第13話 不気味な隣人

「珍しいですね朱里。いつもは引きこもって食事を摂るあなたがわざわざ私にごはんを奢ってくれるなんて」

「いいからさっさと座って」


 と言って、朱里はヴィネに着席を促した。

 朱里とヴィネが来ているのは食堂だ。朝、昼、夕、どの時間帯でもここで食事が摂れる。だが、あまり朱里は利用したことがない。他の狩人と鉢合わせするからだ。


「さて、私は……カレーにでもしましょうかね。朱里は?」

「……おそばよ」


 ヴィネがテーブル備え付けの端末をいじって注文する。彼女は注文終わりました、と笑顔で言い、


「さて、私に何の用ですか? ショットピストルはまだ使っていないようですし、他の武器の状態も問題なさそうですが」

「ログは閲覧した?」

「いえ、見てませんが」

「だったらこれを見て」


 と朱里は狩人に支給される携帯端末を取り出し、全画面モードで動画をみせた。狩人から触手が生える瞬間を見て、ヴィネがうわぁと声を漏らす。


「お食事前に見る映像じゃありませんね」

「気色悪いのは同意だけど、私が気になるのはコイツじゃなく、なぜコイツをあなたの武器で撃てたのか、ということよ」


 他人との接触を避けたがっていた朱里がわざわざ食堂で食事するのは、ヴィネと会話するためだった。先日の狩猟で発生した、触手人間について彼女なら何か知っているのではという期待があった。

 ヴィネは顎に手を当てて考え込み、


「まあ見た目バケモンですし、うちの子たちも誤解したんじゃないんですか? この触手、朱里さんを襲ってますし」

「まるで銃に意思があるような言い方ね」

「え? 当然じゃないですか」


 ヴィネは真顔で言う。冗談とも本気とも取れない言葉に朱里は顔をしかめ、もう一度訊く。


「この症状について何か知らない?」

「触手プレイ自体はかなり昔からあったみたいですが」

「茶化さないで。人が化け物になるなんてことあるの?」


 朱里の問いかけに、ヴィネは全てを見透かしたような視線を向けて、


「むしろあなたに心当たりがあるのでは?」


 などと訊いてくる。

 朱里が思いつく心当たり――シェミハザという堕天使と交戦中に現れた、紫髪の少女。

 彼女は、契約がどうとか言っていた。力が欲しいならあげる、などと。もし、あの触手人間が彼女と契約を交わし、何らかの力を獲得した成れの果てというのなら、合点がいくところもある。

 しかし、やはり謎だ。謎めいている。朱里は苛立ってぼやく。


「わからないことだらけよ。人間がビーストになるっていうの?」

「あなたは世界の本当の姿を知っていますか?」


 ヴィネが試すように訊いてくる。朱里はもちろんと応えそうになって、そうじゃないことに気付く。

 朱里はまだまだ無知なのだ。世界の惨状すら把握していなかった。世界中の人々はみんな無知であり、真相を知っているのはほんの一握り。しかも、既知の連中が知るのは人間社会が脅かされて、対処できる方法が数少ないということだけだ。

 まだ朱里の知らない世界が隠されているかもしれない。人はまだ、世界を知った気でいるだけなのだ。


「人間ってのは基本知ったかぶりですからね。知ったつもりにならないと怖くて怖くてたまらないから、全てを知ってる風に装うんです。何も知らない、わからないというのは怖いですからね。無知イコール恐怖です。だから朱里さんも幽霊が怖いでしょ? どうやって倒せばいいかわからないから」

「……ええ」


 幽霊に恐怖を感じたことは一度もなかったが、とりあえず同意しておく。

 思い返せば、変な子だった。朱里はため息を吐く。怪物の兆候はたくさんあったのだ。死ぬのは怖いが、魔獣を怖いと思ったことは一度もない。恐怖とは死に直結し、敵とは結びつかないもの。それが朱里にとっての恐怖感情だった。

