と思いリリスの方を見ると、リリスもまたこちらを訝しそうに見ているのであった。




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