第2話 女王の目的


 朝。

 エクス達はゲルダの家に一泊させてもらってから、朝食をご馳走になっていた。


「何だか色々、すみません」


 テーブルに着きつつ、エクスは恐縮そうな態度だ。

 ゲルダと彼女の母が作った料理は中々見事なもので、肉料理にサラダ、スープなどが所狭しと並んでいる。

 人数の多さもあってどこかパーティのような様相でもあった。


 ゲルダの母は、その様子を楽しむように言う。


「いいのよ。大事なお客様だし。それに賑やかで楽しいわ」

「そうだよ。好きなだけ、家にいてね。シェインちゃん」

「ありがとうございます」


 と、それには律儀に礼を言うシェインだった。

 レイナは、どこか申し訳なさげでもあるが……。


「ずずず……。何だか悪いわ。……ずず。こうなったら、早くヴィランの原因を探し出すしかないわね。ずずず」

「……そうだな。お嬢のせいでこの家の食料が底をついたら困るしな」


 タオが呆れたように眺める。

 視線の先では、レイナが一切の間断を作らず、料理を胃に流し込んでいた。


「人聞き悪いわね。そんなに食べてないわよ! ず、ずずずっ!」

「姉御、スープ十杯目ですが……」

「あはは……でも、大事な花畑を守ってもらったんだし。スープくらいは、いくらでも飲んでね」

「花畑、ね」


 ゲルダの言葉に、レイナは一瞬だけ手をとめて、何かを考えるそぶりをする。

 それは少し真剣なものに見えて……タオは目を細めた。


「どうしたお嬢。何か、わかった事でも」

「……いえ。そういえば、バラって、食べる事が出来るって聞いたことがあるのよね」

「……」


 一同は一瞬沈黙した。

 エクスが、おそるおそる声を出す。


「レイナ、まさか……ゲルダの大事な花畑を」

「え? ……いやいや! 私が食べたいと思ってるとか、そういうわけじゃないわよ!? 小耳に挟んだことがあるってだけで」


 皆の疑うような視線に、首をブンブンと振るレイナ。

 タオは半眼でそれを見つめる。


「本当か? お嬢が言うと洒落になんねーんだが」

「私を何だと思ってるのよ!」

「全てを喰らう者」

「そんな異名あるか!」

「……姉御。食べる食べないの話はこのへんにしておきましょう。ゲルダちゃん達が微妙に引いてます」


 すると、ゲルダとその母は、笑みを浮かべて、首を振った。


「い、いや。私達、別に引いてなんかないよ。ね、お母さん」

「え、ええ……」


 その後、場におとずれたのは、また微妙な沈黙であったという。


「……姉御、一端外に出ましょうか。ほら、あれですよ。調査があるし」

「……え、ええ。そうね。あれだものね。調査しないとあれだからね」


 そうしてレイナ達は、調査にかこつけて一時、外に出ることになった。





 とはいえ、実際、想区の調査は必要なことではあった。


「家にいても今のところヒントはないし、調べるなら外、か」


 ゲルダの家の前に立ちながら、タオはひとまず、辺りを眺める。

 エクス達もとりあえず、周囲を見回す。


 だが、そこに広がるのは、どこまでも平和な町並み。

 今まさに歪みが起きている世界だとは、思われないほどだった。


「とりあえず、町中を回ってみないと、ダメかな」