 全然、普通ではない。平凡でもない。変わり者だ。


「ふふ、自分の才能にお悩みですか? ああ、どうしよう。私、ビーストが雑魚敵に見えるの。辛いわ、辛いわぁー。敵が弱いのに私強すぎー。……なんて思ってます?」

「ふざけないで」

「あはは。才能なんてものはあって損はないんです」

「大損よ。進路が狭められるし」


 朱里の前にシェフの恰好をした少女が直々にそばを運んできた。ヴィネのところにはカレー。赤髪のその少女は微笑んで自己紹介を始めた。


「私はウヴァル。以後お見知りおきを。引きこもりのお嬢さん?」

「余計なお世話」

「うちで食事をなされば、不仲な人間との仲を取り持って差し上げましょう。ま、ヴィネ先輩は別ですが」


 ウヴァルはヴィネを見ながら言う。ヴィネはふんと鼻を鳴らし、


「私と朱里はとても仲がいいですからね。互いの秘密を話し合う仲です」

「いやいや、私は何でもお見通しですよ。朱里さんは先輩に不信感を抱いている」


 そんなことは有り得ないよ、とヴィネはカレーを口に含んだ。朱里もそばを啜る。この二人は既知の間柄のようだ。朱里とは全く違う態度で話すヴィネの姿は新鮮だった。


「あ、そうそう朱里さん。先程才能がどうとか言ってらっしゃいましたねー」

「ええ」


 ウヴァルは気さくに話しかけてきた。にっこりとした笑みをみせて、


「才能……怪物は、綺麗であれば綺麗であるほど価値があります。もし穢れたり、汚くなってしまったその時は、思い切って捨てちゃいましょう。それが人生の秘訣ですよ」


 と、いつぞやのヴィネと同じく忠告した。



 ※※※



「やあ、チャーチ」

「……何でしょう」


 自室のパソコンで事務を行っていたチャーチは、急にかかってきた社長からのテレビ電話に応えた。

 わかってるだろう、と社長は全てを見透かしているように言う。


「補充要員の件なら既に発注済みです。明日には到着するかと」

「ああ、助かるよ。ハンターたちに負担を強いちゃ悪いからね。うちは社員のケアも充実する優良企業だから」

「今の言葉、ハンターが何人同意するか気になるところですが」


 社長の笑い声が聞こえてくる。自覚があるのだろう。

 元より、PHCは会社としての体を成していない。それっぽく外見を見繕っているが、通常の会社と比較すると様々な部分の問題が浮き彫りとなる。

 だというのに、PHCを脅かす問題は今のところ発生していない。社長が世界のルールを塗り替えてしまったからだ。PHCの仕組みが如何に不自然でも、世界はPHCに頼るしか手立てはない。優位性の保持。PHCが存続している理由は一重にそれだ。

 誰もやらない、誰にもできないことをやる。それだけで、売り手が何もしなくても、買い手の方が合わせてくれる。


「面白い子、いたよね。綺麗な怪物」

「シルフのことですか」

「そうそう彼女……。綺麗なモノは綺麗なモノといっしょに居た方が美しいよね」

「でしょうね。元々私も彼女とタッグを組ませるつもりでした」


 流石チャーチ君、と社長は上機嫌になる。


「だったらこの電話は無駄だったわけだ」

「はい、そうですね」

「ふふ、君のそういうところが好きだ。何も言わずに求めるものをくれる人なんてそうそういないからね。じゃ、後は任せたよ」


 通信が終わる。チャーチは再び作業へと戻る。

 事務仕事は面倒だ、と考えている。彼の本当の仕事はパソコン相手に情報を入力することではない。

 しかし、必要な事柄なら、やる必要がある。例えどんな仕事でも。


「借りは返さなければならないからな」


 独り言を呟いて、キーボードを叩いていく。腰に差してある銀色のリボルバーがきらりと光った。



 ※※※



 本日の獲物はサイクロプス。言わずと知れた一つ目の巨人だ。

 大勢で挑んだ前回の狩りとは違い、朱里は単独での狩りを実行中である。

 ネフィリムはまだ調整が終わっていない。一体いつになったら彼女が復帰するかは未知数だ。

 そう言えば訊きそびれたな、と思いながら朱里は廃工場の中の通路を音を立てずに移動している。


(ネフィリムと堕天使の関係……ネフィリムが本当に人なのか、について)


