書読伝説アカキ~カクヨムに舞い降りた天才~

八百字未満



 平成31年。第四回カクヨムウェブコンテスト受付終了から8日。カクヨムユーザー達は締め切りを経て、応募後の達成感に酔いしれていた。

 そんな表の世界とは別のところ。魔物が潜む底辺世界で、一つの伝説が始まろうとしていた。後に深域の男と呼ばれる。カクヨムの底辺世界に君臨する男の、その伝説が。


(俺が望んだもの……。それは変化だった……)

(それも……。全てをひっくり返すような変化だ……。生まれ変わるほどの)

応援コメント「難郷さん。また糞小説を書いてるんですか。ロン」

(ぐっ!)


 株式の負債。賭博の負け。手を出すとことごとく失敗し、そして今夜。借金の棒引きをかけての投稿も伸びない。

 これが埋もれたら俺は、多額の借金の支払いをしなくてはならない。

 一か月前に入った生命保険。受取人はあの男。流崎の情婦。

 追い詰められた。もう埋もれられない。これなら受ける!


応援コメント「はいゴミ。ロン(にやり)」

(うあっ……。落ち着けえ。なんとかするんだ。なんとか!)


 泣きたくなるような閲覧数だ。次作投稿、誰も見なかったら終わりだ! 頼む!


(変えてくれ。誰でもいい。このよどんだ空気。流れを変えてくれ! だれでもいい。悪魔でも!)


――ガチャ


「アカキか。そこに座ってろ」


 異世界小説。これなら現物だ。間違いない。投稿――


「死ねば助かるのに」

「……おまえ、ウェブ小説がわかるのか」

「いや、全然。ただ、今気配が死んでいた。背中に読まそうと言う強さが無い。ただ、助かろうとしている。投稿で伸びなかった人間が、最後に取る思考回路。あんたはただ、怯えている」

(くそっ。確かにこのガキの言うとおりだ。三十のおっさんがどうして異世界小説なんだ。耄碌していた。俺が今やってるのはウェブ小説だ。王道に勝機があるか! どうせ死ぬなら……、強くキーボードを打って! 死ねぇ!)


応援コメント「糞小説乙 ロン」

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