☆源氏の世界 ④物忌みと方違え

 平安時代の読み物を読んでいると、ときおり出てくる単語。

物忌ものいみ」と「方違かたたがえ」。

 今回はざっくり簡単にお話しするわね。


 その頃は陰陽道おんみょうどうが信じられていて(安倍晴明あべのせいめいの世界ね)、「物忌み」とは一定期間身を清めて家にこもることなのね。


 平安時代はまだ科学や医療も発達していなくて、病気になったり災害にあったりするのは「物の怪もののけ」などによる怪現象ととらえれていたのね。

 だから、そういった怪現象をなるべく避けるために占いや陰陽道を使って、「物忌み」などをしていたのかな。


「物忌み」には大きく分けて3つあるの。

 ①方位によるもの

 外出するときに、出かける先の方角がよくないとき、いったん別の方角に出かけること。これが「方違え」ね。


 ②暦によるもの

 凶の日には、飲食や行動を慎み、家に籠り、外出しないようにしたんですって。


 ③臨時的なもの

 今でいう喪中のように、近しい人が亡くなったとか、災害にあったとかの際にも外出を控え、来客も断ったの。悪夢を見たとか、出かける道に犬や猫の死骸があったなどという理由もあったみたい。


 これらはその人その人によって結果は違うわけで、宮中の人達が全員で「物忌み」をしたとかそういうことではないみたい。

 そしてこの「物忌み」は帝にも存在するわけで、帝の「物忌み」となるとそれこそ宮中挙げて帝をお守りすることになるのね。


 そんなときに宮中に夜通し詰めていた源氏たちがしたのが、源氏物語第2帖帚木の「雨夜の品定め」ね。(【超訳】源氏物語 episode2 男子会の恋バナ)


 そして各自「物忌み」の時期も「方違え」の方向も違うので、

「ほんっとはキミのとこ行きたかったんだよ? だけどさぁ、方違えでさぁ」

 なぁんていい言い訳にもできたりするわけよ。ホントの場合もあったでしょうけど。


「出社する予定だったんですが、物忌みでして……」

 とまぁ会社をサボる口実にもなる。こちらも大事な要件のある日に本当に物忌みで外出できないという本当の場合ももちろんあったでしょう。


 この方違えの風習を上手に利用したのが(?!)、源氏の君と空蝉のストーリー。(【超訳】源氏物語 episode2男子会の恋バナ、episode3つかみどころのないカノジョ)奥さんの葵の上のお屋敷の方向が悪くて、行ってもいい方角にあったのが、空蝉のいるお屋敷だったっていうね。


 だから以前結婚するには何がなんでも3日間は女子の元へ男子は通わないといけないって話をしたけれど、きちんと陰陽道で占うわけです。3日間通えるかどうか、「物忌み」の日付はないか、「方違え」で彼女の家の方角は大丈夫か。それほどきっちり守らなければならない風習だったみたいね。


 今この制度があったらタイヘンよね。会社も学校も休まないと。毎日誰かしらが「物忌み」や「方違え」。社会生活が……、成り立たないわね。

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