☆源氏の世界 ①家族構成

 ◇源氏物語を理解する上で知っておくといいかも、という情報を書くわね。物語の舞台は平安時代中期、1000年以上前ね。日本史でいうと藤原道長が権勢をふるっていたころ。この物語はフィクションだけれど、このころの生活習慣や文化などを把握していればより「源氏」がわかりやすくなると思うの。軽い気持ちで読んでみてね。


 まずはどうやって暮らしているか。今回は「源氏物語」に登場する皇族や貴族など高貴な身分の方々のお話に限定するわね。

 現代では基本的に家族は一緒に暮らすわよね? もちろん、お父さんが単身赴任だったりいろいろな事情はあるかもしれないけれど、基本は一緒に暮らすし、ひとりの男の人とひとりの女の人が結婚するわね。そう、一夫一婦制。


 それが、「源氏」の時代は一夫多妻制なの。ひとりの男の人が複数の奥さんを持っていいのよ。どう思う? 男子も女子も言いたいことはいろいろあるでしょう。恋バナのときにでも語ってみて? 


 さて、続きね。子供は基本お母さんと暮らすの。といっても今のようにお母さんが何から何までお世話をしてくれて一緒に暮らすわけではないのよ。大きなお屋敷でね、お母さんにも子供達にもお付きの従者(家来)がいるのね。だからたとえ親子でも同じ敷地でも別棟で暮らすの。普段の身の回りのお世話は家来がしてくれるの。ときどきお母さんが「元気?」なんて手紙をくれたり、会いにきてくれる程度。ごはんを食べるのも別だし、一緒になんて寝られないのよ、赤ちゃんのときから。お母さんからおっぱいをもらえたかどうかもあやしいのよね。基本的には母乳も乳母めのとからもらって育ててもらうのよね。兄弟姉妹がいても基本は別々ね。それぞれに大勢の家来がいてくれるけれど、なんだか寂しいわよね。

 それから年頃になると、異性の家族(お父さんと娘、お母さんと息子、兄弟と姉妹など)とはあまり顔を合わせないの。会いに来ても、御簾みす(今でいうすだれ)や几帳きちょう(移動式カーテン)越しにしか会わないのよ。


 当時、女の人はほとんど外出しません。想像もつかないけれど、高貴な身分のお姫様は家の外に出られるのは生涯でも数えられるほど。お家は貴族さまだから庶民のワタシ達とは比べものにならない大豪邸にお住まいだとは思うけれど、その敷地から出られないのよ。勉強するのも家庭教師を住み込みさせるの。彼氏どころかお友達もできないわよね。だから乳母めのと(おっぱいを飲ませてくれた人ね)と言ってお母さんのかわりに子供を育てる人がいるんだけど、その人の子供が一番近しい友達なんじゃないかな。そんな環境でお年頃を迎えることになるの。


 男子は元服げんぷくの儀という成人式を行い、世間にお披露目して、宮中へお仕事に通うことになるの。この頃は天皇を中心に政治を行っていたから今でいう国会と裁判所と官公庁をひっくるめた会社に勤めるってカンジかな。

 女子も裳着もぎの儀という成人式をして、お披露目をするの。お披露目って言ってもこちらは就職するわけではないのだけれどね。ま、ウチに年頃の娘がいます、お婿さん募集します、ってお知らせするみたいなものかな?

 どちらの成人式も後見役といって彼らの後ろ盾になってくれるような人に儀式に出てもらうのね。親の親(おじいちゃん)やこれから結婚する予定の相手の父親とか政治的に有力な人とかいろいろなんだけど、まあ、身分が高ければ高いほど評判もよくなるのよ。

「あんな実力者が後見役なら、きっとご本人は素晴らしい方だ」

 なんてね。

 そして、後見役は成人する本人に直接会えるから、本人の容姿とか様子を知ることができるの。

「絶世の美女だ」

「思慮深く賢い人だ」

 なんて後見役が言えば噂は瞬く間に広がるでしょうね。


 こうして子供時代が終わり、華やかな青春時代が始まることになるの。続きは②でお話しするわね。


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