 普通に考えればバカバカしい疑問だが、あの触手人間を見てからというもの、何が起こっても不思議ではないと朱里は思っていた。何が正しくて、何が間違っているのか。どれが嘘でどれが本当か。朱里は判断つかなくなっている。

 だから、とりあえず人を疑うことにした。幸いなことに嫌疑を掛けられる者たちは何の嫌悪感も抱いていない。だからこそ、奇妙さが拭えない。疑われることを嫌がるのではなくむしろ疑われることを好んでいる。謎だ、疑問だ。この世の全てがミステリー。


(何てこと考えてんだろ、私)


 朱里の疑問を振り払うように、一つ目の巨人が音を立てる。

 義眼と肉眼、両方が捉えた。サイクロプスは眼下にいて、のっしのっしと打ち捨てられた機材を吹き飛ばしながら歩き回っている。

 何かを探しているようだ。私と同じね、と朱里は自嘲気味に呟く。


「哀れな迷子さん。私が道案内をしてあげる」


 片目を喪った少女が、片目しかない怪物へ向けて飛び降りる。

 不意を衝かれた青い体色の半裸の巨人は、頭に取りついた朱里を叩き落とそうと暴れ出した。朱里はナイフを一つ目に突き刺そうとしたが、硬い掌が邪魔をする。

 チッ、と舌打ちをしながら、ショットピストルを取り出した。ヴィネがタダでくれたこのピストルは、ショートバレルの散弾銃よりももっとコンパクトな仕上がりだ。射程はバカみたいに短いが、近距離での効果は絶大だと彼女は言っていた。

 これほど近ければ、目を瞑っても当たる。反動すら、考慮する必要はない。


「喚くな!」


 朱里は巨人も右掌に向けて引き金を引いた。左片手で撃ったので、銃身が素人めいて跳ねる。しかし、気にせず朱里は二連射。

 だが、掌が真っ赤に染まっただけで、千切れ飛んだりはしない。


「不良品! ぐッ!」


 朱里は身体をサイクロプスに掴まれて、工場の機材置き場の端まで投げ飛ばされた。鉄筋か何かに身体を強打し、うっと息を吐き出す。

 何度か咳き込んだ後、背中に背負うショットガンを両手で構える。と、義眼が何かをサーチした。


「棍棒……?」


 義眼が見つけたのは、巨大な棍棒だ。サイクロプスの探し物はあれだろう。間抜けな巨人は、棍棒をどこに置いたか忘れてしまったのだ。

 だが、朱里が気に掛かったのは、その横に敷き詰められている大量のガスボンベだ。中身が入っているかは謎だが、もし入っていれば役に立つ。朱里はほくそ笑んで五十口径を抜き取り、棍棒へと撃ち放つ。


「探し物はあそこ!」


 朱里が丁寧に場所を教えてあげると、サイクロプスは咆哮を上げて動き出した。

 ずっと探していた大事な物が見つかった喜びは、隣のボンベを忘却させるに事足りる。無邪気に棍棒を手に取った巨人は、朱里の銃撃によって大爆発したボンベの爆炎に巻き込まれた。


