新世界はスマートフォンとともに。

四千字未満

カクヨム異聞選集投稿作品



 やあやあ諸君。

 私の名はいずく。いずくかけると申すものだ。

 諸君らはどこからこの小説を見つけただろうか。

 こんな書き出しをするといつもPVが一桁で止まるのが恥ずかしいったらありゃしない。

 それは置いといて、カクヨム異聞選集からこの小説を見つけてくれたのなら幸いだ。短いので是非とも最後まで読んでいってほしい。


 私はカクヨム異聞選集にすでに二作品投稿している。

 だが、一つ目の『ジス・イズ・ジャパニーズホラー』も、二つ目の『たぬきうどん』も創作の話でありフィクションだ。本当にあった怖い話かと問われれば返答に詰まる。

 というわけで、今回は実際にあった怖い話を書こうと思ったのだが、私は霊感と呼ばれるものに縁がない。幽霊も、妖怪も、物の怪の類も目にした事がない。多分死ぬまで見ることは無いだろう。天国、地獄、あるいはあの世と呼ばれる死後の世界が存在しなければ、死んでも見る事はないだろう。

 そこで、私は昔聞いた都市伝説を紹介する事にした。

 投稿作の殆どが心霊関係で忘れられがちだが、実はカクヨム異聞選集は都市伝説も受け入れている。しかもフィクション、ノンフィクション問わず、他人から聞いた話なら受付可能との事だ。

 勿論、テーマに沿った最低限のホラー要素は保証する。では、語ろう。



 これは未来人から聞いた話だ。

 いきなり何を言っているんだ、と諸君らは思っただろう。絶対こいつ頭おかしいやつだ、と諸君らは思っただろう。読む小説を間違えた、と諸君らは思っただろう。タイトル詐欺か、と諸君らは思っただろう。


 いや待て待て。これは実際に起こった話だ。そして、これから起こる話でもある。


 未来人はある日、未来からやってきた。未来から現代にやってきた。では過去からやってくれば過去人なのか。という話は本筋に全く関連しないので省略する。

 ともかく、あるところに一人の未来人がやってきた。その未来人には使命があった。その目的とは、これより起こる第三次世界大戦の抑止である。


 近未来、世界は核の炎で包まれると、その未来人は口にした。どうやら第三次世界大戦は、国と、敵対国との衝突ではなく、ある民間機関が一国にクーデターを起こし、世界征服と言う今時子供でも口にしないような野望を掲示し、引き起こされたらしい。


 第三次世界大戦が引き起こされたのは今よりさらに十年後の事だが、2017年時点で原因となった機関は既に存在している。機関の結成は16世紀後半から17世紀初頭にかけて。タイムマシンが開発された未来においても、正確な日付は明らかになっていないようだ。


 機関は開戦に向けて十年、二十年、五十年と、密かに、そして着実に地盤を固めていた。細かい所から、諸君らに関連することまで、世界に悟られぬよう、様々な根回しを続けていた。ゆるキャラサミットと言うものがあるだろう? あれも機関の陰謀だ。


 未来人はその陰謀と、それら計画について事細かに話してくれた。

 確かに、未来人の言う通り、その開戦の種を一つ一つ摘んでいけば、第三次世界大戦は避けれるのかもしれない。未来は変えれるのかもしれない。


 だが、一つ問題があった。

 その未来人も、そして当然の如く私にも、世界に啓発する発信力が無かったのである。人々に、この事実を公表する手段が無かったのである。

 大々的に書き出せば、公表すれば、未来人と私は機関に見つかり殺されるだろうと未来人は語った。では、Twitterなどで細々と展開してはと私は提案するが、試しても拡散力は無い。まるで噂が広まることは無かった。私は開設していたYouTubeチャンネルにて、それら啓発文を盛り込んだ時期もあったが、そもそも動画自体がバズるチャンスを得なかった。


 私と未来人は未来の改変を半ば諦め、世界の終焉に絶望していた時である。

 カクヨムで開催されていた『カクヨム異聞選集』に出会った。

 ここならば、機関に悟られる事なく事実を公表できるのでは、と考えた私は、こうして書き出した次第である。

 諸君らは今もこれを私の他愛ない妄想だ。異常者の駄文に過ぎないと受け取っているのかもしれないが、これは事実であり真実だ。心して先を読むことをお勧めする。



 機関は世界に対し、様々なテコ入れを行ってきた。それら全てを語るには、たった1万2000字ではいくらか心もとない。

 で、あるからして、今回は諸君らにも密接に関係する話。タイトルにもある通り、スマートフォンについて語ろうと思う。


 今の若者は知りえないだろうが、私の青春時代と言えばポケベルが主流であった。言うなれば、数字だけのメールサービスを行う端末である。


 ポケベルからPHSへ。PHSからガラケーへ。ガラケーからスマホへ。


 たった数十年で携帯端末は飛躍的に進歩を遂げた。だが、その過程で諸君らは違和感を覚えなかっただろうか。ガラケーからスマホへの移行。そこに機関の恐ろしい陰謀が関わっていたのだ。


