第2話 ザバブルク城

城へ向かう間幾度となく襲いかかるヴィランを兵士とともに一掃しながら道なき道を進み続けると小高い丘にさしかかり兵士はその円錐形の小山の頂きに目線をやり告げた


「あれがザバブルク城だ」

「はぁ…はぁ、ようやく…森を抜けた…のね」


なんとか息を整えようと努めながら平静を装うレイナ

その様子を心配そうに見ていたエクスが声をかける


「もう一踏ん張りだね …レイナ、大丈夫?」

「これくらい…はぁ、なんてことないわ…」


どう見ても大丈夫そうではないレイナを休ませようとエクスは今度は兵士隊長に声をかけた


「あの、森も抜けたしこの辺りで少し休みませんか?」


辛そうなレイナを見て勝ち気な兵士隊長もさすがに申し訳なさそうに言った


「そうしてやりたいがあと少し、城まで耐えてくれないか? うちの兵士たちもこの連戦で疲弊しているし負傷者を少しでも早く手当てしてやりたいのだ それにやつらが現れないとも限らん」

「エクスありがとう、私は大丈夫よ さぁ、大城へ行きましょう」


なんとかレイナは自身を鼓舞しながら遅れはとるまいと気丈に振舞い いざ行こうというとき またしてもヴィランはやってきた


「クルッ…クルルゥ」

「やはり森の外でもこいつらは出てくるのだな…」

「ったくヴィラン共も懲りねぇな… お嬢、やれるか?」

「当たり前でしょ!」


開けた場所の少なかった森の中では思う様に立ち回れず苦戦を強いられたが 開けたと地に出た一行はヴィラン相手に存分に力を発揮した また、兵士たちも負けてはいられないと武器を振るった

そうして切磋琢磨しているうちに 兵士たちがレイナたち一行に抱いていた不信感はいつの間にか親しみと信頼へと変わっていた


「やれやれ、こう頻繁に襲われては身が持たないぞ」

「まったくだな…」


ヴィランを倒し一行に対する警戒心も解け始めた兵士たちは次第に彼らに興味を示しだした


「そういえばお前たちは旅をしていると言ったか? やはりこんな人里離れた森に囲まれる城は変わっているのか? 行商人の話だと隣国はもっと栄えていると聞くが」

「この想区がどうかは知らねぇけど 他所へ行けばもっと過酷な環境に暮らす国があったり、すんげぇ文明が発達している国もあったりまぁいろいろだな」

「どんな冒険をしてきたのかゆっくり聞きたいところだな」

「歩きながらじゃなんだもんな」

「…いやぁ実は今、城も少しごたついててな…」


一行に興味津々の兵士の顔が少し曇りだし、それを見逃さなかったシェインは森で出会った黒衣の女性の話を思い出しながらも素知らぬ顔で尋ねてみた


「そういえば兵士さんたち誰か探しているようでしたが?」

「はぁ、また大臣に怒られるな…我々の国では今王女の誕生祝を催しているのだが、ある人物が現れないせいで城中が大混乱 来る日も来る日もその女を探し回っているのだが なかなか捕まえられなくて…」

「その人物とは…?」

「《八番目の仙女》と呼ばれる女だよ。 王女の誕生祝いの席に招待されなかった腹いせに呪いをかけにやってくるはずなのだが なぜか本人がそれを拒んでいるもんで、城は毎日誕生祝いさ」

「毎日…ですか?」

「そう、王女がお生まれになってから一日も欠かさず祝い続けて、もうすぐ王女も十六を迎えようとしているよ」

「マジかよ …でもよ、どんな呪いか知らねーけど呪われなくて済むならそれでもいいんじゃねーのか?」

「ハハッ、馬鹿を言うなよ 運命の書を無視するなんてそれこそ恐ろしいよ」

「その八番目の仙女はなぜお城に行きたがらないのかしら?」

「それが解れば苦労はしないさ」


シェインの問いかけに答えた兵士の話から、初めに森で出会った女性がおそらく八番目の仙女であり、運命の書に抗いヴィランを発生させているのだろうと推測した四人はひっそりと話し合った


「姉御…おそらくさっき会った方のことですよね?」

「その可能性は高いわ、けど…」

「…どうしたの?」

「まだはっきりとカオステラーの気配を感じないのよ」

「?ヴィランは現れているのにカオステラーがいないってこと?」

「…よくわからないの、なんだかぼんやりとしていて…いまはとにかく情報を集めましょう」


どこか釈然としないなか歩いているといつの間にか城が目の前にそびえたっていた


「お前たち悪者ではなさそうだが決まりなのでまず謁見の間にて大臣に事情をはなしてもらい そこでお前たちの処遇がきまる。 一応私からも口添えはしておくがあまり失礼のないように頼むぞ! さぁ、ここがザバブルク城だ」





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