弁明

 組織、という言い方が正しいのか分かりません。ただそう言ってみたかっただけです。私にも所属したいという欲求がありますので。あなたたちは人を殺すな、と言いますか。殺されたくないからですか。では牛を殺すなと言いますか。食べられたくないからですか。はあ、何だこれは。昨日。苺が家に戻ると、自分宛の郵便が届いていた。封筒に折り畳まれて入っていたA4サイズのコピー用紙に、そのような文章がプリントされていた。二回目。前と同じデザインの封筒だ。最初に届いた封筒の差出人の名前は『真実』。まるで私たちが人殺しだということを知っているかのような内容だった。ん? 昨日届いたコピー用紙の文章はまだ全部読んでいない。疲れた。読んだら教えるね。


 私は使われているだけなのです。殺したい人などいません。殺せない人もいません。何人殺したか、分かりません。五人もいないのは確かですし、三人より多いのも確かです。ほとんど覚えているのに、曖昧なのは何故でしょう。エクスキューズを毛嫌いしますが、いつでもしているのです。ああ病みますね。この世は闇ですね。なんちゃって。


 猫が小説を書いていた。読んだことはないけれど。これは猫が書いた小説なのかもしれない、と苺は考えた。あ。あたしは二重人格で自分宛に文章を書いているのかも、という妄想もしてみた。次の差出人の名前は『妄想』だな。本当だったら、怖がったり仕事を休んだりするのかな。怪文書が送りつけられて、書いているのはストーカーかもしれないと考えたり、ショップでいきなりそいつに刺されたりするかもしれないと怯えるのかな。猫がいなくなって、クラブが潰れたことも心配するのかな。苺の飼い猫が寄ってくる。ナイたんのことじゃないよ。苺は飼い猫に語りかける。ナイたんがいなくなったら心配で心配で心配だよ。



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