KAC10(KAC10)

 二千字以内

 カクヨム三周年記念

 お題は『カタリアンドバーグ』


〇(後日注記 この小説の1エピソード目はお題発表前に書かれ、二話目はお題発表と同時に投稿されています)



 この世には、にわかには信じられない事象が数多く存在する。

 それはいつの時代も変わらないが、しかし事柄は変化する事もある。

 例えば、君たちの時代では、未だに未来人、あるいはタイムマシンが含まれている事だろう。


 察しの良いきみなら気が付いただろうか。

 そう、私が生きている今、この瞬間は現在である。

 しかし、君たちからすれば、私は未来に生きているのだ。


 正確には、未来からこの文章を過去に送っている。

 残念ながら手法は規則により君たちに話す事はできない。


 私、いずくかけるは前々から君たちへ未来の話を聞かせてきた。

 YouTubeの私のチャンネルにも、機関にバレぬよう、いくつか隠して投稿している。しかし、インターネット上にこんな怪文を残したところで、誰も信じはしなかった。


 決して信じてくれと言っているわけではない。


 ただ一つ言えるのは、相も変わらず、私は未来にいるという事だ。

 その証明として、ここに一つ、未来予想を書き記しておこうと思い立った所存である。


 カクヨム三周年。

 四周年へ向けてのこの10回に渡るイベントの最終回。

 そのお題を当ててみせようと言った話である。


 本来ならば、10回目のお題は3月29日の12時に発表される事になっている。


 当然、それを知る事は、カクヨム内部の人間にしか不可能である。

 しかし先に話した通り、私はすでにそのお題を知っている。

 そればかりか、受賞者も同様である。


 なぜ、私がこのように、過去に干渉しようと思ったのか。

 それは君たちに伝えたい事があったからだ。


 落ち着いて聞いてほしい。



――近未来、世界は滅ぶ。



 核で戦争が起きたとか、壊滅級の自然災害が発生したわけではない。

 世界はもっと緩やかに、静かに終わっていった。


 私の生きる世界は、君たちの環境のように、恵まれてなどいない。

 政府に住まいは管理され、仕事も与えられたものをこなすだけだ。

 カクヨムのように表現の自由はなく、決められた幸せを皆、謳歌している。


 それでも、人々の多くはそれを受け入れている。

 技術の発達により、平均寿命は飛躍的に伸びた。誰もが職にあぶれない。犯罪も起こらない。そればかりか、コンピューターが最適な番をマッチングしてくれるようになった。


 彼らは一様に幸せそうである。

 しかし、私だけはそうは思わなかった。


 私は異端なのかもしれなかった。

 だからこそ君たちに確認したい。

 間違っているのはこの世界なのか、私なのか。

 君たちが夢見た未来とは、一体どういったものだったのだろうか。


 私には味方がいない。

 友がいない。

 愛すべき人がいない。

 とても孤独である。


 しかし周りに合わせて生きたとして、それが幸せだと、私にはどうも思えない。


 だから、君たちに伝えたかった。

 この世界を作ったのは、君たちなのだから。

 本当にこの世界を望んだのか。

 本当にこの世界は幸せなのか。

 私は君たちに、確認したかったのである。


 人は千差万別。

 共に暮らすには規則がいる。

 だが、その規則を重んじるあまり、人は大切なものを失ってしまったかのように、私は思う。


 私の話を信じるもよし。

 また、下らない戯言だと罵ってもまたよし。

 これからを生きる君たちへ、私はここにこの言葉を残す。


 カクヨム三周年、第十回目のお題は、すでにこの小説に記した。


 それでは友よ、また未来で会おう。


〇二話目


 カクヨム、三周年記念。

 その第十回目のお題がたった今発表された。


 君たちは私の事を、やはり虚言師だったと思っただろう。

 しかしそれは早計に過ぎない。


 私のいるこの世界では、お題は確かに『未来について』であった。

 しかし、カクヨムは、いや、正確にはカクヨム内部に侵入した機関の工作員は、私の小説を見つけ、急遽お題を変更したのである。


 この小説はお題発表前から公開されていた為、評価はされない。

 そればかりか、こうして2エピソード目を揚げているのだから、選出されるはずがない。


 それでも機関は、私に言い当てられることを快く思わなかったのだろう。許せなかったのだろう。

 故にお題を急遽変更したに過ぎないのだ。



 そして、これこそが私の狙いであった。



 ほんの僅かではあるが、私は過去の改変に成功したのである。

 やがてその歪みから生じるバタフライエフェクトは、次第に色濃く増していき、世界を大きく変えていくだろう。


 最後に、この小説を機関の目に止めてくれたPV、フォロー、応援に多大なる感謝を送りたい。

 それでは、私の任務はこれで終わる。さらばだ。

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