topics21 理解不能の展開、唖然の結末

 第31帖 真木柱(【超訳】源氏物語episode31 翻弄された運命の行先)に寄せて


 第二十二帖【玉鬘】から始まった『玉鬘十帖』の十帖め、玉鬘の物語完結編となる巻ですね。

 尚侍として宮中に出仕する予定だった玉鬘が髭黒大将に襲われてしまいました。


 いくら好きだからって、気持ちを伝えたいからって、夜の寝室に侵入して、そのまま女の子の同意もないままに襲ってしまう。

 これはイカンでしょう。


 現代感覚で見たり考えたりするのはナンセンスなのかもしれません。


 だけど、現代ならストーカーに住居不法侵入に強姦ですよ?

 どこからどう見ても刑事事件ですよ。

 男は間違いなく逮捕です。


 それがこの源氏の時代では男は逮捕どころか責められもしない。

 しかもなんと、逆に女の子側の落ち度になってしまう。

 女房や従者が手引きの協力をしているだろうから、彼らへの教育がなっていない。

 そして襲われたその子は「軽いオンナノコ」だとか「ガードが甘い子」なんて言われてしまうんです。


 自分の部屋で寝ていただけだよ?

 部屋に来てもいいわなんて誘ってもいないんだよ?

 それでも襲われちゃったら泣き寝入りなの?


 あの源氏ですら、玉鬘が襲われたことを怒ったり非難したりはしません。

 残念がりはするけれど。

 そして髭黒との結婚の儀式を進めてしまうのです。


 宮中で尚侍になるはずだったのに。


 玉鬘も最初は泣き暮らして髭黒を受け入れないけれど、結局は妻になり、子供を産んで、夫を支え、立派な夫人になるんです。




 今までも現代では考えられない恋物語にああだこうだと好き勝手なことを言ってきましたが、これだけは本当に理解できません。


 紫式部センセイはどういう思惑でこういう展開にしたんでしょう。

 この時代では「よくあること」だったのでしょうか?

 受け身の女性の哀しさを訴えたかったのでしょうか?

 こんなことも有り得るから女性は気を付けなさいよと言いたかったのでしょうか?



 女性が同意していないのに深い仲になってしまうパターンはこの玉鬘と髭黒だけではありません。


 他にも男子が侵入してきて無理矢理夜を過ごしてしまうエピソードが出てきます。


 いくら好きだからって。

 無理矢理押さえつけられたら女子は力では敵いません。

 女子には拒絶する権利はないのでしょうか。

 いくら好きだからって。

 そのあと結婚して大切にするとしても。

 もっと相手を思いやって恋を進めることはできないんだろうか。

 だって恋しい相手でしょう? 泣かせてどうすんの?

 協力する女房や侍従はどういうつもりなんだろう。

 主人を裏切っておいて「その後」も平然とお仕えできるものなのでしょうか。


 千年前とはいえ、こんなことがまかり通ってしまった社会

 千年前のワタシたちの国のとある結婚のカタチ


 本当に女性にとっては生きにくい時代。

 今回の玉鬘の事件で痛感しますね。



 物語では髭黒と結婚し、素晴らしい女性になったと絶賛される玉鬘ですが、

「本当ね! ステキな女性よねっ!!」

 とはどうしても賛同できません。


 可哀想に。

 どんなにか恐ろしかっただろうに。



 



 ☆【超訳】源氏物語のご案内

 関連するエピソードはこちら。よかったらご覧になってくださいね。


 episode31 翻弄された運命の行先     真木柱

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054881684388/episodes/1177354054884767390

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