微睡
ワンフロア下のショップの店長は、潰れたクラブのオーナーの友だちだった。店長のナナはオーナーの家を知っていた。苺は、ナナのショップで働いているユイと同居していたことがある。ユイに誘われて販売員になった。横浜に戻りいくつものクラブを
観覧車。みなとみらい。ランドマークタワー。
知らない。あたしはこんなに美しい夜景を他に知らない。BMWカブリオを降りて、ベイブリッジの車道にずっと立ち続けていたい。
そのマンションもオートロックだった。部屋番号、呼出ボタン。誰かいる。九階に上がるエレベーターの扉が開くときれいな顔をした猫が立っていた。久しぶりに猫の顔を見た。
「手紙ありがとう」
「どういたしまして。気に入ってくれた?」
「まあまあかな。——警察に行ったよ。家には帰らないの?」
暫く黙り込んでいた猫が口を開いた。ナナとユイはオーナーの部屋に消えた。
「帰れないよ」
「……」
「俺たちには両親も帰る家もない」
今度は苺が黙り込む番だった。両親もいないって——? 猫の小説の話——?
「寝返ったのは本当だよ。オーナーは永遠が好きだった。苺が殺した永遠のこと」
マイノリティたちの部屋に進んだ。部屋の中は三人が
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