第二夜 折り返せない電車

おや?ここは?ん、缶コーヒーだ。てことは俺は駅まで戻ったのか?

おっ電車の出発時間だ。Σと、いかんいかんこれはあの世行きの電車だった。危ない危ない。また危うく乗ってしまうところだった。

ん?あそこに座ってるのはさっきのあの爺さんじゃないか。

おい爺さん、お陰で助かったぜ。


私は軽く会釈した。

車内の老爺が不思議そうにちらと見た。


お、気がついた様だな。爺さん達者でな。だがこれから死ぬ人間に達者でってのもおかしなもんだな。まあいいか。

あ~あ、何だかいつも通り会社に行くのが馬鹿らしくなってきた。今日はサボるとするか。

よし!そうと決まったら会社に電話だ。携帯、携帯。おや?ポケットに何か……あ、これは…リセットボタンだ!そうか、時間は戻れても、こいつは消えやしないんだな。でも俺はもう使えないし。うむ、どうせサボるなら、本日は次に必要としている人物を探すとしよう。それが爺さんの供養にもなるだろう。…なあ爺さん。



私はこうしていつもとは違う朝を繰り返したのだった。




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