topics31 満ちる月と欠けた心
第三十八帖 横笛(【超訳】episode38 想いが交錯する秋の月夜)に寄せて
罪の子薫を産んでから、あまりの身体的、精神的苦痛から逃れるために女三宮は出家しました。
いろいろあったけれど、これで女三宮も心穏やかになるのなら源氏の奥さんでいるよりはいいかもしれませんよね。源氏の怒りはきっといつまでも収まらないでしょうしね。
なのに、また、でございます。
また源氏くんの「自分から離れようとする人を焦ってひきとめる」病でございます。
六条御息所が別れを決意して娘(秋好中宮)と伊勢に行くことにするときもそうでした。
紫の上が出家したいと願い出たときもそうでした。
今回は柏木とのこともあり、朱雀院も了承したので出家はさせたけれど、尼姿の女三宮が美しいから「出家させなきゃよかったな」と後悔し、和歌で口説こうとする源氏くん。
「俺から離れていかないでよ」病……。
「生まれ変わっても一緒にいようって約束したよね?」
いつした? そんな約束?
「キミへの想いは変わらないよ」
どんな?
このヒトはいったいなんなんだろう?
どんなつもりでこんな愛の歌を詠むんだ?
なんの錯覚をしているんだ?
「そんなこと(生まれ変わっても〜)思ってもいないくせに」
「あなたがわたくしに飽きてるんでしょ」
そうよ、そうよ、女三宮ちゃん、そのとおり! よく言った!!
しかも出家した尼さまになんつー歌を贈ってるんだというハナシです。
月夜に琴なんか掻き鳴らしてしっとりムーディーないい雰囲気まで作っちゃって……。
どういうつもりなんだろ。まさか尼さまの女三宮をどうにかするつもりだったんじゃないでしょうね?
玉鬘のときみたいにまたギリギリラインを楽しみたかったのかしら?
ただこの夜は夕霧たちがやってきて月夜の宴会になったので女三宮は命拾い(⁉)したかもしれません。夕霧くん、蛍兵部卿宮さま、ナイス乱入でございました。
この宴会で源氏は柏木のことを偲びます。
「こんな宴会には柏木がいてくれたらな」
「才能があって華のある若者だったよな」
男同士の宴会なんだけど、女三宮は御簾を隔てたところで見聞きしているんです。だから源氏は今の俺の言葉を彼女はどんな気持ちで聞いたんだろな、なんて思うのです。
さっきは口説いてたくせにね。今度はイヤミ? それとも柏木のことを純粋に偲んで、女三宮にも聞かせたかった?
そんな月夜の宴会を楽しんでいると、冷泉院からお手紙が届きます。
「月ならウチからでも見えるよ」
よかったらウチで飲みませんか? 帝位を譲位した冷泉院からのお誘いのお手紙です。
なにげにスゴイと思ったのはネットもSNSもないのに、源氏くんの家での宴会情報を冷泉院が知っていることです。しかもリアルタイムで。どこから情報? 誰から情報? 平安の情報収集能力恐るべしですよね。
そして源氏たちは冷泉院のお宅にお邪魔して月夜の宴会の二次会(⁉)をします。
秋の澄みきった満月の夜
しんみりと響く虫の声
風情ある景色
心にしみる音楽や和歌
雰囲気たっぷりのお月見の会ですね。
この夜、源氏は柏木を思い出し懐かしみ、哀れに思いました。
そのあと実の子ながら親子として振る舞うことのできない冷泉院と思い出深いひとときを過ごしました。
目の前にいる我が子
目の前にいる父親
源氏と冷泉院、源氏と藤壺の宮との関係と同じように決して言葉では交わせない情愛を想いだけで交わす。
誰よりも愛おしい我が子
敬愛する父親
柏木と薫には永遠にこんな夜はやって来ない。
自分の正室と罪を犯した柏木のことを思い、自分が犯した罪の子冷泉院に想いを馳せる。
しみじみ物思いにふける夜ですね。
柏木のことを思う
冷泉院のことを想う
十五夜の月の光は源氏の心の闇をほんのり照らしました。
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episode38 想いが交錯する秋の月夜 鈴虫 https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054885617926
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