「ふふっ」


 獲物を狩る怪物の笑み。朱里は笑い声を漏らしながらショットピストルを片手に持ち、銃身を折って散弾を流し入れた。

 もう打つ手は打った。後は本命をぶち込むだけだ。サイクロプスへと辿りついた朱里はピストルの銃口を巨大な単眼へと突きつけて、楽しそうに引き金を引いた。

 目が弾けて、サイクロプスが断末魔の叫びを上げる。音を立てて、崩れ落ちた。大量の血をドバドバ流しながら。

 サイクロプスの死体を上機嫌に見回して、まだ微かに息をしていることに気付く。朱里は近くに転がっていた棍棒へと近づき、燃え盛る火を義手で払った。


「可哀想だものね」


 鼻歌を鳴らしながら、両手で棍棒を持ち上げる。サイクロプスの頭に向けて振り上げる。

 不思議な謎も、狩りの最中は関係ない。狩りは気持ちいいことだ。頭を真っ白にして、欲望赴くままに敵と戦える。これ以上愉しいことがあるように朱里は思えない。

 サイクロプスの頭が、自分の武器によって叩き潰される。これは慈悲だと朱里は思う。相手が可哀想だから、トドメを刺してあげるのだ。私はなんて優しいんだろう。


「……誰!?」


 朱里はハッとして、周囲を見回した。先程まで浮かんでいた笑みがすっかり消え去っている。

 右眼のスキャンを駆使して、辺りを確認する。だが、何も見つからない。捨てられた機材と、サイクロプスの肉塊だけだ。


「気のせい、か。いや、見ているの……?」


 朱里は呟く。誰かに質問するように。

 しかし、誰も応えない。おかしいな、と耳を左手でとんとん叩く。――確かに、少女の笑い声が聞こえた気がしたのだが。



 ※※※


 

 白い研究室にある緑色の液体が入った筒型水槽の中に、真っ白な少女が浮いている。


「インストール開始――。規定事項一。人間の命令には隷属的に服従すること」

『了解しました』

「事項二、人間を無駄死にさせないこと。事項三、人間の精神状態を安定させること」

『承知しました』


 研究員が命令言語を口頭で入力すると、対象は反論することなく応答した。

 最初からそう設計された少女だ。むしろここで反抗すれば、欠陥品として処分される。

 それを弁えてか否か、白い少女は筒状の水槽の中で受け応えしていく。全裸の少女を見ても、研究員は真顔のままだ。端から異性として意識していない。淡々とプログラミングを続行する。