 エクスはそんなふうに言って、歩き出そうとした。

 と、そのときだ。


 シェインが、エクスを止めた。

 そして、皆を視線だけで見回す。


「待ってください。皆さん……気付きませんか?」

「何が……って、あっ」


 一瞬、きょとんとした表情を浮かべたレイナだったが、直後に、何かに気付く。

 それは、少し離れた家と家の間の、物陰であった。

 そこに、何かの人影が、ちらついている。


「……この家の方を、見てる?」


 エクスも、そちらに注目しすぎないように、様子を窺いながら呟いた。

 その言葉通り、その人影は……確かに、ゲルダとカイの家……つまりこちらを、隠れて観察しているようであった。


 タオは、頭をかく。


「あんなところでじっとしてるなんて、怪しさ満点だな。気付かれないとでも思ってるのか?」

「まあ、怪しい人が現れたのは、ある意味では好都合です。早速事情を聞いてみましょうか」


 シェインは言って、ゆっくりと歩を進めだす。

 そして、間をおかずに……一気に距離を詰めるように、物陰まで疾駆した。


 三人もそれに続く。

 エクス達は二手に分かれ挟み撃ちしようとしたが……しかしその前に、人影が気付いて、逃げるように走り出した。


「!?」


 シェイン達が驚いたのは――逃げ出したその事実、ではない。

 動いた人影の姿が一瞬、はっきりと見えた。

 その姿に、既視感があったからだ。


 シェインは、一瞬目を見開いて……それから足を止めずに言った。


「今の、見ましたか。マントを被っていましたが、あの特徴的な髪に、肌――」

「ああ、あれは――雪の女王……!」


 タオが、引き継ぐように言う。

 それは、確かに一度、カオステラーとなりこの想区を混沌に陥れかけた存在であった。

 人影――雪の女王は、全速力で逃げていく。


「まさか、今回のことも、女王が……」

「とにかく、追うわよ!」


 エクスとレイナも、全力でそれについていく。


 氷の城にいるはずの女王が、何故、街にいるのか。

 そして、何故カイとゲルダの住む家に近づいていたのか。


 かつて、雪の女王は、あの二人に辛酸をなめさせられていた。

 だとすれば、どんな感情を二人に抱いているかは、想像に容易い。


「させるかよ……!」


 タオはいっそう速度を上げ、女王の走る方向を限定させるように、追い込んでいった。

 そして四人は……とうとう、そのマントを被った人影を、街の片隅に追い詰めた。





「はぁ、はぁ……」


 雪の女王は、街の外壁で行き止まっていた。

 壁に阻まれ、まっすぐへは進めない。

 慌てて、逆方向へ取って返そうとするが……。


「おっと、残念だがもう終わりだぜ」


 その目の前に、言いながらタオが立ち塞がった。

 女王は慌てて、横を見る。

 そこにも、レイナ達がいた。


「逃げられないわよ。観念しなさい」


 逆方向にもエクス、シェインがいる。

 女王は動きようがなかった。


「く……何で、こんなところまで……」


 女王は、歯がみをする。

 そうして息を荒げていると、レイナが無理矢理、マントを取り払った。


「あっ……」

「こんなもの被っても無駄よ。雪の女王!」

「くっ……!」


 厳しい視線を向けるレイナに、女王は一歩引く。

