topics26 艶やか女子会

 第35帖 若菜下(【超訳】源氏物語episode35-2 春の演奏会とある願い)に寄せて


 六条院での女性コンサート、「女楽おんながく

 源氏の奥さんなど六条院の女性たちを集めて琴などの演奏会を開催しました。


 第二十三帖【初音】で玉鬘が紫の上と初めて対面して一緒に男踏歌という行事を見物したときに、源氏はいつもは別々に暮らしているけれど一緒に何かイベントを楽しむのも面白そうだね、なんて言っていました。


 普段六条院の女性陣は同じ敷地の別のお屋敷で暮らしています。女三宮と紫の上はどちらも春の御殿ですが、女三宮が寝殿で紫の上が対屋たいのやなので別の建物で基本的にお互い交流なく過ごしています。


 そんな女性陣を集めての音楽会。まあね、現代的に考えると正妻(女三宮)や愛妻(紫の上)に現地妻(明石の御方)とその娘(明石の女御)が勢ぞろいなんて穏やかにいくわけがないと思いますよね。ドロドロ泥沼展開しか想像できません。

 それが優雅に集合して雅な音楽会だなんて平安時代ってある意味異世界です。


 ま、ひとまず現代的な感想は置いておくとして、平安時代に話を戻しますね。六条院に住んでいる女性たちが大集合。女君やその女房たちが一堂に会したのですからその衣装たるやさぞ華やかだったでしょうね。自分に付いている女房や童女たちにお揃いの色の衣装を着せたんですって。


 紫の上のところの童女の汗衫かざみ(上着)は桜襲さくらかさね(表が白で裏が赤の配色)であこめ(上着の下の服)が薄紫色。

 明石の女御の童女は臙脂えんじ色の汗衫かざみに山吹色のあこめ

 明石の御方の童女は紅梅色がふたりにさくら色がふたり。

 女三宮のところは柳色の汗衫かざみに赤紫のあこめでやっぱり気高い雰囲気なんですって。


 誰のところの衣装が素敵だとかオシャレなコーディネートはどこの女房かなんてファッションチェックをしたかもしれませんよね。


 それに今回の会場は女三宮の寝殿なので、インテリアの趣味やグレードなどお宅拝見もしたかしら? 女性たちにしてみれば普段は訪れることのない場所ですものね。



 南面の簀子縁(外廊下)に御簾をたらして襖子からかみ(ふすま)を外したひさし(内廊下)に女君がたが座るの。それぞれの女君のあいだは几帳をたててあるのね。その一段高い母屋という部屋に源氏の席があって、源氏からはそれぞれの女君が見えるようになっていたみたいね。


 早春の夕暮れの空の下、梅の花がたわわに咲いて香りを放ち、御簾内の薫香たきものの匂いと相まって鶯も誘われるような雅なセッティングなんですって。


 ザ・華やかなる平安絵巻。これぞ源氏物語と言えるような煌びやかなシーンだと思うのです。絢爛豪華。優美壮麗。



 女性が出かけることのなかった時代。

 ごくごく限られた人としか交流できなかった女性たち。

 男子は月だ花だと機会を設けて舞を舞ったり、和歌を詠んだり、宴会をしたりとイベント多そうですが、おそらく女子メインのイベントなんてあまりなかったハズ。


  こんな華やかなパーティー、女君がたも女房の皆さんも楽しんだのかしら? それともやっぱり? 牽制したり、盗み見や盗み聞きでタイヘン⁉ 

「まあ素敵なお衣装ですわね」

(その色合わせで来たわけね、ふぅん)

「そちらさまのお衣装もなんと見事なんでしょう」

(うちの奥さまの方が断然綺麗だけれどね)

 コワイ。コワイ。にこやかな笑顔の下で繰り広げられる神経衰弱合戦(⁉)でしょうか。


「ね、見た見た? あの方ってやっぱりウワサどおり美人さんなのね」

「あの人の声初めて聞いたわ。綺麗な声なのね」

 うむむむむ。ライバルなかなか手強し? なんて女房どうしで噂しあったりしたかもしれませんよね。

 

 元々は女三宮が朱雀院の前で披露する演奏のリハーサル目的のこの女楽だけど、そのリハーサル自体をイベントにしちゃって、他の女君がたも楽しめるようにと考えたのは源氏の企画力のおかげなのかしら?


 煌びやかな衣装を身に纏った美しい女性たち。艶やかな光景を目にして源氏は何を思うのでしょう。


 俺の奥さんめっちゃキレイ。

 どの女性ヒトもマジ美女だよなぁ。

 自慢の御殿に集まってスンゲー豪華。



 そんなところ?




 いよいよ始まりますね。ホームコンサート♬




 ☆【超訳】源氏物語のご案内

 関連するエピソードはこちら。よかったらご覧になってくださいね。


 episode35-2 春の演奏会とある願い 若菜下 https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054885620637


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