「――十六。堕落者が出たら即刻処分すること。事項17。怪物の動向には注意すること」


 ピクリ、と眠るように目を瞑る少女の眉が動いた。研究員はそこで初めて表情を見せ、水槽の少女をじっくり観察する。


「不安定な部分がまだあるようだ」

「しかし、問題ないだろう。ただでさえウチは人員不足だ。新種のビーストに派手にやられちまったからな」


 同僚が余計な心配をするな、と目配せする。数日かけての調整を面倒に思っているのだ。

 それは研究員としても同じことだ。ただでさえ人間の心理をコントロールするのは難しい。例え、人紛いの存在であっても。


「社長のお気に入りが何とかしたんじゃないのか?」

「ああ、あの怪物少女ね。そろそろ精神崩壊して気が狂う頃合いじゃないか? いい実験体だ」

「美しいままでいられるか。屈服して堕落するか。……そういや堕落者を処分したらしいな」

「そのようだな。びっくりする。いくら怪物とはいえ、まだ高校生だろ? 躊躇なく人殺しできるなんて、物騒な世の中になったもんだ」


 同僚の笑い話に、研究員もつられて笑う。いいサンプルが採れそうだ、などと科学者的思考を行う。


「頭を開いて、中身を見てみたい気がする」

「サイコパスは恐ろしいよな。前々から人殺しの術をインプットされてる。まさに“スーツを着たヘビ”だ」


 ひとしきり笑った後、二人はインストールを再開した。だが、警告が鳴り響き、ぎょっとした顔となる。

 被験体がぶくぶくと息を漏らし始め、かっと目を見開く。ごんごんと素手でガラスを叩いて、人とは思えない腕力で割ってしまう。


「うわッ!!」

「チクショウ、何が起きた!」


 動揺した研究員が警報ボタンを押そうとして、その腕を噛み付かれた。


「暴走してる!」

「制圧班を呼べ、早く!!」


 少女は光彩を喪った瞳を研究員へと向けながら、腕の肉を歯で削ぎ落していく。ひぃ! と情けない悲鳴を出して、研究員は自分が何をやらかしたのか必死で頭を巡らせた。

 そして、気付く。怪物の頭を開きたいという失言をしたことを。


「大丈夫だ! 高宮朱里に危害は加えない! 止めろ、止せ! 私も人間だぞ!!」


 その言葉を聞いて、口を真っ赤に染めた少女は停止した。口の中に含まれた人肉を無表情で咀嚼して、呑み込む。少しだけうっとりとした笑みをみせて、足音を立てて現われた完全武装の警備員に銃床で気絶させられる。


「くそっ。俺の腕を喰いやがった……! 後でお仕置きだぞ、ネフィリム」


 研究員は骨が露出した腕を見下ろし、憎々しげに呟いた。



 ※※※



 茶髪の少女が、鼻歌を鳴らしながら端末を見ている。

 無骨な機内だが、少女は不安を微塵も感じさせない表情で、端末に表示される情報を閲覧していた。


「ふんふふーん」


 画面をタップして、読み進めていく。緑色にカラーリングしたコンバットスーツは彼女のお気に入りだ。しかし、端末内の画像に写る少女のカラーリングは、味気ない初期カラーの灰色だった。一目見て、趣味が合わないことがわかる。

 だが、画面に写る少女は獲物を狩る時とても楽しそうで、


「趣味は合わなくても、共通項はありそう。なら、トモダチになれるわよね」


 嬉しそうに、笑みを浮かべる。

 自身の得物である弓を取って、弦をいじくって暇を潰す。これをやると整備係に怒られるのだが、少女はあえて怒られるために武器を乱雑に扱っていく。

 コミュニケーションは大事だと、少女は今までの経験から学んでいる。相手がどんな人間なのかを知るためには、率先して相手の生の反応を窺っていく必要がある。


「しかし、ショットガンか。戦闘方法プレイスタイルも異なるのか。共通点は怪物ってことと、女の子ってことだけ。どうやって仲良くなろうかなぁー」


 少女は頭を回す。今までの経験談を元に、彼女とトモダチになるための方法を模索する。

 だが、あまり役に立つかどうかわからなかった。今までできたトモダチは全員死んでいるから、以前の通りにやるのがベストなのか、少女には判断つかない。


「悩むなぁ。悩む。本当に悩む」


 少女はとても愉しそうに、苦悩する。

 フフフッ、とひとりで笑って、これからのことを考える。


「ねえ、あなたはどう思う? 高宮朱里」


 画面の中の朱里に問いかけるが、もちろん返事はない。

 代わりかどうかは定かではないが、通信が入った。少女は端末に触れて、応答開始。


『様子はどうだ?』

「特に問題なし。もうすぐ着くんじゃない?」

『送った資料は閲覧したか?』

「今見てるとこ。可愛い子ね」

『日本支社でのお前の相棒となる少女だ。連携戦術を見直しておけ』

「言われなくとも」


 既知の間柄であるようで、通信相手とは慣れ親しんだ様子だ。

 少女は端末に朱里のプロフィールを表示させ、家族構成を確認。


「独り身なんだ。家族とはバラバラ」

『日本政府が彼女の保護を打ち切ったからな』

「だったら私が埋め合わせをしてあげれば仲良くなれるかな」

『自分で考えればわかることを私に訊くな』


 相手はつれない。少女は苦笑して、窓の外を一瞥する。

 島が見えた。人工島、PHCの日本支社だ。


「もう着くから通信を終えるわね。じゃ、また後で、チャーチ」

『了解した……シルフィード』


 少女……増員狩人であるシルフィードは通信を終えて、画面に写る朱里の右眼をつんつんと突いた。

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