topics22 恋愛講座? 源氏の結婚観??

第32帖 梅枝(【超訳】源氏物語episode32 すれ違うふたり)に寄せて


 源氏には2人の息子がいます。ひとりめの冷泉帝は藤壺の宮との罪の子ですから表立って親子らしい振舞いはできません。もうひとりの夕霧は最初の正室葵の上の産んだ息子で、正真正銘の親子です。この夕霧は源氏とは対照的な男子として描かれていますよね。


 源氏とそっくりの容姿ですが、真面目で一途、「あさきゆめみし」ではカタブツ扱いの夕霧です。祖父母の三条邸で一緒に育った幼なじみの雲居の雁をずっと想っています。

 雲居の雁の父親の内大臣に交際を反対され、引き離されても雲居の雁のことを想いつづけます。内大臣に認めてもらうため勉強をして仕事で結果を出そうと努力しています。

 大勢の女性と付き合う惚れっぽい父源氏と一途に初恋の幼なじみを想う息子の夕霧。「ホントに親子?」と聞きたくなるほどのキャラクターの違いです。もっとも見た目はそっくりなんですけれどね。


 そんな性格の違う息子なのに源氏は自分のようにはならないようにと、夕霧を紫の上に絶対に近づけません。夕霧が紫の上に恋してしまわないようにと警戒をしているのです。

 あの台風の日(episode28 美しいひとたち 野分)に夕霧は紫の上の姿を見てその美しさに感動してしまいます。けれども真面目な夕霧は過ちを犯そうとはせず、気持ちだけで紫の上に憧れ、慕います。やっぱり源氏とは違いますね。


 そして息子の恋がちっとも進展していないようなので、源氏は別の縁談を持ちかけました。ですが、夕霧はその縁談を受けようとはしません。そこから源氏の話が始まります。

  

・運命の恋かもしれないけれど、こだわりすぎるとツマラナイ結婚をすることになるかもよ

・高望みをしすぎても思い通りにはいかないよ

・浮気ごころを起こしてマチガイを犯さないようにね

・身分が高くないからって奔放なことはするなよ

・オンナで失敗する賢い人は歴史上にも大勢いるからね

・恋してはいけない人を好きになったりすると自分にも相手にも一生の心の負担になるからね


 一体誰の話をしているんでしょうね。自分のように辛い恋をするなと言いたいのかしら?


・望まない結婚でも人として相手を愛し、両親を大切にして大きな幸福を手にしなさい


 夕霧のお母さんの葵の上とのことを言いたいのかしら?


 恋愛のスペシャリスト源氏くんの恋愛講座です。雲居の雁のことしか見えていない純愛夕霧くんに他の子ともつきあってみたら? でも間違いは犯すなよ、とでも言いたいのでしょうか。それから恋愛と結婚は別モノだからね、結婚したら相手と両親を大事にして幸せにね、ということかしら。

 自分とは対極の性格とも思える息子の夕霧に、このアドバイスはどの程度参考になったのかと思うとクスリと笑えてしまいます。

 

「雲居の雁とのことにこだわりすぎるなっていうことか……」

 源氏のありがたいお話を聞いたあと夕霧はこう思います。

 そしてこんな歌を詠みました。


 ~ つれなさは 憂き世の常に なり行くを 忘れぬ人や 人にことなる ~

(時が経てばみんな忘れちゃうって言うけれど、キミを忘れられない僕が変わってるのかな)


 やっぱり雲居の雁を忘れることなんてできないよ、と夕霧は思うのです。

 けれども彼女と結婚するためには内大臣に自分を認めてもらって向こうから折れてもらわないといけないと考えています。真面目なだけに頑固。自分から内大臣に結婚の許しをもらいに行くとか、ましてや雲居の雁のところに忍んで行くなんて考えません。


~ 限りとて 忘れがたきを 忘るるも こや世になびく 心なるらん ~

(忘れないわって言っているわたしを忘れちゃうあなたは一般的なんじゃないの?)


 婚約のウワサが流れているのに、「やっぱりキミのことが忘れられないよ」なんて愛の歌。どういうことよ、わたしがウワサのこと知らないとでも思ってんの? なによ、しらばっくれて! 雲居の雁は怒ってしまいます。

 夕霧にしてみれば、縁談は断ってやっぱりキミが好きと送った手紙の返事がこれなので、カノジョが何に怒っているのかわかりません。 


 内大臣に引き離されてから6年が経っています。

 夕霧が18歳、雲居の雁が20歳。

 たまに手紙のやりとりをするだけの6年間。

 同じ町にいるのに逢えないふたり。

 無責任なウワサをする周囲の人たち。

 お互いを想い合っているのにすれ違うふたり。


 逢えないから

 言葉を交わせないから

 募る想いに揺れる想い




 叶えてあげたいですね。ふたりの想い。






☆【超訳】源氏物語のご案内

関連するエピソードはこちら。よかったらご覧になってくださいね。


episode32 すれ違うふたり     梅枝

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054884767394

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