 背中が壁に当たると、シェインがさらに距離を詰めた。

 警戒はしながらも、同時にかすかな怒りを篭めて。


「ゲルダちゃんや、カイさんの家を監視して、何をしていたんですか」

「……それは……」

「またカイさんをさらおうとしているのですか。それとも、二人に復讐でもするつもりですか」


 すると、女王は目を見開いて、顔を上げた。


「ち、違う! 妾はそんなことは……! というか、何故そのことを知って……」

「どうやら、ヴィランの原因はこいつで間違いなさそうだな」


 女王の言葉に、タオは早々に結論づけた。

 そもそも、本来は城にいる女王がこんな場所にいる時点で、普通ではない。

 だとすれば、これが想区の異常の発端である可能性は、高い。


 レイナは息をつき、女王を見る。


「詳しく話を聞かせてもらいたいわね。――って……!?」


 途中で、レイナはふと周囲を見回す。

 そこに、何かの気配を感じ取ったからだ。


 エクスもタオもシェインも、そのときばかりは女王から視線を外した。

 黒いもやが生まれ、その中から、街に降り立ったのは……歪みの異形、ヴィランだ。


 エクスは空白の書を構えている。


「ヴィランがこんなに……」

「ま、結論は出たってことだな。とにかく、まずは片付けちまうか」


 そうして、四人は英雄にコネクトを開始。

 ヴィランが街に散らばる前に、掃討を始めた。





「……どういうことですか」


 戦闘後。

 ヴィランは一体残らず退治し、その上大きな苦戦もなかった。

 時間は短く済み、戦闘の成果としては上々と言える。


 だが、レイナ達は、納得のいかない面持ちをしていた。

 シェインは、その原因に語りかける。


 戦闘の間、一切の敵対行動を取らなかった、雪の女王である。


「女王さん。何故、こちらを攻撃してこないのです?」

「そうだぞ。今更ごまかそうったってそうはいかねーぜ」


 と、タオも女王を睨んでみせる。


 実際、タオやシェインは、女王がヴィランと一緒に襲ってくるものだとばかり思っていたのだ。

 だが、そんなことは起こらなかった。


 レイナは、腕を組む。


「……そういえば、忘れていたけど。ここにカオステラーがいない以上、女王は少なくともカオステラーじゃないのよね」

「だとしても、カオステラーになりかけだとか、そういう例もあるでしょう」


 シェインは食いさがるが……エクスも、そこで考えるような仕草をした。


「でも、雪の女王、最初に見た時から、攻撃とかは全くしてこなかったよね」

「……」


 すると、それにシェインも初めて疑問を浮かべたような顔をした。

 タオは考えるのが面倒なのか、女王に詰め寄った。


「オレはこいつが悪いと思う。おい、カイやゲルダに何か悪いことでもしようとしたんだろ?」

「……だから……」

「?」


 四人は怪訝な顔になる。

 見ると、雪の女王は……さっきからぷるぷると震えていた。

 そして、がばっと両腕を広げて、大声を出した。


「だから! 違うと言っておろーがー!! 妾はそんなこと考えてなーーーい!! 何故話を聞かぬのだ! 妾はカイをさらおうなんて思ってないし、敵意もない! 何なのだ! このバカーーーーー!!」