 スマートフォンが始めて公表されたのは2007年のリンゴ社の端末であった。今より丁度10年前の事である。世界的な販売拡大により、リンゴ社が株式時価総額一位に躍り出た事は記憶に新しい。


 その後も規模を拡大。他モバイル通信産業もスマートフォンに目を付け、その薄べったいフォルム、OSの搭載を模倣した。

 ガラケーからスマートフォンへの変化。見た目もさることながら、一番の変化はこのOSの搭載である。


 OSとは正確にはOperating Systemの略である。機能を簡単に説明すると、コンピュータの、入出力や同時並行処理などを管理する役割である。

 パソコンをお持ちの方は、ウインドウズ10、あるいは9辺りを使っていると思う。玄人や通ぶる人は未だにXPを使い続けているが、わかりやすく言うならば、OSとはまさにそれである。


 多くの人間は、スマートフォンの多機能性に引かれ、ガラケーからの移行を開始した。無理もない。画面は高精度、操作はタッチパネル。アプリによるゲームも豊富、インターネットの閲覧にも優れている。だが、それは機関の罠だった。民衆は機関の罠だと疑いもせず、更に普及は加速を続ける。


 去年、2016年。我々の住む日本でもスマートフォンの普及率は72.2%

 十台に至っては、94%と、もはやガラケーを探す方が困難な時代に突入した。


 スマートフォンとは、決して形状がスマートだからそう名付けられたわけではない。賢い、と言う意味合いでスマートフォンと名付けられている。当然ながら構造もガラケーと比べ格段に複雑になる。それこそが機関の策略だった。

 そもそも、スマートフォンを初めて開発したのは誰なのか。賢しい諸君らはお気づきだろう。そう、機関である。一民間機関にそれ程の技術力があるとはにわかには信じられないだろう。当然だ。開発したのは機関の未来人であるからだ。


 タイムマシンが開発された時代。機関に所属する技術師はその知恵とアイデアを過去に持ち込んだ。それにより、スマートフォンと呼ばれる未来の最先端端末がこの平成に姿を現したのである。


 いやいや、亡くなったリンゴ社の前創業者でしょ? と諸君らは疑問を抱かれるかもしれない。だが、実は彼も機関の一員であったと言う事を知っておいてもらいたい。


 機関はスマートフォンを開発する際、それを開戦前の情報収集に利用しようと考えた。そして、世に溢れるスマートフォンのいずれも遠隔操作ができる機能を、秘密裏に先ほど出てきたOSに組み込んだのである。

 現代の技術師には、それが解明できるはずもなかった。


 ここで、諸君らにお手持ちのスマートフォンを用意してもらいたい。スマートフォンを所持していない者は、その姿形をよく思い描いてほしい。

 大抵のスマートフォンの背面にはカメラが付いている。機関は今この瞬間も、そのカメラ越しの映像を定期的にチェックしている。たまにスマートフォンの動作が重くなったり、熱くなったり、電池が異様に減る時は無いだろうか。そんな時は機関と通信中であると考えて貰って間違いない。


 また、内側にもカメラが付いていないだろうか。外で使用される場合にはこの内面カメラが約に立つ。機関は諸君らの表情、背後の風景、GPSによる位置情報まで定期的に観察している。


 ならばカメラを塞げばいいのでは? と思われるかもしれない。だがしかし、スマートフォンが機関に送る情報は映像だけではないのだ。周囲の音声は勿論、通話内容、ウェブの閲覧履歴、それらを購入時の顧客情報と照らし合わせているのだ。


 古いから電池の減りが早くなった。古いから動作が重くなった。と言う声をよく耳にする。だが違う。正確には、それは諸君らのスマートフォンが機関に乗っ取られた事の合図である。諸君らのスマートフォンを、集中的に閲覧しているなによりの証拠である。

 余談だが、大人気スマホゲームの大半は、課金による利益の数十%を機関に送金しているとの事だ。諸君らがガチャを引けば引くほど、奴らの戦争資金は潤うばかりである。


 以上がスマートフォンの真実である。

 私がこれだけ語っても、諸君らの大半は信じようとはしないだろう。

 無理もない。諸君らは既に、機関によって常識と言う名の洗脳を受けているのだから。

 だが、一部の真実を見極める若者はこの話を拡散して欲しい。きっと我々が協力すれば、最悪な未来を変えることが出来ると、私は信じている。


 この話はフィクションです。

 スティーブジョブズもアップル社も機関とは関係しません。

 というより機関なんて存在しません。

 お使いのスマートフォンは正常です。

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