第4話 絶望と希望
僕は町内会議の裁定により、中学を退学させられ、刑務所のような厚生施設に入れられることになった。
警察の制服みたいなものを着ている教官に連れられて、僕は施設の廊下を歩いている。
その間、自分の人生を嘆いた。
あのとき自分の理性が働いて、ヤエちゃんの箱に手を出さなければこんなことにはならなかったにちがいない。
一時の気の迷いでここまで落ちぶれてしまった。
僕はタイミングを見計らって自殺することに決めた。
しかし、それを決行することはできなかった。
案内された部屋は実家にある自分の部屋よりも広く、電化製品のグレードも一つ上だった。
面食らいながらもオフィスチェアに身を委ね、状況を一生懸命理解しようと努めたが無理だった。
そして、青色の制服を着た教官が部屋に入ってきて事情を説明し始めた。
頭を下げながら。
それは、僕にとってはこれ以上ない救いだった。
僕は快適な部屋で思うがままに妄想をパソコンに書き連ねていった。
それが物語として形になったら、メールに添付して
二週間以内に、僕の妄想は漫画という形で戻ってきた。
つまり、ここは厚生施設という名を騙った秘密工場だったのだ。
僕たちの作る漫画以外にも、鍵や箱の写真の載った雑誌なども製造されている。
父の部屋にあった雑誌もここで作られたものだった。
鍵と箱の文化はこの町にしか存在していないため、地産地消するしか道がなかったのだ。
僕はこのことで町が好きになったわけではない。鍵と箱のせいで人生がおかしくなったという事実は変わらない。
心にできた傷が癒えることはなく、その人を一生苦しめ続ける。
ただ、こんな町でも、いや、こんな町だからこそ、僕みたい人間が必要とされているということに安心感を覚えたのも事実だ。
幸せというのは、心やすめる居場所があること。自分を受け入れてもらうこと。
僕は、鬱屈とした劣等感を糧に、妄想逞しく生きていく。
この町には不思議な風習があるんです。 赤秋ともる @HirarinWorld
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