 と、腕をぶんぶん振り回す女王だった。


「……!?」


 レイナ、いや、四人全員が、一歩引いて、素っ頓狂な顔になった。

 レイナはおそるおそる口を開く。


「えっと……女王?」

「何か……キャラが……」

「雪の女王って、こんなだったか……?」

「シェインには、何とも」


 四人はそれぞれ、反応しかねる。

 だが、女王はふーふーを息を荒げて駄々をこねていた。

 とにかく、シェインは一度、咳払い。


「……えー。とにかく、説明して頂きたいですね。女王さん、敵意はないのですね?」

「最初からそう言っているだろうが!!」

「……ああ、ええ。では……何故、ゲルダちゃんたちの家を監視していたのです」

「だから、監視ではない。あれは違うのだ」

「? 監視ではないなら、何なのです」


 シェインが聞き返す。

 と、力強かった女王の言葉が、急にトーンダウンした。


「……そ、それはその。妾はただ……」

「ただ、何ですか」


 ……すると、女王は、何か恥ずかしいことでも言うかのようにもじもじした。


「ただ、機会を、窺っていただけだ」

「機会? 何の機会ですか?」

「それはその……」


 女王は顔を伏せる。

 口をもごもごさせて、はっきりと聞き取れない。


「はっきり言ってください。何ですか」

「だから! ……だ」

「え?」

「……ばれんたいん」

「は?」

「ば、バレンタインのチョコを、カイに渡そうと思って、家を下見していただけだッ!」

「……」


 一同は、また黙った。

 それから、何と無しに、四人で見合う。


「なあ、バレンタインって何だ?」

「私に聞かれても……知らないわよ」

「チョコを渡すって言ってたけど。どういうこと?」

「もしや、何かの隠語ですか。チョコを渡す=『死の恐怖を与える』的な……」

「違うわ!」


 鋭い突っ込みを入れる女王。

 それから、またもにょもにょと話しはじめる。


「だから、その、バレンタインというのはだな……」

「話すならはっきりお願いします」

「うぅぅ……」


 女王はそれから、また恥ずかしげに話を始めた。





「はあ。つまり、バレンタインというのは女性が好きな人にチョコを渡すというイベントで……。あなたは、その日にカイさんにチョコを渡すため、下見していた、と」


 シェインは呆れたような、疲弊したような表情で言った。

 これがつまり女王の行動の全て、だという。


 女王は顔を赤らめて、声をあげた。


「な、何か問題でもあるか! カイを一目見ようと街に下りた時に、そういう風習があると聞いて……。ちょうど、バレンタインの日も近いと言うから……。その、どうしても……カイに、以前のことを謝る意味も込めてだな……、ずっと会いたかったし……」


 女王はごにょごにょと言い訳のような言葉を並べ立てた。

 要約すると、カイが恋しい、ということらしいが……。

 エクスは、しばし考えた後、率直に言った。


「何か、雪の女王っぽくないね」

「そうね。あなた、いつからそんな乙女になったの?」

「別にいいだろうが!」


 レイナが心底から言ったのに、女王は憤慨したように腕を振り回していた。

 タオはため息をつく。


「まあ、元々カイをさらった経験があるから、わからないではないが。……だが、だからこそ、贈り物をしたいなんて言って、カイが受け取ると思うか?」

「それは……」


 その言葉に、女王はまた、声を沈める。

 少し落ち込んだように言った。


「だから、不安で様子を窺ってもいたのだ……妾が会いにいっていいものか、と」

「……それは、きっとカイ次第、だとは思うけどね。……でも、こうして見ると、雪の女王はヴィランの原因じゃないのかしら?」


 レイナは困った様に首をかしげていた。

 これで解決したと思い込んでいたからだろう。

 良かったのか悪かったのか、判断しかねているようでもあった。


「まあ、この雪の女王は、無害か有害かでいったら、今んところ無害だしな」

「じゃあ、ヴィランの原因は他にあるってこと?」


 タオとエクスも、考えるようにしている。

 と、ふとその横でシェインが、ハッと顔を上げていた。


「……女王さん。バレンタインというのは、もうすぐという話でしたね」

「そうだが」

「……そうですか。となるとやっぱり」

「シェイン、どうした?」

「皆さんも思い当たりませんか。バレンタインは、女性が好きな人へチョコを贈る。……そういう風習が、街にはある。つまり街の女性ならば……」

「あっ、そういうこと」


 レイナも、その言葉に、勘づいたものがあるようだった。





 シェイン達は、ゲルダの家へと帰ってきていた。


「皆さん、お帰りなさい!」


 ゲルダは、今朝の微妙な空気などはおくびにも出さず、明るく出迎えた。

 そんなゲルダを、シェインは隅の方に手招きして、小声を使った。

 それは、一応確かめておかねばならなかった疑問の答えであった。


「ゲルダちゃん。もしかしてですが。ゲルダちゃんが隠してたことって、バレンタインのことですか」

「!」


 すると、ゲルダはそれに大きく反応して見せた。

 それから、笑みを浮かべた。


「なんだ、ばれちゃってたんだ」

「……すみません。そういう風習があると、聞いたものですから」


 シェインも、余り無粋なことはしたくはなかった。

 だが、想区の平和に関わってくるとなれば、無視するわけにもいかない。


 ゲルダは、特に怒ったりするでもなく言った。


「風習っていう感じでもないけど。私もつい最近、そういうイベントがあるって聞いただけだから。でもとにかく……そう、カイにチョコを、贈りたいと思って」

「そうだったんだ」


 エクスの言葉にも、ゲルダは頷く。


「当日にカイにあげて、驚かせたいと思って。それで、時間を作ってチョコの練習をしてるの。それでカイと会えない時もあって、カイは怪しんでるんだけど……どうしても、内緒にしておきたくて」

