topics39 ちゃらちゃらチャラ男も宇治へゆく

 第46帖 椎本しいがもと(【超訳】源氏物語episode46 ふたりの恋)に寄せて


 源氏物語第三部、というか最終章「宇治十帖」にとうとう突入しました。ステキな青年に成長した薫くんの近況や悩みが第四十五帖では語られましたね。

 さてさてもう一方の主演の匂宮クン。源氏と明石の御方の娘である明石中宮の息子です。つまりは源氏の孫。今上帝と中宮の息子という最高の身分でありながらも三男ということで長男の春宮さまに比べるとある程度お気楽な立場でもあります。

 最上級のセレブで華のある雰囲気に明るい性格。誰もが憧れる人気者。本人にもその自覚は十分あり、人懐こい性格は周囲の皆から慕われます。

 人を寄せ付けない孤高の薫に対して誰にでもフレンドリーでいつでも大勢に囲まれている匂宮というカンジですね。


 薫が俗聖と言われる八の宮のもとに通っていると聞いた匂宮は彼の行動に全く理解ができなかったのですが、実はそのお屋敷に年頃の姫君がふたりもいると聞いて色めき立ちます。んっだよ、俗聖とかもったいつけた理由つけちゃって、薫も女子んとこ通ってたのかよ。しっかし俺としたことがノーマークだったなあ。

 チャラ男は恋のことしか考えていません。


 色恋に全く興味のなかった薫が気にしているオンナノコなんてスッゲー気になる! しかもふたりっ?! マジかよ……。美人姉妹かぁ、そそられるぜ。今までまったく女子に見向きもしなかった薫が好きになるなんて一体どんなコなんだよ! 見た目がカワイイのか、性格がいいのか、どっちにしたって絶対会ってみたい!! 付き合ってみたい!!! すぐにでも宇治に行きたいぜっ!!!!


 恋の瞬間着火剤が装備されている匂宮クンは一気に燃え上がります。ええ、今は亡き誰かさんを思い起こしますね。彼のおじいちゃんね。


 そんなこんなでちゃらちゃらチャラ男の匂宮クンも宇治に行く計画を練りはじめます。ですが、身分の高い皇族の匂宮は薫ほど気軽に宇治に出かけることができないようです。公に出かけるにはきちんとした目的(例えばお寺に参拝するとか)がないといけないでしょうし、まさか気になる女の子を見に行きたいなんて理由は通らないでしょう。そしてこっそり出かけるには宇治は遠すぎます。


 そこでわざわざ奈良の長谷寺参りというイベントを企画して帰りに宇治に立ち寄るという作戦を匂宮は立てます。そう、あくまでもメインはお寺参りじゃなくて宇治ね。それでも皇族の方のお寺参りということでお付きの従者も大勢ですし、宇治の立ち寄り先の夕霧の別荘でも出迎えの貴族たちが大賑わいで、とても薫とふたりでこっそり姫君の山荘を訪ねるなんてことはできないようです。

 結局薫は何人かで山荘に出かけましたが、匂宮クンは行くことができませんでした。身分が重すぎるからですって。高貴な身分のヒトもタイヘンね。

 それでも自分をアピールしたい匂宮クンは桜の枝と恋の歌を姫君たちに届けます。


「オレ、匂宮。よろしくね」

「この桜をキミたちに。ってもキミ達の方が綺麗だろうけどね(^_-)-☆」

「今日は逢いたかったな。これから仲良くしてね」


 ちゃらちゃらっと擬音が聞こえてきそうなラブレター。都でもモテモテで百戦錬磨(?!)の匂宮クンはサラサラサラとこんな手紙と和歌を送ります。あまりに軽いノリでどこまで本気なんだか、からかっているだけなんだか姫君たちはわかりません。

 それでも田舎の宇治でひっそり家族で暮らしていた姫君たちにとって、薫と匂宮という都での人気者ツートップから関心を寄せられるというちょっぴり華やかな展開になっていきそうです。


 匂宮クンからはガンガンラブレターは届くし、薫くんはヒマを見つけてはやってきます。どうやら匂宮クンに返事を書いているのは妹の中の君らしい。僕はお姉さんの大君と付き合いたいな。薫くんは大君に恋をしたようですね。


 そんなうちに姫君たちのお父さんの八の宮が亡くなってしまいます。悲しみが癒えたら匂宮と中の君、薫は大君と結婚したいと男子ふたりは考えるんだけれど、姫君たちはとてもそんな気分にはなれませんよね。

 4人の恋模様は次回第四十七帖へと続きます。


 タイプの違うイケメンツートップと姉妹との恋。なんか現代の学園ものとしても成立しそうな設定ですよね。クールで知性的の薫派と華やかな人気者の匂宮派、どちらがお好きですか? おとなしく控えめだけどしっかりもののお姉さん(大君)と可憐で上手にラブレターをかわせる妹ちゃん(中の君)、どちらがタイプですか?

 光源氏こと源ちゃんが生きているころ(第四十一帖まで)はひたすら源ちゃんが繰り広げる恋愛物語でしたが(若干夕霧くんもあったけど)、宇治十帖は主演がふたりなのでそれぞれの想いが交錯してきます。また違った物語のように楽しめるかもしれませんね。紫式部センセイが考え付く恋愛パターンは無限、ですね。




 ☆【超訳】源氏物語のご案内

 関連するエピソードはこちら。よかったらご覧になってくださいね。


 episode46 ふたりの恋

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054886929440

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