土の魔術 基礎編
次の日、朝早く目が覚めたヴェルファリアは横で眠っている母を起こさぬよう静かに部屋を出た。
そうして全身に魔術耐性を張る。
「───いける」
そう言って昨日考えたことを試す。魔力を練り上げる時間を短くし、更に魔術発生を早くさせる。
今最も得意とする魔術は風。風の魔術を一瞬で足に展開し加速し、正面の木に向かって突進する。そして更に展開し、木を蹴り上げ自分を宙に浮かせ着地する。
「よし、大丈夫。いける」
そこで家の方から
「もう、大丈夫なのかしら」
母さんの声がした。
「あ、はい。おはようございます。もう大丈夫です」
「そう、ご飯作るわね。父さんが今薪を集めているから手伝ってきなさい」
そう言われ、父がいるであろう方に風の魔術を使って急いだ。
一瞬にして父のそばに到着するなり、こちらを向くことなく、父は薪を集めながら、
「おはよう、大丈夫そうだな。しかし何があった。魔術の使い方が急に変わったようだが」
「はい、一瞬で魔術を展開することにしたのです。そうすれば無駄な魔力を使わず済む」
そう言った所で、父の手が止まった。
「───出来た、のか」
少し間があって、そう尋ねられ、
「はい、出来ました」
そう答えていた。
「そうか、運命か」
そう言ってゆっくり薪を持って立ち上がった。
「お前もそこの薪を持ってきなさい。今日は土の魔術について教える」
言われるまま薪を拾い集め、家に帰宅。
朝ごはんを食べたら、外に来るように父に言われた。
「今日は土の魔術を教える。攻撃として扱うことも出来るし防御としても扱えるが、今日は畑仕事が捗る魔術を教えよう」
そう言うなり、地面に手を当て魔力を込めているようだった。すると地面がもこもこと膨らみ、土地を耕した状態になった。
「後はこれに種を撒けば畑の出来上がりだ。さあ、この土を触ってみなさい」
そう言われ膨らんだ土地を触ってみると暖かくさらさらの土地となっていた。
「大切なのは地中にいる虫を殺さぬよう魔術を展開することだ。魔力を込め過ぎれば土はひび割れ地割れが発生する。これは魔力を調整する鍛錬にもなっている」
「はい、わかりました」
そう言い、見よう見真似で土に手を当て魔力を込める。そっと地面に手を入れるような感覚を想像し、一気に魔力を展開した。するともこもこと土が盛り上がり、畑ができそうな土地が出来上がった。
「どうでしょうか!」
一発で出来るとは我ながら上手く行ったと思った。
「うむ、上手くいっているようだな。痩せこけた土地があればこれで蘇らせることも出来る。上手に土と付き合っていくことだ。後は書物に書いてあるだろうが、土と石の人形を作ったり、と色々応用出来る。一応見ておくか?」
そう言われ無言で頷く。
「なら、この石がいいな」
大きな石に掌を当てるなり魔力を込める父。
───と
石が突然人型になり、畑の方に歩いていった。そうして畑を耕しだした。
「まあ、こんな芸当も出来るわけだ。別に手を抜いてるわけじゃないからな。操作している間は魔力を消費する。自分で運動して畑を耕すもよし、こうして召喚物にやらせるもよし。魔力と肉体の疲労との相談をして決めるがいい。後これは目立つから、人前では使わぬこと、いいな」
「分かりました」
「魔術師は最後まで何の魔術が扱えるかばれてはならぬ。自らこれが使えますよと宣言するのは阿呆がやることだと俺は思う」
「そうですね、これだと土の魔術師と言っているようなものですもんね」
「そういうことだ、出来る限り自分の力でなし得なさい。それで駄目なら最後は魔術。何度も言うが人前で決して披露せぬように」
「分かりました!」
「では、今日はここまで。病み上がりなのだから無理をするな。今日は魔術耐性を張りながら光と闇の魔術書を読んでおきなさい」
「はい」
そう言われ書斎に向かうのであった。
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