「へえ。これこそ、乙女心ね」


 レイナは、感嘆したように、そんな言葉を呟く。

 ゲルダは少し照れたように頷く。


「うん、カイは、私には大事な人だから。……だからね、シェインちゃん達も、当日まで、カイには言わないで欲しいの」


 それは、勿論、と答えたくなるものではあった。

 だが、エクス達は、容易にそれに応えかねる部分もあった。

 というのも……。


「気持ちはわからんでもないが――」

「うん……今さっき、僕ら、そこでカイに会ってきたんだけど……」


 エクス達は、外を徘徊していたというカイの様子を語って聞かせた。

 それは、まさに生ける屍のごとき様相であった。


『ハハ……ゲルダがぼくに隠し事……いくら聞いても教えてくれない……。こんな世界、もうイヤだ……ハハハ……』


 理由もわからず、ゲルダに避けられているかのように感じてしまっているカイは……それはもうひどい有様だった。


 カイにとっては、ゲルダはそれこそ妹のようなもの。

 そんなゲルダが自分に隠し事をしているショックが、時間を経るにつれてどんどん強まっていっているらしかった。


「あれは正直、見てられんレベルだった」

「隠し事ひとつでああなるなんて、僕らからしたらびっくりするけど……」

「……うん。そんなこと、今までなかったから」


 その点については、ゲルダも気にしているかのように言った。

 と、そこでレイナが顎に指を当てた。


「……もしかしたら」

「姉御?」

「カイは、この想区の主役でしょ? そのカイが、余りにも強く落ち込んでいる……それこそ世界がイヤになるくらいに。それって、ヴィランが出る原因になるとは、考えられないかしら」


 皆は、一瞬その考えに驚きを浮かべる。

 ただ、シェインはなるほど、と小さく頷いて見せた。


「ストーリーテラーが、それを見て世界の“修正”に入った、ということですか」

「ええ。本来は、カイはゲルダと一緒に幸せに暮らす、という運命でしょ。それなのに、カイがゲルダに何らかの“不信感”を抱いているんだとしたら」


 そんなことすら認めず。

 ストーリーテラーは、ただただ幸せな二人を、描き直す。

 不信感を抱く二人は、運命に背いているから。


 その可能性に、エクスは眉をひそめる。


「……隠し事ひとつで、そんなことになるかな」

「……ですが、あのカイさんの落ち込みようなら、なくはないかも知れませんよ」


 そうシェインが言えば、納得できてしまうところもあった。

 実際、それくらいに、カイはあり得ないくらいの落ち込み具合だったのだ。


「そう考えると、あまりカイさんに長く隠し事をしていて欲しくはないですが……」


 シェインが結論づけるように言うと、ゲルダは困った顔をしていた。


「あの化け物とかの話? 私には、よくわからないけど……。でも、バレンタインは二日後なの。もうすぐだし、どうしてもカイには内緒にしておきたいの」

「……」

「普段の感謝を伝える機会なんて、そうそうないから」


 ゲルダが言った言葉は、やはり、まっすぐなものだった。

 シェインは、そんなゲルダをしばし、見つめていた。


 それから、小さく、頷く。

 ……本当は、その提案は受けない方がいいかも知れないけれど。


「……わかりました」

「シェイン、大丈夫なの?」


 レイナに、シェインは振り向く。


「カイさんの落ち込みが原因なら、バレンタイン当日になれば、ヴィランは消えるでしょう。今のところ、ヴィランは十分対応できる規模でもあります」

「ゲルダの思いを、優先させたいんだね」


 エクスの言葉に、シェインは頷いた。


「シェインのわがままになりますが。いいですか」

「なぁに。下手にばらすよりかは、結果的に二人がいっそう仲よくなっていいんじゃねーのか。あと二日だろ。ヴィランくらい、出てきたときにぶちのめせばいいさ」

「タオ兄、ありがとうございます」


 そんなふうに言うシェインの眼差しも、確かに、兄を慕う妹のそれであった。

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